Webマーケ&プロモーション担当者1,000人に調査
株式会社ロックオンは、自社開発の技術力と構想力を強みに、マーケティングプラットフォームの「アドエビス」、ECオープンプラットフォーム「EC-CUBE」の2つが各領域でシェアNo.1を獲得。特にアドエビスは広告効果測定市場で3年連続首位を独占しており、昨年度は42.9%(※)まで伸ばしている。
※出典:ITR「ITR Market View:メール/Webマーケティング市場2018」広告効果測定市場におけるベンダー別売上金額シェア(2015~2017年度予測)
多くの企業のマーケティングを支えてきた視点からWeb広告の潮流を捉えようと、同社は昨年、マーケターを対象とした大規模な調査を実施。その第二弾としてなかなかうかがいにくい、他社の「Web広告費」事情にずばり焦点を当てた調査を実施。結果を詳細に分析して、広告費が増えている会社は何が違うのか、そして広告費を増やすためのアクションについてひも解いた。
調査対象は、マーケティングやWebプロモーション業務に従事・関与する企業の管理職や担当者であり、かつ事前スクリーニングの「デジタルマーケティングに興味があり、実務経験もある人/ツール利用の有無は問わない」という条件を通った1,376人。株式会社ロックオン マーケティング部長のデ・スーザ氏は「リアルな実態を、自社の状態と照らし合わせて参考にしてもらえたら」と話す。
広告費増加企業は初期接点を重視している
まず今回の調査について、端的な状況が紹介された。最初の問い「Web広告費」は、業種や企業規模によって偏りはあるが、全体では「平均月額50万円未満」が多く、次に多かったのが「平均月額100〜300万円未満」となった。
企業規模ベースでみると、従業員数が増えるとWeb広告費も増える傾向がみられた。従業員30名以上になると「平均月額50万以上」の企業が過半数になり、30名を境に「平均月額50〜100万円未満」が一気に4倍に。さらに100名を境に「平均月額100〜300万円未満」がぐっと増加していた。「このことから、Web広告費は従業員数30名程度から50万円規模になり、100名以上で『平均月額100〜300万円未満』がメインゾーンになるとわかります」(デ・スーザ氏)。
続く問い「Web広告費は3年前と比較して増えたか」に対しては、現在の広告費に関わらず、60%以上の企業が「増えた」と回答。これも業種によって差があり、情報関連業と卸小売業は「変わらない」とした企業が多かった。
ここからは、広告費増加の背景を探る切り口として、デ・スーザ氏の考察を交えながら評価指標にフォーカスする。まず、自社で重視している成果ポイント(CV)として多かったのは、商品購入やメール問い合わせなど一般的な選択肢。「これだけだと当たり前ですが、これを前述の広告費が増えた企業と増えていない企業に分解したところ、広告費が増えた企業はメルマガ登録などユーザーにとって敷居の低いアクションもCVポイントにしており、初期接点も重視していることがわかりました」とデ・スーザ氏は解説する。
獲得までのコミュニケーション設計が違う
デ・スーザ氏が続いて示したレーダーチャートは、そのことを明確に示している。広告費が増えていない企業が設定しているCVポイントを見ると、商品購入以外だとメールや電話の問い合わせが多い。また、そもそもCVポイントを設定していない企業は広告費を“なんとなく”使っている状況が見て取れる。
一方で広告費が増えている企業は、商品購入ももちろんみているが、それ以外にメルマガや会員登録も重視していた。これらは必ずしも、すべての見込み顧客が最終目標である顧客化へつながるわけではないが、浅くても間口を広くとることで接点を大切にし、まずはなるべく多くの人と関わりをもとうと考えていることがうかがえる。
具体的なCPAを聞くと広告費が増えた企業は相対的に高く、増えていない企業では低いか予算設定なしの回答が多かった。前述のメルマガ登録などのポイントのみでみれば、CPAは相対的に低いはずなので、逆の結果なのではないかと思われるかもしれない。だが、ここに広告運用の設計の違いが如実に表れている。
「広告費が増えていない企業は、メール問い合わせなどをとにかく安く獲得することを目標にしている、つまりそのポイントでしか評価していません。一方、増えた企業は、初期接点を持てた人を見込み顧客として育てることを想定し、将来的な獲得を見込んでいます。
メルマガでもすぐに売上につながる人と、来月再来月に売上が立つ人の両方が取れるので、CPAを高く設定して『最初から囲い込もう』としている。設計の思想が違うのです」(デ・スーザ氏)。
複数の広告を横断して費用対効果を計測
デ・スーザ氏の考察から、過去3年で広告費が増えた企業と増えていない企業は、そもそもコミュニケーションの設計が違うことがわかった。続く質問「Web広告費の何を評価しているか?」の回答も、実は見ている指標が違っていた。増えている企業は、クリック数やクリック単価よりも広告費用対効果(ROAS)や顧客獲得単価(CPA)を重視しており、増えていない企業では重要度合いがその逆となった。
このことから、広告費が増えていない企業は各媒体での計測結果に注視し、分析していることがわかる。一方、増えた企業はROASやCPAをみていることから明らかなように、「顧客一人を獲得するためにかかった費用、つまりヒトとカネをポイントに、広告が適切に使えているか投資対効果で評価している」とデ・スーザ氏。両者は同じように「当社はWebの最適化を実施している」と思っていても、実は評価基準もまったく違うのだ。
「言い変えれば、広告費が増えた企業は『一人を獲得するのにいくらかけたのか』の話をしており、増えていない企業は『この媒体で何件取れたのか』という話をしているのです。経営層が欲しい情報は前者ですよね。
ただ、今どき比較サイトや口コミをチェックするのは当たり前なので、一媒体だけの接触で一気に購入するユーザーはほぼいません。なので前者を評価するために、増えた企業では最終的に獲得に至るまでの複数の広告の役割を明確にして、それらを正しく評価していることがうかがえます。つまり、計測に差があるのです」(デ・スーザ氏)。
儲かるとわかれば経営者は広告費を増やす
デ・スーザ氏は改めて、広告費を伸ばすときの観点として「設計」と「計測」の2つを強調する。
まず設計を見直し、中長期的な見込み顧客の育成を考えたコミュニケーションを設計すること。認知から購買までをひとつなぎのストーリーで捉え、それを勘案した成果ポイントを設定することが必要だ。そして、計測の部分では単純にクリックで評価せず、接点のすべてを横断して一顧客あたりの獲得単価を可視化することが求められる。「今回の一連の調査から、各所での広告の役割を踏まえた、そのフロー全体の評価ができると望ましいことがわかります」とデ・スーザ氏。
では、実際に広告費を増やすためのアクションとは何だろうか? 前述の通り、経営者が欲しいのは媒体のレポートではなく、投資対効果が見合っているのか、獲得単価はどうなのかという情報だ。つまり、アトリビューション分析で一人あたりの獲得単価を正確に出すことが必須になる。
「それができれば、経営者との会話が変わります。獲得単価と損益分岐点を比べるだけで、もっと投資すべきか引くべきかの判断ができる。経営者は儲かるとわかれば投資するので、その判断材料を提示すれば、自社の広告費も増えるのです」
「設計」と「計測」に真剣に向き合う
ここまでの分析と考察から、広告費を増やした企業では複数の広告をひとつづきで捉えて「一人を獲得するための費用対効果」を見ていると推測された。それを正しく把握するのに欠かせないのが、前述のアトリビューション分析だ。アトリビューション分析を実践し改善に活かすには、各Web施策の効果を正しく知った上で、経路の幅を広げ、より広い判断基準を持つことが大事になる。
「そのためにCVの重複計測を避けるのは大前提に、ラストクリック以外の広告の評価や、メルマガなど出稿広告以外を経由した獲得の可視化などがポイントになります。ビュースルー効果や検索行動、サイト内閲覧ページの分析なども有効です」とデ・スーザ氏。
これらのいずれもカバーしているのがアドエビスだ。このほど、ユーザー単位の接触履歴を可視化する技術「カスタマージャーニー分析機能」で特許を取得し、「ヒト」を軸にしたマーケティング評価が可能になった。
カスタマージャーニーの一連を捉えた先には、そこで蓄積したデータのさらなる利活用にも目を向けたい。アドエビスでは、たとえばリサーチ会社との連携で実現した“カゴ落ちユーザー”へのアンケート調査や、LTVの高い顧客の情報から逆算した勝ちパターンの模索、また爆発的に効果があったSNS広告の再現を狙った類似拡張配信なども可能だ。
ちなみに今回の調査から、効果測定ツールを導入している企業としていない企業で掘り下げたところ、導入している企業の方が好調だというデータが出ていたという。「ただし、ツール導入で自動的に成果は上がりません。おそらく導入を機に、前述の『設計』と『計測』を真剣に考えるようになったのだと思います。
ぜひ今回の調査結果を元に、自社の設計と計測について考えていただけたら」とデ・スーザ氏。ツールの力を借りながら、これらに真剣に向き合うことが、Web広告の効果を高めて広告費を増大させる大きな要素だといえるだろう。