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マーケティングにどう活かす?アクティブコアが語る「AIの本質」

 現在、一般社会で最も注目されているテクノロジーといえばAIだろう。株価予想や投資判断はもちろん、囲碁や将棋まで、様々な分野でAIの適用が進んでいる。マーケティングも例外ではない。では、AIの適用でマーケティングはどのように変わり、どのような成果が期待できるのか。マーケティングオートメーションのクラウドサービスと、AIとの融合を進めるアクティブコアの山田賢治氏が、2018年3月に開催されたMarkeZine Day 2018 Springで「AI×マーケティング」の可能性について語った。

AI活用の前段階に潜む課題

 AI(人工知能)は現在、一部の研究者や技術者のためのものではなく、ビジネスでも活用されるテクノロジーとなっている。マーケティングのクラウドソリューションを提供するアクティブコアの代表取締役社長を務める山田賢治氏も、とあるITイベントに出展したところ「AIへの期待が高まっている」と感じたという。

株式会社アクティブコア 代表取締役社長 山田 賢治氏
株式会社アクティブコア 代表取締役社長 山田 賢治氏

 「ITイベントの来場者に事前アンケートを取ったところ、現在企業が感じている経営課題は、『顧客データ統合』『AI・自動化』『施策分析・アプローチ』『業務効率化(RPA)』というものが挙がりました。これらをまとめると、顧客単位でデータをまとめて統合・可視化し、その行動やニーズを予測・最適化し、チャネル横断で業務を自動化する。そのためにマーケティング基盤を構築して最適化と自動化を実現したいということではないでしょうか」(山田氏)

 では、データの統合・可視化、施策の分析、チャネル横断の業務の自動化、AIの活用は進んでいるのだろうか。その実態としては、チャネルごとにデータの運用も分析もバラバラで、顧客視点でのデータ統合はまだできていない企業が多いという。

 分析を行うシステムも、広告なら広告効果測定ツール、Web解析はGoogleアナリティクス、メールはメールシステム、購買や売上分析はExcelと、分断されている状態がまだまだ多い。

 そして山田氏は、データの基盤整備や分析基盤の整備・統合だけでなく「広告施策やメール施策などのアクションを行う基盤も、統合することが必要」と解説する。確かに、分析・計測した結果を施策に反映する上で、基盤が分断されているのはスピード感の喪失につながる。そしてこれらの基盤が統合されてこそ、AIも真価を発揮しマーケティング業務の自動化の実現に近づくわけだ。

AIとはどのような技術?

 続いて山田氏は、AIと機械学習にテーマを移し、AIを支えるディープラーニングの仕組みについて解説した。

 ディープラーニングはニューラルネットワークの発展形だ。たとえば、Webサイトを訪問したユーザがコンバージョン(CV)するかどうかを予測する場合には、ユーザの行動に合わせて点数に重みを掛け合わせ、一定のしきい値を超えればCVするというように予測する。このように複数の入力から予測(出力)するのが神経と似ていることからニューラルネットワークと呼ばれる。

 実際のAI・機械学習では、ニューラルネットワークを幾層も重ねて多層モデルを構築する。点数と重みを一度掛け合わせるだけでなく、ニューラルネットワークを何層にも重ねることで、実際の結果との誤差から重みづけを前の層に遡って更新(学習)していく。これを繰り返すことによって予測の正解率を向上させる。これがAI・機械学習の本質だ。

 従来のスコアリング手法では、特徴量設計ができず、変数や重みづけは人間が決めていたことが大きな課題だった。これを解決したのがディープラーニングだ。特徴量抽出がアルゴリズムに組み込まれており、特徴をフィルタして抽出することで、特徴量を学習する。

 たとえば、画像認識では、画像ビットマップにフィルタをかけ、どれだけ合致するかの特徴マップを作る。ディープラーニングは特徴をフィルタして抽出、特徴量を学習する。

 そして、目や耳や鼻の特徴を自動的に抽出してその出力を多層ニューラルネットワークに渡す。これにより大幅に予測精度が向上する。これまでの統計・機械学習では特徴量は人間が決めていたが、ディープラーニングが画期的なのは特徴量をデータから自動抽出して学習する点だ。

AIのセグメントがもたらした成果

 これまでの統計を使った分析システムでは、人間が重み付けの変数を与えていた。これに対し、AIが搭載されたシステムでは、システム自身が自動的に学習して変数と特徴量を更新する。

 もちろん、学習には時間がかかる。ただ、データから自動的に特徴量を抽出し、それをもとに、ユーザが次にどのような行動を取るかの予測までを一瞬で行う。

 アクティブコアでは、マーケティング基盤に応用するAIを「ピタゴラス」と呼び、様々な分野で適用を始めている。

 たとえば、購買・CVする確率が高い顧客の予測。購入履歴や利用頻度、年代や性別などの属性データ、Web行動履歴など、様々なデータを顧客軸で統合し、AIで分析する。こうして「購入率が高い」と予測される人をセグメントするわけだ。

 「あるクライアント企業では、通常のメール開封率は30%から40%だったところ、ピタゴラスでセグメントした顧客層の場合開封率は54.7%となり、コンバージョン率も通常5倍以上に向上しました」(山田氏)

 このクライアント企業の場合、コンバージョンしそうな顧客を予測する際、予測に最も影響があったのは、サイト滞在時間とページ閲覧時間だという。Webサイトの効果検証に用いる数値やKPIとして、ページの閲覧回数(PV)を使う企業が多いが、「コンバージョンの予測精度でいえば、『特定ページ群をどのくらいの時間をかけて見ているか』を分析したほうが有効」だと山田氏は説明した。

 そのほか、メールの配信時間も「ピタゴラス」を利用して最適化したプロジェクトもある。従来は12時にメールを一斉配信しており、開封率は19.1%だったが、メールの配信時間を個々人に最適化したところ、開封率は29.7%と大きく上がったという。

A/Bテストやレコメンド、幅広い活用が可能

 AIによるセグメント作成以外では、メールのA/BテストにAIを活用。通常、A/Bテストといえば、件名やデザインパターンを何種類か用意し、セグメント分けしたユーザに配信を繰り返し効果の向上を目指す。ところがAIを利用すれば、1回のテストで、効果の高いパターンを抽出できるという。

 たとえば、メール受信者の20%に対し、「送料無料」という件名のメールAと、「500円OFF」というメールBを送信した。そしてAIが、それぞれのメールの開封率、クリック率を比較し、学習モデルから有意性を自動判定して、本番配信するメールを選び出す。「1回の配信でA/Bテストを簡潔・自動化することができます」と、山田氏は説明する。

 また、ディープラーニングによりレコメンドの精度を高めることもできる。通常のレコメンドは、ユーザの直近閲覧履歴やコンバージョン履歴を見て、相関性の高い商品・サービスを選ぶ「協調フィルタリング」を採用することが多い。

 一方、ディープラーニングは、同じデータを用いて特徴量を抽出し、類似ユーザの嗜好を洗い出し、その結果を受けてレコメンドを行う。ディープラーニングをレコメンドに適用したところ、マッチング率が大きく伸び、コンバージョン率は20%向上したそうだ。

 この時、システムに与えたデータは「性別」「年齢」「商品」「閲覧履歴」「購入履歴」などだ。どの変数がレコメンドの精度に影響を与えたかを調べたところ、閲覧回数や購入回数だけの分析より、「閲覧時間」を加えたほうが精度の向上につながり、さらに「価格」「性別」「年齢」の変数を加えると、さらにレコメンド効果が上がったという。どの変数に、どの程度重みを付けるかは、「AIが自動的に判定している」と山田氏は補足する。

過去のデータがなくとも、最適な提案をする方法

 アクティブコアでは過去の閲覧履歴や購入履歴がなくても、最適な商品・サービスをレコメンドすることに取り組んでいる。

 使用するのは「自然言語処理」という技術だ。たとえば、白樺にあるホテルを閲覧しているユーザに対しては「白樺」「ホテル」と距離の近い単語を抽出し、商材の説明文にある単語と付き合わせ、合致率の高い商品を薦める。この場合は「雪」「白い」「スキー」などの関連性の高い語句をAIが判定し、商材となるホテルの説明文の単語を抽出して、類似性が高いと予測される商材をレコメンドするわけだ。

 これまで、Webサイトでレコメンドや最適な提案を行うには、過去の閲覧履歴や購入履歴データが必要だったが、「AIを使えば、新商品や履歴のない新規ユーザに対しても最適な提案を行うことができます」と山田氏は説明する。

AIの分析結果を活かせる実行基盤の条件

 AIの適用範囲は、まだ多数ある。それが顧客行動の予測だ。具体例を挙げると、「この顧客は次に店舗で購入する確率が高いから、その機を逃さずにリマインドする」という施策に利用される。

 店舗とECの2つのチャネルで展開している企業では、「店舗とWeb両方で購入する」会員は1.2%で、一方「Webを訪問した後、店舗で購入する」という会員は8.7%だった。この8.7%の顧客の特徴をAIで分析し、類似する会員がWebで商品閲覧を行ったら、その機を逃さずに店舗誘導メールを送ったという。これにより、10日以内にメールに反応して店舗で購入した会員は58.4%と、高い成果を上げた。

 そのほかにも、モバイルアプリの行動から顧客動向を予測する、広告閲覧履歴をもとに最適な広告戦略を策定するなど、AIとマーケティングの相性は非常に高い。

 山田氏は、「ここでポイントとなるのは、ターゲット抽出やパーソナライズ、配信などの施策、そして分析基盤が一体化していること」だと語る。

 「ワンプラットフォームでないと施策の最適なタイミングを逃す上に、施策結果をデータとして活用するのに時間も工数もかかります。ワンプラットフォームでアクションの結果をAIに学習させ、施策を自動化できるようにすることが、望ましいです」(山田氏)

 アクティブコアの提供している「activecore marketing cloud(アクティブコア マーケティングクラウド)」は、AIとの融合を念頭に、分析機能・MA機能・レコメンドといった各機能をワンプラットフォームで提供。顧客軸で様々なチャネルのデータを統合するデータ統合機能も持ち合わせている。なお、チャネルを横断して顧客単位でデータを統合して、セグメントしたユーザに対してレコメンドするテクノロジーに関しては、特許も取得している。

 今後、マーケティング分野でAIの適用が進んでいくことは間違いない。企業と顧客のコミュニケーションがより最適化できるように、まずは顧客軸でのデータ統合から始めるのが、AI活用の第一歩となるだろう。

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2018/04/17 11:00 https://markezine.jp/article/detail/28230