AI活用の前段階に潜む課題
AI(人工知能)は現在、一部の研究者や技術者のためのものではなく、ビジネスでも活用されるテクノロジーとなっている。マーケティングのクラウドソリューションを提供するアクティブコアの代表取締役社長を務める山田賢治氏も、とあるITイベントに出展したところ「AIへの期待が高まっている」と感じたという。
「ITイベントの来場者に事前アンケートを取ったところ、現在企業が感じている経営課題は、『顧客データ統合』『AI・自動化』『施策分析・アプローチ』『業務効率化(RPA)』というものが挙がりました。これらをまとめると、顧客単位でデータをまとめて統合・可視化し、その行動やニーズを予測・最適化し、チャネル横断で業務を自動化する。そのためにマーケティング基盤を構築して最適化と自動化を実現したいということではないでしょうか」(山田氏)
では、データの統合・可視化、施策の分析、チャネル横断の業務の自動化、AIの活用は進んでいるのだろうか。その実態としては、チャネルごとにデータの運用も分析もバラバラで、顧客視点でのデータ統合はまだできていない企業が多いという。
分析を行うシステムも、広告なら広告効果測定ツール、Web解析はGoogleアナリティクス、メールはメールシステム、購買や売上分析はExcelと、分断されている状態がまだまだ多い。
そして山田氏は、データの基盤整備や分析基盤の整備・統合だけでなく「広告施策やメール施策などのアクションを行う基盤も、統合することが必要」と解説する。確かに、分析・計測した結果を施策に反映する上で、基盤が分断されているのはスピード感の喪失につながる。そしてこれらの基盤が統合されてこそ、AIも真価を発揮しマーケティング業務の自動化の実現に近づくわけだ。
AIとはどのような技術?
続いて山田氏は、AIと機械学習にテーマを移し、AIを支えるディープラーニングの仕組みについて解説した。
ディープラーニングはニューラルネットワークの発展形だ。たとえば、Webサイトを訪問したユーザがコンバージョン(CV)するかどうかを予測する場合には、ユーザの行動に合わせて点数に重みを掛け合わせ、一定のしきい値を超えればCVするというように予測する。このように複数の入力から予測(出力)するのが神経と似ていることからニューラルネットワークと呼ばれる。
実際のAI・機械学習では、ニューラルネットワークを幾層も重ねて多層モデルを構築する。点数と重みを一度掛け合わせるだけでなく、ニューラルネットワークを何層にも重ねることで、実際の結果との誤差から重みづけを前の層に遡って更新(学習)していく。これを繰り返すことによって予測の正解率を向上させる。これがAI・機械学習の本質だ。
従来のスコアリング手法では、特徴量設計ができず、変数や重みづけは人間が決めていたことが大きな課題だった。これを解決したのがディープラーニングだ。特徴量抽出がアルゴリズムに組み込まれており、特徴をフィルタして抽出することで、特徴量を学習する。
たとえば、画像認識では、画像ビットマップにフィルタをかけ、どれだけ合致するかの特徴マップを作る。ディープラーニングは特徴をフィルタして抽出、特徴量を学習する。
そして、目や耳や鼻の特徴を自動的に抽出してその出力を多層ニューラルネットワークに渡す。これにより大幅に予測精度が向上する。これまでの統計・機械学習では特徴量は人間が決めていたが、ディープラーニングが画期的なのは特徴量をデータから自動抽出して学習する点だ。