※本記事は、2018年7月25日刊行の定期誌『MarkeZine』31号に掲載したものです。
睡眠不足は、生産性の低下や健康状態の悪化を招き、個人だけでなく、家庭、企業、さらには国全体に大きな損失をもたらしている。
米国のシンクタンク、ランド研究所がOECD諸国のデータから国ごとの睡眠不足による経済損失を算出した。これによると米国はGDPの2.3%に相当する4,110億ドル(約45兆円)を失っているというのだ。日本でもGDPの2.9%に相当する1,380億ドル(約15兆円)が失われているという。このほかドイツ600億ドル、英国500億ドル、カナダ214億ドルと軒並み大きな損失を被っている。
睡眠は生まれたときから意識することなく行っているため、睡眠を取る意味や質の重要性などについて普段考えることはあまりないかもしれない。これに加え、現代の忙しいライフスタイルによって、知らず知らずのうちに睡眠をおろそかにしてしまっており、その結果が経済損失の数字となって現れていると言えるだろう。日本では徹夜や長時間労働を美徳とする考えが広く共有されているが、これも損失拡大の背景にあると考えていいだろう。
しかし、ミレニアル世代を中心に健康や生産性に対する意識が強くなっており、睡眠の重要性を知り、正しい睡眠を実践する人々が増えていると言われている。トレンドに敏感なニューヨークでは昼寝専用スタジオが登場し、睡眠不足を解消し、パフォーマンスを向上できるとして忙しいビジネスパーソンの間で人気を集めているという。シカゴやスペイン・マドリードなどでも同様のコンセプトの昼寝スタジオが登場、世界の各都市で睡眠に関わる新しいトレンドが生まれている。
今回は睡眠に関する注目の研究を紹介しつつ、世界で巻き起こる睡眠の新しいトレンドを紹介しよう。