睡眠不足解消へ、ニューヨークなどで登場する「昼寝スタジオ」
この調査結果を踏まえ、現代人のライフスタイルを見直してみると、特に若い世代にとって7〜9時間の睡眠時間を取ることは難しく、睡眠不足を解消するのは非常に困難なことのように思えてくる。
しかし「昼寝」を取り入れることで睡眠不足を穴埋めし、生産性低下を防ぎ、パフォーマンスを維持することが可能となる。
睡眠の重要性の認知促進を担う全米睡眠財団によると、昼寝は集中力を回復させ、パフォーマンスを向上させるだけでなく、失敗や事故を防ぐ効用があると指摘している。空軍パイロットと宇宙飛行士を対象にしたNASAの実験では、40分の昼寝で、パフォーマンスが34%も向上したという。ウィンストン・チャーチル、ジョン・F・ケネディ、ロナルド・レーガン、ナポレオン、アルバート・アインシュタイン、トーマス・エジソンなど歴史に名を残した偉人たちも午後の昼寝が日課だったことに言及し、「昼寝文化」の促進に力を入れている。
こうした取り組みも手伝って、仕事でパフォーマンスを発揮したいビジネスパーソンたちの間で昼寝の重要性が認識され始め、新たなニーズを生み出している。
このニーズを汲み取るべく、ニューヨークなどで「昼寝スタジオ」が続々登場している。
2018年2月、ニューヨークでローンチした「NAP YORK」は24時間オープンの昼寝スタジオだ。1階はカフェ、2階はヨガ/瞑想スタジオ、3階が昼寝用スペースになっている。昼寝用スペースには、カスタムビルドされた昼寝用ポッドが7台設置されており、ビジネスクラスポッドであれば30分10ドルで利用することができる。このほかファーストクラスポッドとスイートポッドがあり、前者は30分12ドル、後者は1時間40ドルの利用料になっている。
NAP YORKのオープンに先立つ2017年11月にはシカゴで「Peace Power Napping」が登場。専用アプリで昼寝スペースを予約することができ、利用料は30分20ドルとなっている。
このほか英ロンドンにも同様のコンセプトの昼寝スタジオ「Pop & Rest」が登場。利用料は30分10ポンド。スペイン・マドリードでは「SIESTA&GO」が忙しいビジネスパーソンに昼寝スペースを提供している。利用料は30分6ユーロだ。
昼寝スタジオだけでなく、テクノロジーを駆使した昼寝ポッドにも注目が集まっている。
MetroNaps社が開発した「Energy Pod」は人間工学を駆使した椅子型昼寝ポッドだ。
価格は約1万3,000ドル(約140万円)と高額で、個人利用ではなく企業が昼寝を促進するために導入する事例が増えているという。導入企業には、P&G、グーグル、サムスンなど有名企業が名を連ねている。さらにNASAもクライアントであるという。これらの企業では、生産性向上のために従業員に昼寝を勧めているというのだ。
ハーバード・メディカルスクールの調査では、睡眠不足による生産性低下によって従業員一人あたり年間11.3日分、または2,280ドル分の損失が生まれていると報告されている。一部の先進的な企業はその深刻さを認識し、昼寝を促す取り組みを本格化させているようだ。
人々の健康意識の高まりにともない、睡眠と昼寝への関心も高くなっている。昼寝スタジオや昼寝ポッドの登場は、その関心の高まりを示すものと言えるだろう。今後も、新たに生まれるニーズを汲み取る画期的なビジネスが登場してくるはずだ。
