コンテクストが分断された時代の広告2.0
「今はSNSでストーリーが拡散され、独り歩きする時代。昔はマスメディアの力が強かったので、コンテンツの押し付けができました。しかし既にマスメディアとユーザーのつながりは薄くなり、共通のコンテクストは分断され、既存のマスメディア的な手法は厳しい時代になりました」
こう語るのはワンメディア代表の明石ガクト氏だ。ONE MEDIAは動画コンテンツを製作し、InstagramやFacebook、Twitter、LINE、グノシーといったプラットフォームに配信するメディアだ。特にミレニアル世代からの支持を集めている。
メディアと広告主が一体になり、仕事をしていくだろうという予言を受け、では具体的にどう顧客へストーリーを伝えていけばよいのか、3つのテーマに分けてセッションが展開された。
まず1つ目のテーマ、「前提が借りられない時代にどう伝えればいいのか」について。メディアが多様化した結果、「みんな知っている」という前提がなくなった。コンテクストが分断された時代にメッセージをどう伝えたらいいのか? 必要となるストーリーテリングの手法とは? 明石氏は自身の経験を交えながら次の通り説明した。
「キングコングの西野さんがおもしろいことを話してくれました。『イベントで1,000人に向けて話して、参加者から『なんとなく西野亮廣の話を聞いた』で終わってしまうよりも、10人と輪になって話して濃い時間を過ごしたほうがいい。そうすると、10人に『西野亮廣がすごく喋ってくれた! 』と感じてもらえる。そして、一人あたりのフォロワーが200人いると仮定すると、その10人がSNSやブログに感想を書けば、2,000人にリーチすることができる。こうした方法が大事な時代じゃないだろうか 』と。ユーザーにできるだけ近い距離感で語りかけないといけません」
ストーリーテリングの内容に関しては、有益だったなとユーザーに強く感じてもらえなければ自発的なシェアや投稿は生み出されない、と明石氏は続けた。
コンテンツ体験は365日✕360°の時代へ
2つ目のテーマは「コンテンツ体験は365日 x 360°の時代へ」。消費者サイクルにおけるコンテンツ体験の時間線が細かくなっている。ユーザーと途切れない関係を構築することが重要だと、明石氏は強調する。
「今の時代、毎週60分のまとまった時間を確保してテレビを見ることは厳しいです。みなさん、超忙しい。このセッション中もスマホにどんどん通知が来ているように。Netflix等のSVODで、世界でニーズが伸びている映像コンテンツの尺は15分ほどです。そういった時代では、コンテンツ体験を毎日与えることで生活者との間で関係性が構築されます。関係性なくして一方的な発信をしても意味がない」

また、菅原氏はナイキの事例を取り上げ解説した。元々は春夏、秋冬と年2回商品をリリースしていた。新商品の情報が消費者に届いても、実際に買うのは2ヵ月後みたいな状況が、今では新商品のリリース時期を春夏、秋冬という2単位から、毎週にシフトしたという。Instagramでも写真から即購入できる「ショッピング機能(Shop Now)」が日本でも解禁された。新興ファッションブランドでは、Instagram上でリリース、すぐに買えるようにするという流れも起きている。
「要は、消費者は覚えていられないということです。覚えてもらうコストまで設計するよりも、知ってもらった瞬間にアクションできるという仕掛けをやらないといけない訳です」(菅原氏)
