メール一辺倒では顧客の94%を取り逃がすリスクがある
マーケティングはアナログからデジタルへ――そんなデジタル偏重型の考え方が近年見直され始めている。日経BPコンサルティングが2018年2月に発表した「マーケティング実態調査」によると、デジタルとアナログを組み合わせたマーケティング施策を実行している企業は、2016年には回答数の3割未満しかいなかったが、2018年には3割超に増えているという。
イーリスコミュニケーションズ エグゼクティブプロデューサーの鈴木睦夫氏はこの結果を見て、「オンラインは大事だけど、それだけではリーチできない層がいる、つまりオンラインのリーチの限界に気づき始めたと考えられます」との見解を示す。
たとえばメール施策で考えてみると、全顧客層に対してリーチできる割合は非常に低いことがわかる。鈴木氏によると、「企業からのメール受信」を了承しているオプトインユーザーの割合は平均3割程度だという。つまり、そもそもメールでコミュニケーションできない層は7割もいるわけだ。
そして開封率を見ると、平均して全送信数の2割だという。「つまりメールでリーチできるのは、全顧客数の6%ほどです。残りの94%に対してどうコミュニケーションを取ればいいのか、企業はまさにこの課題に直面しています」と鈴木氏はいう。
広く顧客とコミュニケーションするには、デジタル×アナログの融合が必要
鈴木氏は30年前にP&Gに入社して以来、一貫してマーケティング畑を歩んできた。そのキャリアの中でも特異な実績は、2014年に入社した日本郵便での取り組みだろう。「この当時は、米国から上陸したばかりのマーケティングオートメーション(MA)に注目が集まり、DMPも実装されつつあるなど、日本市場全体がデジタルに向いていた時期でした。その当時から、DM(ダイレクトメール)というコミュニケーション手段を軸に『デジタルとアナログの融合が大切』ということを訴え続けており、近年ようやくその重要性が認識されてきたと実感しています」と鈴木氏は語る。
最近は、DMとメールだけでなく、たとえばテレビ放送やCMと組み合わせた施策や、コールセンターや店舗、あるいはイベント等の取り組みとデジタルをシームレスにつなぐ動きも出てきた。
鈴木氏はこうした変化を歓迎しながらも、「デジタルとアナログに関しては、企業内の組織や予算、そして知見が分断されている状況にあります。まずここをシームレスにする必要がある」と指摘する。
なぜシームレスが大切なのか。それを明らかにしたのが、鈴木氏が日本郵便に在籍している時に実施した富士フイルムの実証実験だという。