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2ndパーティデータ×DMで反応率4.85倍!?日本郵便とIDOMが取り組むデジタル×アナログ施策

パーソナライズドDMでリッチなコミュニケーションを実現

 目黒氏によると、DMのメリットは「リッチなコミュニケーションが可能で、かつ強いプッシュ力があること」だという。その一方、メールに比べるとコストが高く、大きなリーチ力は期待できない。こうしたことから、「ターゲットを限定し、強いプッシュ力の成果を引き出す」ことを目指したそうだ。

 そこでターゲットに選んだのは、「ガリバー店舗で購入経験があり、自動車ローンの支払いが半年以上残っているユーザー」だった。この層に対し、(1)現在乗っている自動車の推定査定額、(2)ローン残高の2つを出し、(1)-(2)がプラスになったユーザーだけに買い替え提案のハガキを送付したという。

 「ローンで自動車を購入して時間が経つと、普通は『自動車の価値は目減りしてローン残金のほうが多いはず』と思っているユーザーがほとんどです。そのため半年以上ローン支払いがある場合、買い替えを検討することは滅多にありません。そこへ、『現在の自動車を売ってもまだ余剰金があるから、これを頭金にして車を買い替えましょう』という提案が来ることで、買い替えを予定していなかった層に対してアプローチできます」と目黒氏は説明する。

 このDMは、同社がそれまで送付していたDMと比べて反応率が4.85倍、ROIも1.8倍という成果が出た。その理由について、目黒氏は次のように考えている。

 「DMという媒体の特性を理解し、『訴求力の強さ』を前面に押し出したことで成果が出ました。そして『自動車を売っても、ローンが残ってしまう』という一般的な思い込みをくつがえす強いメッセージを、強い訴求力を持つDMで訴えたことで、売上増につながりました」(目黒氏)

 鈴木氏はこの取り組みに関するアドバイザーとして関わってきたが、DMで買い替えタイミングを変化させた成功要因について、「やはりDMというアナログが持つ機密性、信頼性は強い」という見方を示す。

 「ローン残高といった個人情報は、信書を扱う郵便でないと送ることができません。このように個々人で異なる車の推定査定額や、ローン残高をDMに記載するため、パーソナライズしたDMを迅速かつ低コストで印刷する『バリアブル印刷』を活用したことも、成果につながったと思います」(鈴木氏)

デジタル×アナログ施策の効果を出すには事前のPDCAが鍵

 こうした実証実験を背景に、DMとメールを組み合わせた施策の知見は少しずつ蓄積されている。その人に適切な買い替えタイミングを促すため、自社のCRMデータとローン会社のデータを掛け合わせたことも、「今後はデータ分析を行い、DMを送るタイミングやターゲットを選ぶことが重要」という知見につながった。

 ただ、DMとメールの融合施策を成功させるポイントは、「やはり自社でPDCAを回して成果を確認することに尽きます」と鈴木氏はいう。

 そしてDM+メール施策のPDCAを回す時のポイントは、「何もかも一度にテストしようと思わないこと」と釘を刺す。たとえば、多数の顧客のうち、どの層が最も成果が出るかを確認する時に、DMやメール配信のタイミングを変えたり、異なるクリエイティブのメッセージを送ったりしても、結局何が有効だったかわからない。「今日はクリエイティブのテスト」「今日はターゲットの検証」と目的を小さく区切り、それ以外をフラットな状態にして反応の違いを見ることで、成果を確認しやすくなるという。実際、「DMとメールを融合する成果がわからず、予算が下りにくい」という企業も、1つひとつ目的を区切ってA/Bテストを繰り返し、予算獲得に向けた成果検証に動いているそうだ。

 なお、アナログのDMといっても、印刷技術の進化により様々なことができるようになった。たとえば大手通販のディノス・セシールでは、ECサイトで購入せずにカート放置したままの顧客に対し、24時間以内にカート放置の告知とクーポンを記載したDMを送るようにしたという。

 このDMは、先述したバリアブル印刷のテクノロジーを活用したもの。ユーザーの「カート放置」という行動がトリガーとなって自動的にDM印刷・配送と回る仕組みを整備したことで、通常のメール告知に比べて反応が20%上がったそうだ。

 鈴木氏は「そもそも今の生活者は、アナログとデジタル関係なく、それぞれのチャネルをシームレスに行き来しています。ユーザーの行動がアナログとデジタルをわたり歩いて一筆書きしているのだから、企業もそれに対応しなくてはなりません」と語る。今後さらに技術が進み、ECや店舗、チラシ、DM、メール、Webなど様々なチャネルがシームレスになる中、「それに合わせたコミュニケーションを設計することが、ますます重要になるでしょう」と述べ、講演を締めくくった。

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2018/10/23 10:00 https://markezine.jp/article/detail/29404

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