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「TikTok」の広告プラットフォームとしての可能性は?日本法人副社長×CCIが現状と展望を語る

 若年層を中心に支持を広げ、日本版リリースから1年足らずで10代の認知度が7割を超えたショートムービーアプリ「TikTok」(ジャストシステム調べ)。ユーザー急増の背景には、動画投稿のハードルを下げ、視聴者を夢中にさせるための多様な仕掛けがあるという。マーケティングチャネルとしても存在感を増しているTikTokの現状と、キャンペーンに応用したときの可能性について、運営会社副社長の西田真樹氏と、パートナーのインターネットマーケティング企業、サイバー・コミュニケーションズ(CCI)の岸岡勝正氏に聞いた。

「1本最長15秒」で1日平均視聴時間40分超え

MarkeZine編集部(以下、MZ):まずあらためてTikTokとはどのようなアプリか、簡単な説明をお願いします。

西田:TikTokは、UGC型のショートムービーアプリです。世界中のクリエイターが自分を発信するプラットフォームとして急速に人気を集めており、Google PlayとApp Storeが提供するアプリのなかで、2018年に世界で最もダウンロードされたものの1つです。2017年夏から日本版の提供を開始しており、まもなく1周年を迎えます。

TikTok日本法人 副社長
西田 真樹氏

デジタルメディアの広告営業などを広告代理店で経験後、2018年7月にTikTok運営会社の日本法人であるBytedance株式会社に入社。現在はマーケティングと広告販売企画を担当。

MZ:ユーザー数の推移や年齢層はいかがですか。

西田:月間アクティブユーザー数(以下、MAU)は非公開です。ただ、おかげさまでダウンロード数、MAUともに、この半年で倍くらいのペースで伸びています。ユーザーの年齢は、ここまで若年層中心に伸びてきましたが、現在では幅広い層から支持をいただいています。

MZ:他の動画メディアやSNSと比べて、TikTokにはどのような特徴がありますか。

西田:YouTubeやNetflixといった強力なプラットフォームもある動画メディアの中で、TikTokは最長15秒という「ショートムービー」のプラットフォームである点が、第一の特徴です。静止画やテキストだけでは物足りなかったコンテンツの表現に、ショートムービーという新たな窓口ができ、圧倒的な人気が集中している状況です。

 第二に、我々は「テクノロジー」を競争力の源にしています。AIを活用することで、視聴情報や投稿情報をもとにアプリを最適化。広告も含めてすべてのコンテンツをパーソナライズ化しています。

 第三の特徴は、「視聴時間が長い」ことです。1日数時間単位で視聴されるYouTubeなどには及びませんが、TikTokユーザー一人あたりの1日平均視聴時間は40分を超えており、最長15秒のコンテンツの集まりであることを考えると、非常に長いと考えています。

MZ:1本最大15秒の動画だけで、なぜそれほど長時間視聴されているのでしょうか。

西田:アプリをダウンロードしていただくとわかりますが、パーソナライズによる効果とユーザーインターフェースの工夫で、非常に習慣性の高い作りになっています。また、これは個人的な見解ですが「最長15秒」という短さも、日常的に早送りを使って動画を観ているデジタルネイティブ世代の視聴態度にマッチしているのではないでしょうか。

簡単につくれる「突っ込みどころ」が反響を呼ぶ

MZ:習慣性が高いとのことですが、Instagramなど、ショートムービーを投稿できる他のアプリと比べて、機能や使用感でどのような違いがありますか。

西田:先ほど申し上げたパーソナライズ機能のほか、「“盛れる”要素が圧倒的に多く、投稿のハードルが低いこと」が、特徴のひとつとして挙げられます。

MZ:“盛れる”とは、具体的にどういうことですか。

西田:これまでアプリの世界で「盛る」といえば、美顔のエフェクトを顔写真に加えたり、スタンプでデコレーションするといった行為を指していました。TikTokにもそうした機能はありますが、これらはやりすぎると、見る側が「引いて」しまうこともあります。

 TikTokでは、たとえば手を広げたところにイラストが出てきたり、雨降りのアニメーションの中で手のひらを出すと雨粒が空中で止まったりと、撮影中の動画に様々なエフェクトを加えられます。伝えられる内容が増えるだけでなく「突っ込みどころ」ができるので、公開したときの反響も加味した、より高度な盛り方ができるようになっています。

「#髪色チェンジ」:@木下ユリ さんのTikTokより

テレビを見ない若年層へアプローチ

MZ:サイバー・コミュニケーションズ(以下、CCI)は、今年7月にTikTokの広告パートナーになりましたね(参考情報)。ネット広告会社の立場からみた、TikTokの魅力はなんでしょうか。

岸岡:現在日本では、マスリーチが届きにくい層が確実に存在します。そして、その人たちに商品をどう認知してもらい、いかにファンになってもらうかが、将来を考えた上でのマーケティング課題となっています。TikTokは、そういった層を確実にカバーできるプラットフォームだと思っています。

 特に、中高生を中心に視聴メディアの多様化が進んでおり、接触機会を創るのが困難な場合もあります。これからは、TikTokがブランドの認知・好意度を高めるきっかけの一つとなるではないでしょうか。

株式会社サイバー・コミュニケーションズ メディア・ディビジョン グループマネージャー
岸岡 勝正氏

CCI入社後、マス系メディア担当の業務に従事。現在は様々なメディア、プラットフォーマーとのパートナープロジェクトを統括。2018年7月よりTikTokとのパートナープロジェクトを担当。

MZ:TikTokにおける広告キャンペーンで、相性のいい商品・サービスなどはありますか?

岸岡:現状で申し上げると、クライアントは飲料をはじめとする飲食関連が中心となっていますが、ファッションアイテムを訴求するアパレルのキャンペーン展開も十分ターゲットになると考えています。

キャンペーン展開に2つのアプローチ

MZ:TikTokを使った企業のキャンペーン展開には、どのようなものがありますか。

岸岡:大きく分けて2種類あります。1つは「ハッシュタグチャレンジ」と呼んでいるキャンペーンで、TikTok内でクライアント企業から提供される音源やスタンプを使ったショートムービーを作ってもらい、ユーザー間で盛り上がりを醸成します。2つめはアプリ内での純粋な広告コンテンツで、インフィード広告のほか縦型全画面での広告枠が設定されています。

岸岡:2つとも活用方法は様々ですが、傾向としては前者が主にブランディング、後者はアプリダウンロードの訴求などに使われるケースが多いです。企業からの関心は非常に高く、日常的に問い合わせをいただき、直近の当社扱いの広告枠は満稿が続いている状況です。

MZ:ブランディング効果、広告効果はいかがですか。

岸岡:他のアプリと比べて、TikTokは豊富な音楽、エフェクト、スタンプでユーザーによるコンテンツづくりのハードルを下げているのが特徴です。どんな人、シチュエーションでもおもしろい、興味を引く動画が制作できます。撮影する場所や時間などが、どうしても限定的になってしまうInstagramとは違い、全国でユーザーの輪が広がっているなと感じています。

 数字的な効果で言うと、たとえばハッシュタグチャレンジでは、4~5日で数百・数千の投稿が寄せられ、数百万単位の総再生数をクリアできる状況です。一部の著名な方がコンテンツを上げるのではなく、色んな方がTikTokというプラットフォームを楽しんでいるんだなと実感します。

若年層だけじゃない!オールターゲットのプラットフォームへ

MZ:若年層に人気のTikTokですが、今後のターゲット層やマーケティングへの活用は、どのように展開しそうでしょうか。

西田:先行している海外でのサービスをみていると、ファッションやペットの動画など、今の日本の投稿よりもバラエティーに富んでいるのがわかります。ユーザー層もデジタルネイティブにとどまらず、その父母世代まで取り込んでいて、母親が子どもの姿を撮ってアップするといった「生活をきれいに・楽しく記録するプラットフォーム」になりつつある印象です。

 若年層から投稿が広がっている日本のTikTokも、早晩オールターゲットに近づいていき、向こう3ヵ月・半年でもかなり違った顔を見せてくると思います。そこでぜひ、マーケティングへの活用をトライしていただけたらと思います。

岸岡:我々も、オールリーチターゲットに育っていくことを願っています。今後は、TikTokとも協力しながら「再生回数が顧客側にどういうメリットをもたらし、成果につながるか」が見える仕組みも作っていく予定です。単に投稿が盛り上がるだけでなく、実際にこれだけ商品が売れる、ブランドイメージが向上するといった指標があれば、さらに活用が進むと期待しています。

 TikTokの海外での勢いは大変なものです。我々も日本におけるパートナーとして、一過性の盛り上がりで終わらせず、しっかり根付くようにサポートしたい。それが結果的に新たな機能やユーザーの獲得、ひいては次のビジネスチャンスにつながると考えています。広告以外の新しいコンテンツにも、TikTokの中でぜひ挑戦したいですね。

ユーザー熱の高いTikTokにブランドメッセージを乗せて

MZ:TikTokを活用したい企業のマーケターは、何から始めればよいのでしょうか。最後にアドバイスをお願いします。

西田:今後我々は、日本におけるTikTokのリーチを、他のメディアに追いつき・追い越す勢いで高めていくつもりです。まずは投稿されているコンテンツのコンテキスト、伝えたいことに触れていただき、それを自社の商品価値・ブランド価値となぞらえて届けられないか想像してみるとおもしろいのではないかと思います。

岸岡:まずはアプリで実際の投稿を見ていただけたらと思います。自分で動画をアップしなくてもいいです。あとはコメントや「いいね」の数も他のプラットフォームとも傾向が違いますので、ユーザーのエネルギーも感じられるはずです。サービスの中でどういう人たちが、どういう動きをしているか知っていただき、そこへ向けたマーケティングアクションを一緒に考えられたらと思います。

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この記事の著者

MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

相馬 大輔(ソウマ ダイスケ)

ライター。青森県出身・岡山県育ち。 広島大学卒業後、九州の地方紙、東京の業界紙での記者経験を経て2016年からフリーに。 ネットメディアのインタビュー記事を中心に取材執筆。 業種業界・テーマを問わず、斬新なコンセプトとマニアックなエピソードを聞くのが大好き。 2019年3月まで1年間、都内某...

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2018/10/25 10:00 https://markezine.jp/article/detail/29406