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初心者でもわかる!デジタルとアナログを融合したBtoBマーケティングの鉄則

2018/10/24 11:00

 2018年9月20日・21日、東京・御茶ノ水にて「MarkeZine Day 2018 Autumn」が開催された。今回のテーマは「JOIN and UNION」。最近デジタルとアナログ施策の融合が進む中、「具体的にどう融合すればいいのか」と疑問を抱くマーケターも多い。この問いに対し、シャノン 代表取締役社長 中村健一郎氏は「これからデジタルとアナログを組み合わせたマーケティングを始める方でも成果を生み出すことができる方法をご紹介いたします」と語る。その具体的な進め方とは?

デジタルマーケティング“だけの“限界を突破する

 近年、デジタルマーケティング一辺倒ではなく、デジタル施策とアナログ施策を融合した統合型のマーケティングが注目されている。MarkeZine Day 2018 Autumnに登壇したシャノンの代表取締役社長、中村健一郎氏も冒頭で「MarkeZine Dayのイベントのテーマも、2017年9月は『Digital First』、2018年3月のMarkeZine Day Springでは『Beyond Digital Marketing』、今回は『JOIN and UNION』と、デジタルとアナログの融合が進んでいます」と述べた。

株式会社シャノン 代表取締役社長 中村健一郎氏
株式会社シャノン 代表取締役社長 中村健一郎氏

 こうしたことから「デジタルマーケティングは限界を迎えているのか」という意見も少なくない。中村氏も「デジタルマーケティングに重点は置きながらも、それだけでは成果が出にくいと感じている人が増えている」と認めている。

 デジタルマーケティングの黎明期は、「テクノロジーを使って顧客を刈り取る」ということ自体が初めてだったので、大きな成果が得られた。しかしその手法が一般的になると、当然ながら刈り取れるシェアは減っていく。こうしてデジタルだけではなかなか結果が出にくくなったため、デジタルではアプローチできない層にアナログ施策を使ってアプローチすることで、相乗的な成果を求めるようになった。

 こうしたデジタル×アナログの施策を、BtoBマーケティング分野にどう活かすか。この問いに対し、中村氏は「マーケティングの鉄則に従って考えていけばいいのです」と明快に説明する。

デジタル×アナログのBtoBマーケティングの進め方

 マーケティングを進めるには、まず広く市場に「認知」させ、そこから「興味・関心」を持ってもらい、製品購入時の「比較・検討」で導入候補に入り込み、最終的に選ばれて「商談」に進んでいく――というプロセス、つまりマーケティングファネルに沿った施策の組み立てが必須となる。

 そのマーケティングファネルに沿った施策にこれから取り組む場合、まずファネルのボトム部分から改善する必要がある。

 見込み顧客が自社ブランドを「認知」し、なおかつ「課題が顕在化」しているのであれば、踏み込んだ営業活動が必要になる。対して、ブランドを認知している・いないに関わらず、ニーズがまだ潜在化しているようであれば、育てる戦略のほうが適している。

 もちろん、このプロセスどおりにすべての物事が進むわけがないので、売上に直結する最終商談数はできるだけ増やさなくてはならない。どうすれば増えるか。中村氏によると、次の3つの戦略が必要だという。

 「まずは顕在ニーズを抱えている顧客の取りこぼしがないように『穴』となっている部分をきちんと締めること。その上で次に、入り口であるファネルを大きくして件数を増やすこと。そして最後に、入ってくるリードの質を高めること。この3つの順番を守って戦略を立てることが重要です」

 いくら質を良くしても、そもそも入ってくるリードの数が少なければ、商談数の増加にはつながらない。またファネルを大きくして件数を増やしても、取りこぼしが多かったり、質を担保できなかったりすれば、やはり商談につながる率は低い。取りこぼしにつながる穴をふさいだ上で、数と質を担保するという順番こそ、「BtoBマーケティングの鉄則です」と中村氏は説明する。

 この戦略の中で、デジタルとアナログを融合していくわけだ。具体的な施策としては「まず顕在的顧客の取りこぼしがないようにデジタル施策を実施します。それだけだと数に限りがあるので、次にファネルを大きくするために既に持っている名刺を再活用し、最後にリードの質を引き上げるためアナログ施策でアプローチを行います」と中村氏は解説する。

取りこぼしの「穴」につながる2つの失策

 では、ブランド認知もあり、課題も顕在化している顧客のフォローする方法から見ていこう。

 通常BtoBマーケティングでは、自社ブランドを認知している層からアプローチをかける。ところがここで、顧客を取りこぼしているケースが多いという。その取りこぼしの理由として中村氏は、「顧客の『社内で資料を共有したい』に対応できていない」「既存の見込み顧客の自然検索をキャッチできていない」の2つを挙げた。

1.顧客の「社内で資料を共有したい」に対応できていない

 1つ目は、情報収集の段階で「検討のために、資料を社内で共有したい」というニーズに応えていないこと。企業Webサイトの多くは、簡単な製品説明ページを設けただけで「詳しいお問い合わせはこちらへ」と、電話やメールでの問い合わせに誘導しているものが多い。

 これが逆にWebサイトに訪問した顧客を萎縮させ、「十分な資料を入手できないまま、比較・検討フェーズから漏れてしまう」という事態を招いてしまう。

 これを防ぐには、「まず顧客が欲する資料はきちんと提示し、問い合わせとは別にすることです」と中村氏は語る。実際、シャノンでも「資料請求」と「問い合わせ」と2つのボタンに分けたところ、問い合わせ件数に比べて資料請求件数は1.5倍になったという。このように、サイト訪問者のニーズに応えるだけで、デジタル施策でも十分な効果を上げることができるわけだ。

シャノンの企業サイトでは、ファーストビューに「資料請求」「お問い合わせ」のボタンが配置されている
シャノンの企業サイトでは、ファーストビューに「資料請求」「お問い合わせ」のボタンが配置されている

2.既存の見込み顧客の自然検索をキャッチできていない

 もう1つの取りこぼしの“穴”は、「既存の見込み顧客の自然検索をキャッチしきれていないこと」にあるという。具体的には、過去展示会やセミナーに来た来訪者が、久しぶりに自然検索で自社サイトを訪問したというケースだ。

 自発的な来訪者は顕在化したニーズを持ち、比較・検討のためにサイトを回っていることが多い。実際、Webアクセスから得たリードの7~12%は、自然検索で自発的に来たアクセスだという。特に一度自社ブランドを認知した後、時間が経ってから訪問しているのならば、比較・検討フェーズにある可能性が高い。

 これを取りこぼさないようにするには、Webトラッキングツールの存在が不可欠だ。同ツールがあれば、誰がいつ、どのページを閲覧したかがわかる。ただ、アクセスした全員に“すかさず”フォローするのが正解というわけではない。

 「たとえば展示会で『情報収集中』とアンケート回答した人が直後にサイトを訪れても、単に軽い情報収集で訪問した場合が多く、あまり強力にプッシュすると敬遠されるでしょう。むしろ、少し時間が経ってから自発的にアクセスしてきた場合、フェーズが進んで比較・検討になった可能性が高く、ここで適切にアプローチすると商談につながる可能性が高まります

既にあるハウスリストを活用する

 次に、2番目の「ファネルを大きくする=名刺再活用」についてはどうか。

 中村氏によると、「自社ブランドを認知しており、まだ顕在化したニーズがない」層のリストをきちんとフォローしている企業は少ないという。

 ちなみに「自社ブランドを認知していて、まだ顕在化したニーズがない」というのは、言い換えると「既に名刺交換をしているが、特にWeb訪問も問い合わせもない状態」となる。

 一般に営業担当者は年間200枚くらい名刺を交換しており、5人もいれば年間1,000枚ものリストが蓄積される。こうしたリストの中で、すぐ商談につながるのは12.5%といわれており、まったく対象外なリストは17.5%、残りの70%が「長期フォローが必要なもの」となる。

 これを営業担当者の数で考えると、一人年間140枚は長期フォロー対象者となり、5名だと700件のリストは、長い視点でじっくり行動をフォローすべき対象となるわけだ。

 「このフォローすべきリストへの対応をきちんと行うと『ブランド認知しているリードが少ない』という課題を解決できます」と中村氏は説明する。そのためには、まず持っている名刺管理ツールやモバイルアプリを使って名刺情報をすべてデジタル化し、Webトラッキングツールを活用して行動をフォローすることが必要になる。そしてモバイルアプリで過去の接点を確認しつつ、適度にアプローチを続けることで、ニーズが顕在化した時に検討してもらいやすくなる。

 実際、ある大手SI企業では「製品サイトへの訪問あり・なし」「担当営業の訪問あり・なし」でセグメントを分け、各セグメントでコミュニケーションを変えた。特に、「製品サイトへの訪問、営業担当の訪問あり」の層に対しては、メールや電話を併用して自社製品のメリットを伝えたところ、訪問数3.3倍、案件数3.6倍という大きな成果を得られたそうだ。

アナログ施策の重要性を実感したシャノンの「失敗事例」とは

 では最後にアナログ施策による顧客の「引き上げ」はどうだろうか。中村氏は「顧客の課題がまだ明確ではなく、ブランド認知もない場合、デジタルよりもアナログ施策に注力したほうが良いと思います」と語る。というのは、シャノン自身、デジタルマーケティングに舵を振り切って失敗した例があるからだ。

 中村氏によると、シャノンがデジタルマーケティングに振り切ったのは2年前の2016年だという。当時同社は、展示会出展やセミナー数を削減して人件費をすべてデジタル施策の予算に回し、デジタル広告やSEO、ランディングページの改善などを行った。その結果、2015年度と比べて2016年度の資料請求数は248%、2017年度も324%と大きく伸びたという。

 「ところがこのマーケティング部の成果は、会社の業績と必ずしも結びつきませんでした」

 それはなぜか。中村氏は、「認知、興味・関心、比較・検討、商談というプロセスの中で、デジタル広告が得意なのは最後の刈り取りの部分です。しかし、興味・関心フェーズで競合が啓蒙活動を展開している時、刈り取りに注力するあまり、競合が作り出したマーケットで勝負をせざるを得なかった。そのため比較・検討フェーズでは第一候補となれず、『一応』という扱いをされ、問い合わせは多かったものの、勝率が著しく低くなったのです」と分析している。

 商材や提案内容にもよるが、「課題を顕在化したのは誰か」という事実は、最終的な刈り取りフェーズでも大きく影響する。特に、セミナーや展示会など、人と人が直に接するアナログ施策での啓蒙活動は有効だ。

アナログ施策回帰で得られた成果

 こうしたことから、シャノンでも改めてアナログ施策への再注力を決意。具体的には、定期セミナーの開催、外部リアルイベントへの積極的出展、ホワイトペーパーのフォローセミナーやインサイドセールスによる長期フォローという4つの施策だ。

 特に啓蒙活動において、実際に時間を割いてもらうリアルイベントやセミナーの役割は大きい。たとえば動画コンテンツを30分継続して閲覧してもらうことと、セミナーの講演を30分聞いてもらうことを比較すると、後者のほうがしっかりと内容を把握でき、定着率も高くなる。実際、現在と2017年の同時期を比較すると、新規顧客獲得件数が147%と大きく向上しているそうだ。

 2017年4月に東証マザーズに上場したECサイト支援システムのテモナも、「これから通販を始めたい」という層に対してリアルセミナーを開催し、近い距離でコミュニケーションを取ることを重視しているという。同時に、Web訪問などのデジタル行動もトラッキングして長期的なフォローができる体制を築いている。これによりエンゲージメントを高め、成果を上げているという。

 中村氏は最後に「数々の事例を考えると、デジタルとアナログの組み合わせとして、顕在課題をフォローする、名刺を再活用する、アナログで引き上げる、という順番で実施することが重要。これにより手応えを得ながら、マーケティングプロセスの仕組みをより洗練できると思います」と述べ、講演を締めくくった。

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