デジタルマーケティング“だけの“限界を突破する
近年、デジタルマーケティング一辺倒ではなく、デジタル施策とアナログ施策を融合した統合型のマーケティングが注目されている。MarkeZine Day 2018 Autumnに登壇したシャノンの代表取締役社長、中村健一郎氏も冒頭で「MarkeZine Dayのイベントのテーマも、2017年9月は『Digital First』、2018年3月のMarkeZine Day Springでは『Beyond Digital Marketing』、今回は『JOIN and UNION』と、デジタルとアナログの融合が進んでいます」と述べた。
こうしたことから「デジタルマーケティングは限界を迎えているのか」という意見も少なくない。中村氏も「デジタルマーケティングに重点は置きながらも、それだけでは成果が出にくいと感じている人が増えている」と認めている。
デジタルマーケティングの黎明期は、「テクノロジーを使って顧客を刈り取る」ということ自体が初めてだったので、大きな成果が得られた。しかしその手法が一般的になると、当然ながら刈り取れるシェアは減っていく。こうしてデジタルだけではなかなか結果が出にくくなったため、デジタルではアプローチできない層にアナログ施策を使ってアプローチすることで、相乗的な成果を求めるようになった。
こうしたデジタル×アナログの施策を、BtoBマーケティング分野にどう活かすか。この問いに対し、中村氏は「マーケティングの鉄則に従って考えていけばいいのです」と明快に説明する。
デジタル×アナログのBtoBマーケティングの進め方
マーケティングを進めるには、まず広く市場に「認知」させ、そこから「興味・関心」を持ってもらい、製品購入時の「比較・検討」で導入候補に入り込み、最終的に選ばれて「商談」に進んでいく――というプロセス、つまりマーケティングファネルに沿った施策の組み立てが必須となる。
そのマーケティングファネルに沿った施策にこれから取り組む場合、まずファネルのボトム部分から改善する必要がある。
見込み顧客が自社ブランドを「認知」し、なおかつ「課題が顕在化」しているのであれば、踏み込んだ営業活動が必要になる。対して、ブランドを認知している・いないに関わらず、ニーズがまだ潜在化しているようであれば、育てる戦略のほうが適している。
もちろん、このプロセスどおりにすべての物事が進むわけがないので、売上に直結する最終商談数はできるだけ増やさなくてはならない。どうすれば増えるか。中村氏によると、次の3つの戦略が必要だという。
「まずは顕在ニーズを抱えている顧客の取りこぼしがないように『穴』となっている部分をきちんと締めること。その上で次に、入り口であるファネルを大きくして件数を増やすこと。そして最後に、入ってくるリードの質を高めること。この3つの順番を守って戦略を立てることが重要です」
いくら質を良くしても、そもそも入ってくるリードの数が少なければ、商談数の増加にはつながらない。またファネルを大きくして件数を増やしても、取りこぼしが多かったり、質を担保できなかったりすれば、やはり商談につながる率は低い。取りこぼしにつながる穴をふさいだ上で、数と質を担保するという順番こそ、「BtoBマーケティングの鉄則です」と中村氏は説明する。
この戦略の中で、デジタルとアナログを融合していくわけだ。具体的な施策としては「まず顕在的顧客の取りこぼしがないようにデジタル施策を実施します。それだけだと数に限りがあるので、次にファネルを大きくするために既に持っている名刺を再活用し、最後にリードの質を引き上げるためアナログ施策でアプローチを行います」と中村氏は解説する。