DSPやSSPが相次いでリリースされ、「アドテク元年」と呼ばれた2011年から8年が経過した。プログラマティック広告の出稿量は増加し続けている一方、業界には「次」を模索する動きも見え始めている。そのひとつが、マイクロアドによるマーケティングデータプラットフォーム事業「UNIVERSE」と、新しい広告プラットフォーム「UNIVERSE Ads」の発表だ。DSPとはまったく別のものだというこれらは、マーケティングにどんな価値をもたらしていくのだろうか。同社の代表取締役社長 渡辺健太郎氏に話を聞いた。
思い描いていた世界 ようやく実現の入り口に
「広告を買い付けるという限られた役割しかもたないDSPでは、大量のデータが存在する現状に対応しきれなくなっています。もっと幅広いものを視野に入れなければいけない」。そう語るのは、マイクロアドの代表取締役社長 渡辺氏だ。実際に、DSP「MicroAd BLADE」の提供を開始した7年前と比べて、世の中に存在するデータの量と種類は格段に増加した。
特にここ数年では、Web上のデータだけでなく、リアルの購買データや位置情報データを組み合わせることもできるようになってきた。データの増加は、マーケティングにとってプラスになるが、それを活用するには、新たなインフラや仕組みが必要になる。
そこで同社は、マーケティングデータプラットフォーム事業「UNIVERSE」の立ち上げに加え、新しいプラットフォームの開発に着手。広告プラットフォームを全面更新し「UNIVERSE Ads」をリリースした。
渡辺氏はUNIVERSEについて、「ようやくイメージしていた世界が実現できる、入り口に立ったという感じ」と話す。渡辺氏が描いていた世界では、一体どんなマーケティングが可能になるのか。その構想を聞いた。
仮説を立てるのは「原始的」な行為に
自社のデータ資産をインプットし、同社のデータや第三者データと結合できる。
UNIVERSEは、企業がデータの集積や分析を行うマーケティング基盤を構築するためのサービスだ。その特徴は、増え続けるデータを単一のIDで統合できること。企業の顧客CRMデータをはじめとする様々なデータやマイクロアドが保有するPCやスマートフォンの行動データ、さらにサードパーティーのデータ保有企業との連携によって、横断的な分析が可能だ。
同社は2007年の設立以来、同社が取得したネット上のオーディエンスデータや第三者から提供を受けたデータを統合的に集積・分析し、広告配信に活用する事業を進めてきた。同社はこの知見を活かすことで、UNIVERSEのデータ精度や分析精度を向上。また、一から構築したアルゴリズムによって、入札ツールの精度も高めた。データ解析のためのAI技術や機械学習の活用も進められているという。
大量のデータを基に、AIが先に結論を出すという状況が実現すると、何が変わるのだろうか。渡辺氏は「UNIVERSEの世界について説明するのは難しいのですが……」と前置きしながらも、料理とワインを例に語った。
料理は大抵、どのような手順で作られたのかをレシピとして言語化できる。しかしワインやウイスキーの場合は、どうやって作るのかと聞かれても説明が難しい。素材の出来や、使用している樽の種類、熟成させる期間といった「変数」が多すぎて、レシピ化することができないからである。理由はわからないが、おいしいもの、素晴らしいものが生まれることがある。
UNIVERSEの下でも、これと同じようなことが起こるという。AIが瞬時に結果を出すが、その過程でどんな分析が行われているのか、人間はその場ではわからない。そうすると、PDCA自体に変化が生まれると予想される。
「PDCAという、Planから回し始める『人間モデル』に対して、AIはまず結果=Factをぽーんと出してしまいます。これからはFactを起点にプランニングができるのです。人間が仮説を立てるという行為は、原始的なものになっていくと思います」(渡辺氏)
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蓼沼 阿由子(編集部)(タデヌマ アユコ)
東北大学卒業後、テレビ局の報道部にてニュース番組の取材・制作に従事。その後MarkeZine編集部にてWeb・定期誌の記事制作、イベント・講座の企画等を担当。Voicy「耳から学ぶマーケティング」プロジェクト担当。修士(学術)。東京大学大学院学際情報学府修士課程在学中。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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