デジタル横断型のDM施策が一般的に
デジタルの時代でも、DMがマーケティング活動の手段であること自体は変わりません。ただ、テレビCMを見て気になった商品・サービスをネットで検索したり、逆にネットが起点となって実店舗に足を運んだりと、メディアのオムニチャネル化が進んでいることが以前との大きな違いです。テレビCMだけで認知獲得から購買までを担う「一気通貫型」が必ずしも主流ではなくなってきたため、DMで認知を獲得し、ネットで購入してもらうといったことができるようになっています。
私が審査員を務める「全日本DM大賞」でも、この流れは顕著です。2018年の「第32回 全日本DM大賞」では、「認知獲得に目的を絞ったもの」「インスタ映えを喚起するもの」など、狙いが明確で、人間の五感に訴えかけることに優れたものが多いと感じました(入賞作品一覧はこちら)。また、最近ではDMにQRコードが記載されていて、ネットに誘導する仕掛けも用意されています。そのため、顧客のデータを得ることも可能になっています。
たとえば、ある学習塾のDMでは、QRコードをスキャンすると授業風景を撮影した動画を視聴することができ、いきなり説明会に行かなくても入塾の判断ができるような情報を提供しています。
その他、大学の活用事例も豊富です。学習院大学のクリスマスカードのDMは、中を開くと「桜の季節にお会いしましょう。」と書いてあるものでした。おそらく、翌年の出願数増加を期待しての施策だと思いますが、受験生だけでなく親にも「ここはいい大学だな」と思わせるクリエイティブですよね。
また東京電機大学は、在校生にアニメ好きの学生が多いことに着目し、入学説明会を促すラノベ風のクリエイティブのDMを配布。大学公式TwitterのRT数は昨年同期間比で135%となり、過去最高のオープンキャンパス来場者数を記録したそうです。
スマホネイティブ世代にとっては新鮮
私が興味深いと感じた事例の一部をご紹介しましたが、これ以外にも、自動車や化粧品のように、比較的高単価な商品のDMが目立ちます。
DMは電子メールと同じで、ハガキを想定すると、クリエイティブの制作費用を抜きにすれば、日本全国どこでも一通62円(2019年2月12日現在)から送ることができる民主的なメディアです。
当然重要なのは「誰に送るか」ということなので、まずは顧客データをきちんと管理している必要があります。しかし、企業が伝えたいと思っているメッセージをストレートに届けられるメディアだと考えると、デジタル活用が加速している今であっても、十分活用の可能性があると思いませんか?
手紙文化に慣れていないスマホネイティブ世代ほど、自分宛にDMが届くことを新鮮に感じるでしょうし、モノとして残る紙の効果は、あわただしい現代だからこそ大きいのではないでしょうか。デジタル疲れをしている顧客にこそ、アナログのコミュニケーションが効果的かもしれません。