“関係線”の上で生まれた会話は自発的に広がる
デジタルというと、パーソナライズによる個人最適化がイメージされがちだが、西山氏は「ソーシャルメディアに関してはむしろ人々を密集させ、個人ではなく群衆を可視化し最適化したことに、唯一無二の価値があると考えています」と語る。人同士のつながりを含めた“群れ”をマーケティングに活用するなら、対個人とは明らかに異なる情報伝達構造や話法を理解することが不可欠だ。
そこで、2つ目のピント合わせとして、西山氏は群れに対するコミュニケーションの理想像を解説する。たとえば、1)従来の不特定多数のマスに向けたコミュニケーションと、2)現在デジタルで追求されているパーソナライズのコミュニケーション、そして3)ソーシャルメディアでのコミュニケーション、の3つを比較した場合、1)と2)は対象とするボリュームや表現方法は違っても「企業が受容してもらいたいメッセージやコンテンツを一方的に伝える」点は共通している。一方、3)は可視化された群れの中で「ブランドやプロダクトについて自発的な会話が生まれるようなメッセージやコンテンツで、多方向へ伝えてもらう」ことを狙う。
ここでのポイントは、「つながっている関係性=“関係線”の上でのコミュニケーション」だと西山氏は語る。
関係性を分析することが、コミュニケーション設計の第一歩
関係線は、ソーシャルグラフ(フォロー/フォロワー)はもちろん、興味関心の方向性、あるいはモーメントやトレンド、フィーリングなど、様々な観点で描かれる。それは日常的に、また瞬間的にもつながったり離れたりして、群れは随時形成されている。この可視化された関係線を分析することが、コミュニケーション設計の第一歩だ。関係線でつながっている双方が反応しやすいコンテンツを提供できた場合、そこには自発的な会話が生まれる。
「そこから、結束したり分業したり協働したりと、群れ特有の行動を繰り返しながら、その先の関係線上を通って多方向へうねりのような情報伝達が起こることがあります。関係の間にコンテンツが置かれ、会話が生まれていくという体験を通じて、態度変容と行動が促進されていく、これがソーシャルメディアマーケティングであるべきコミュニケーションの姿だと考えています」(西山氏)
関係線の分析、その線上へのコンテンツ提供、群れ特有の情報伝達の実現。この3ステップが踏襲された参考事例を、西山氏は紹介する。