デジタル・アナログ統合のきっかけは?
「『ファンの声』×『データ』で進化する!WOWOWのコンタクトセンター戦略」と題された本セッション。コールセンターに集まってくるアナログのデータと、デジタルマーケティングのデータを統合するコンタクトセンターを軸に、WOWOWが展開するマーケティングの構造が共有された。
登壇者の杉本氏は、WOWOWのマーケティング全般を担うWOWOWコミュニケーションズにおいて、コールセンターからキャリアを始め、その後デジタルマーケティングチームの立ち上げやDMPの構築・運用に携わってきた人物だ。
はじめに杉本氏は、アナログとデジタルの統合が必要になった背景を説明した。
WOWOWの加入件数は、2005年から13年連続で純増している。サービスの解約申し込みを撤回してもらう「解約抑止」に力を入れてきたことが、この成果を生んでいるそうだ。
ところが杉本氏は、2000年代と2010年代の解約抑止の取り組みには、大きな違いがあると明かす。
「2000年代は、解約に関するお問い合わせに対して、電話口で水際のヒアリングを行っていました。オペレーターがお客様への応対履歴を参考にしながら、その方に合ったチャンネルや番組の情報を提供することで、『知らなかった』という声を引き出し、解約を抑止するという構造です。『自分が見たい番組が放送されるなら継続契約します』というリテンションのケースが多く、これが解約撤回率の向上につながっていました」(杉本氏)
「検索」により顧客の知識がオペレーターを超える
しかし、2010年代には状況が一変する。それまで成果を挙げていた水際の解約阻止が、徐々に効かなくなってきたのだ。この理由について、杉本氏は、顧客側のデジタルシフトが大きな影響を及ぼしていたと振り返る。
「ネットで検索するのが当たり前になり、チャンネルに関する豊富な知識を持つ顧客が増えたことで、オペレーターのレコメンドで顧客の期待を超えることが難しくなりました。それまで通りの提案をしても、『そのくらい知っています』という言葉を返されてしまい、逆効果の結果を招いてしまっていたのです。WOWOWのブランドそのものに対する印象を損ねてしまう可能性も危惧されていました」(杉本氏)
加えて、カスタマージャーニーにおけるほとんどの行動がネットで完結するようになったことで、コールセンターには断片的な応対履歴のデータしか残らなくなっていた。これが、WOWOWがデジタルシフトへの対応を本格的に開始したきっかけだ。
しかしその時、杉本氏は、コールセンターで働く社員たちに強い危機感が漂っているのを感じたという。
「コールセンターの価値が下がってしまうのではないか、ここにいる人間の評価が下がってしまうのではないか、というのが、正直な気持ちだったのだと思います」(杉本氏)
コールセンターで働く社員たちのマインドを変えながら、アナログとデジタルの統合を適切なかたちで進めていく。この難題に、WOWOWはどのように対応したのだろうか。