エントリーを起点とした採用の限界
ここで中途採用を例にとり、「エントリーを募って選考を回す」ことに限定された従来の採用活動を候補者視点から振り返ってみましょう。エントリーの母体となるのは転職意欲が既に顕在化している層であり、彼らが情報ソースとしているのは転職サイトやエージェントの紹介など、第三者がカタログ的に提供している求人情報です。
そして、こうした仕事探しにおける候補者の最大の関心事は「他社との条件比較」になりがちです。つまり、「自分のスキル・経験をより高く買ってくれそうな会社はどこか」が職探しにおける動機付けの軸となります。
もちろん、こうした動機で転職活動をすること自体は自然なことであり、採りたい人材の求める条件にマッチするオファーを出せるようになることも企業努力の一環です。しかし、採用競合とのオファー競争に勝てる企業がすなわちVUCA時代の経営課題に立ち向かえる組織かといえば、決してそうではありません。
「目的オリエンテッド」なチームのつくり方
外部環境の変化にしなやかに対応するには、「目的オリエンテッドで自律的なチーム」を作る必要があることは先に述べたとおりです。では、その要件を満たすために、企業は候補者に対してどんな働きかけをすればよいのでしょうか。ウォンテッドリーではこの問いに対する参照軸としてダニエル・ピンクの提唱する「モチベーション3.0」の考えを援用し、「自律・共感・挑戦」を候補者の動機付けに影響する要因として重視しています。
これらのうち「共感」とはつまり、「目的(=purpose)に対する共感」です。採用の文脈に当てはめれば、「なぜやるのか」という問いへの共感を起点に企業と個人とがつながっている状態(=ビジョンマッチ)を目指すことこそが、変化に強い採用を作るための基礎要件になります。
採用におけるリードジェネレーション
ビジョンマッチを軸とした採用活動を行うためには、転職意欲が顕在化していないターゲット層に対して自社の健全な理解を促し、ファンベースを構築することが大切です。リクルートメント・マーケティングではそうした転職潜在層への情報発信を通じて「見込み候補者(=リード)」を増やすことを「採用におけるリードジェネレーション」と位置付けています。

上の図はリクルートメント・マーケティングにおける採用活動の起点を従来の採用プロセスと比較したものです。ターゲットが条件軸で仕事探しを始める手前の段階から、「なぜやるのか」を核に据えた情報発信を自社オウンドメディアやSNSを通じて行うことにより、「あの会社の目指している世界観が好きだ。何か自分のスキルで貢献できることはないだろうか」というモチベーション3.0の時代に適した動機形成を行うことができるのです。
