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コンテンツを「ただ出せばよい」わけではない サイボウズ×メドレーと考える採用コミュニケーション

2019/11/18 08:00

 「採用マーケティングをハックせよ」をテーマにお届けする本連載。第5回となる今回は外部の意見を取り入れるために、企業オウンドメディアの第一人者として知られる『サイボウズ式』編集長の藤村能光さん、ビジネスSNS「Wantedly」での採用ブランディングをはじめ、様々な採用施策で注目を集める医療系テック企業であるメドレーの執行役員 加藤恭輔さんとの座談会を実施。採用におけるコミュニケーションや、企業の情報発信といった領域に深い造詣を持つお二人との対話を通じて、三者三様のリクルートメント・マーケティング手法を掘り下げていきます。

目次

掲げたゴール、置かれたフェーズによって、求められる手段は違う

小池弾(以下、小池):これまでの連載では「そもそも採用マーケットは今後どう変化していくのか?」という視点でお話をしてきました。

 前提条件になっているのが「転職意識の変化」と「アプローチの変化」です。従来は、転職すると決めた時から「どのような転職先があるのだろう?」と探し始めていた。現在は終身雇用制が崩れ、キャリアチェンジが当たり前の時代です。転職者の頭の片隅には「いつかキャリアを変えるかもしれない」という考えが常に存在しています。その変化にともない、顕在層への直接的なアプローチだけでなく、情報発信を通じて潜在層のマインドシェアを得るという考え方が必要になってきました。

 今回はせっかくお二人と話せるので、どのような考えのもとで、日々の採用活動において具体的に何をしているかをお聞きできれば嬉しいです。どうぞよろしくお願いします。

写真左から順に:藤村能光(サイボウズ株式会社)、加藤恭輔(株式会社メドレー)、小池弾(ウォンテッドリー株式会社)
写真左から順に:藤村能光(サイボウズ株式会社)、加藤恭輔(株式会社メドレー)、
小池弾(ウォンテッドリー株式会社)

加藤恭輔(以下、加藤):よろしくお願いします。採用という大きなテーマについて最初にお話ししておきたいのは、「会社のフェーズや掲げるゴールによって手段は変化する」ということです。直近すぐに人を採用する必要がない場合は、オウンドメディアに取り組んでじっくりブランドを育てることもできますし、人材確保の緊急度が高い場合は、採用に直結するコミュニケーションを設計しなければいけない。「どれが正しい」ではなく、会社の状況とフェーズで変わるものだと思います。

藤村能光(以下、藤村):僕もその意見に賛成で、「会社としてどこに向かうか、目標までどれくらいのタイムスパンがあるのか」がわかっていないと、そもそも採用に向けた活動をすることはできないと思います。

 サイボウズも創業から10年ぐらいは、今のメドレーさんと同じように急成長のフェーズだったんですよ。だけど、右肩上がりの時期や苦戦した時期も経験して、現在は多様性のある組織を模索しています。もちろん、事業にコミットできる人を採用したい気持ちは変わりませんが、その定義が昔よりもだいぶ広がったというか。

 なので、今回のお話は「これが答えだ!」と結論づけるのではなく、企業にはそれぞれ異なるフェーズがあって、僕たちはこういう判断をしてきたと。そういう方向性で進められたらいいですね。

なぜ「自社のメディア化」を始めたのか?

小池:「フェーズによって求められる動きは異なる」という前提で話を進めていくと、まず聞きたいのが情報発信を始めるに至った背景です。各々どのような状況や課題が存在していたのでしょうか?

加藤:当時の課題として、社内と社外の間で認知度に対するギャップがありました。リファラル採用やダイレクトリクルーティングも開始していて、人も採用できてくる中で、社内では「メドレーの知名度が格段に上がってきた、これからさらに採用を加速できるはず」という意見が多かったんですね。でも社外の声を聞いてみると、その多くが「メドレーは勢いがありそうなベンチャーですよね。ところで具体的には何をしているのですか?」という印象だったのです。

 僕はメドレーにジョインする前にクックパッドに5年半いましたが、クックパッドは社名やサービス内容が明確に世間に認知されていました。対するメドレーにはそれがない。会社に勢いがあっても、どれだけ社会的に意義があるビジネスをしていても、会社や事業の内容が知られていないと、周りの友人を誘い切った後の採用は困難になるだろうと感じました。

 もったいない状況だったので、急いで認知形成と興味を持ってもらうフェーズまで持って行こうと。もちろん間違った方向性、つまりブランド毀損をする知られ方は良くないので、発信するコンテンツの方向性やチャネルは吟味しましたね。ベンチャー界隈の中で単純に目立つことだけを目的とするならもっと楽にできていたと思いますが、私たちの業態や会社の文化をふまえると、やってはいけないことだと考えていました。

藤村:僕たちの場合は「会社の認知活動に取り組んだ結果、採用にも結びついた」という表現が正しいですね。弊社のオウンドメディア『サイボウズ式』が立ち上がったのは2012年で、自社の認知拡大を目的に開始しました。知っていただかないと製品を使っていただけないし、認知を高めないと弊社のビジョンである「チームワークあふれる社会」を実現できない。だからメディアを立ち上げたと。

 ただ、加藤さんのおっしゃる通り、単に認知を高めるだけではダメで、ブランドイメージを高めながら「社会問題を『チームワーク』で解決する会社」という認知を形成したかった。コンテンツを通して「サイボウズはチームワークを真剣に考えているんだな。だからこの会社を選びたい」というイメージを持ってもらいたかったんですね。

 採用の話に戻すと、サイボウズでは、採用の際にアンケートを実施しています。たとえば、「サイボウズ式が参考になった」とコメントしている2020年卒の新卒採用の内定者は38.1%でした。キャリア採用では、「応募を決めたきっかけ」として15.4%の方がサイボウズ式を挙げていますなので、一定の成果は出ているのかなと。

小池:流れに乗ってウォンテッドリーのお話もしておくと、開始当初はビジョン・ミッションの発信に力を割いていました。逆に転職理由にフォーカスした社員インタビューはそう多くない状態でしたね。結果何が起きたかというと、「ビジネスサイドが何をしているか」のイメージがうまく形成できなかったのです。エンジニアチームはイベント登壇の機会も多く、「技術力が高い会社だろう」というイメージが広がっていましたが、ビジネスサイドが「そもそも何をしているか」がわからない状況でした。

 現在は社員インタビューも増やして、採用領域のSaaSモデルで成長している現状や、新規事業のWantedly Peopleを成功させるべく奮闘しているメンバーたちの取り組みなど、ビジネスサイドの訴求にも取り組んでいます。こうして状況を聞くと各々課題が異なるので、一概に「このアプローチが正しい」と言えないですね。まずは自社の状況を把握することが優先事項になりそうです。

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