タッチポイントの設計
小池:お二人がおっしゃっていたように、リクルートメント・マーケティングにおけるコンテンツは「ただ出せばよい」ではないと思います。メッセージは様々ですし、どのレイヤーの、どのチャネルで発信するかで役割が異なってくる。その流れで、タッチポイントの設計について聞いていきたいのですが。
藤村:メディア単体で言えば、サイボウズ式のタグラインは「新しい価値を生み出すチームのメディア」に設定しています。とはいっても「チームワーク」の幅は広い。会社、家族、サードプレイスなど様々な場所にあるものですし、チームを円滑にするアプローチも、関係性や業務の改善など、いろいろあるわけです。
そこで「チームワークが求められるシーンはどういうものか?」細分化してコンテンツを作るわけですが、オウンドでは3つのカテゴリー、「カイシャ・組織」「働き方・生き方」「家族と仕事」を設定しました。どこに注目するかはその時々で変わります。「社会的に今こういうことに価値があるから企画を形にしたい」という意識で取り組むことがほとんどです。
根本的なスタンスの話をすると「徹底的に公明正大であろう、自分たちに正直であろう」という考え方がありますね。「都合の良いことばかりを書かない。隠しごとをせずに、できていないことも書こう」と。SNSが普及して、情報はすぐに拡散するようになりました。隠していてもバレた瞬間価値がなくなってしまうので、基本的に嘘はついちゃいけないんですよ。そうやって培った信頼が結果的にブランディングや採用にも響いてくると思っています。

加藤:あとは、最近のトレンドというか変化として、コンテンツを作って認知させていくのが難しくなってきていますよね。どこもかしこも「コンテンツマーケをしよう」という雰囲気なので記事が増え、一つあたりのPVが下がっていく。内容も「どこかで見たな」と感じることが多くなる。だからもっと重層的に、全体を俯瞰して施策を組んでいかなければと思いますね。
オフラインでコミュニケーションを深化させる
藤村:加藤さんとは異なる課題感からスタートしましたが、サイボウズではコンテンツの配信だけでなく、イベントやコミュニティ作り、出版事業「サイボウズ式ブックス」もあります。僕はイベント企画やコミュニティ作りにも関わっていますが、「もっと読者さんのことを知りたいな」と思ったことがきっかけでした。UUやPVだけで読者の動向を捉えようとしてはいけない。だから、読者さんと直接コミュニケーションする場所を作りたいなと。これが直接採用につながっているかはまだわからないところですが。
小池:オフラインのコミュニケーションは今後ますます重要になっていきそうですね。加藤さんがおっしゃる通り、コンテンツを通した認知は難しくなっています。たとえばユーザーがSNSで記事を拾い読みしたとしても、読み終わってしばらく経てば「どの媒体の、誰の発信なのか」を忘れていることが多い。情報量が多い時代ならではの難しさではないでしょうか。
一方で、オフラインのイベントは参加者の主体性が高く、ダイレクトにコミュニケーションできるので印象にも残りやすい。ウォンテッドリーもイベントを開催していますが、いかにカジュアルで来やすいイベントにするかを考えて動いています。
