1年以内に実装したいマーケティングテクノロジー、第1位はAI
――まず、AIのビジネス活用について現状を教えてください。
住岡:まだまだビジネス面では活用しきれていないのが実状です。IT・システム部門における業務効率化は少しずつ進んでいるのですが、マーケティング部門は手付かずのところが多いようです。
ただAIに対する期待は高く、私たちが2018年12月に発表した「日本における企業のデジタルトランスフォーメーション&デジタルマーケティング 2018年度調査」では、今後1年以内に実装したいマーケティングテクノロジーについて聞いたところ、AIという回答が圧倒的に多かったのです。「どのように使えばいいかわからないけれど、活用したい」という状況なのではないでしょうか。
森:顧客行動もチャネルも多様化し、カスタマージャーニーが複雑化している中で、マーケティング担当者の負担は大きくなっています。そういった背景からもAIへの期待は高まっていますね。しかし、AIといえばアルゴリズムやシステムなどの技術的な部分がフォーカスされがちで、企業のマーケティング課題を解決するための具体的な使い方という点では、まだ限られた前例しかない、というのが実情です。
そのため、「AIを使って具体的なマーケティング課題を解決し、投資対効果を得る」という点が企業の中で現実味をもって語られておらず、漠然とした期待だけが先行していると考えています。
AIが得意な仕事は「重要な要素の発見」と「データのセグメント化」
――ではAIが解決できる課題というのは、具体的にどのようなものなのでしょうか。
住岡:AIが得意なのは、目的を達成するために何が重要な要素なのかをすぐに発見し、定量化することです。目的さえ人間側でしっかり設定できれば、AIがすぐに答えを発見してくれます。
たとえば、顧客の行動データを分析した結果コンバージョンに最も寄与した行動は何か。より具体的には、ゴールデンパスと呼ばれる「顧客がどのような順序で回遊した際に最もコンバージョンの期待値が高まるのか」ということを、定量的に表すことができます。
森:もう一つの得意領域として挙げられるのが、データのセグメント化です。顧客の属性や行動データから、共通項をもつ顧客同士を自動的にセグメント化し、代表的な特徴を可視化するところまでを網羅します。そうやって抽出されたセグメントに対し、どのような施策を考えるのかが人間の役割ですね。