ヤマハが展開する「House of Worship Project」とは?
MarkeZine 編集部(以下、MZ):今回は、ヤマハのBtoBマーケティングについて、日置さんと吉田さんにお話をお伺いします。まず、お2人の自己紹介からお願いできますか。
日置:私は、ヤマハのマーケティング統括部でデジタルマーケティングのシステム部分を担当しています。
吉田:私は、アジアパシフィックを対象とした楽器・音響機器のセールスを担当する、AP 営業統括部に所属しています。同エリアのお客様の動向、ニーズを把握しながら、顧客価値の最大化とセールスの拡大をミッションに活動しています。
MZ:ヤマハでは「House of Worship Project」において、マーケティングオートメーション(以下、MA)ツールのPardotの運用を行っていると聞いています。まず、House of Worship Projectとは何か、教えてください。
吉田:House of Worship Projectは、全世界の宗教施設(現在は主に教会施設)を対象に、音響周りのお困りごとを、ヤマハのソリューションでご支援するプロジェクトです。世界には、およそ575万施設の教会があると言われています。たとえば、PA 機器やスピーカーの調子が悪いというご相談や、購入した機材の使い方を知りたいといったご要望を受けるので、それに合わせた提案を行っています。
コンタクト先獲得の効率化を求め、デジタルマーケティングに着手
MZ:House of Worship Projectの中で抱えていた課題について教えてください。
吉田:顧客獲得の営業・マーケティング活動における効率性に課題を抱えていました。これまでプロジェクトでは、各国の現地販売子会社にいる営業が教会向けの展示会やワークショップが行われるカンファレンスに出展、そこでのトレーニングなどを実施してコンタクト先を開拓してきました。またメガチャーチと呼ばれる2,000人以上を収容できる教会にも直接訪問し、ヒアリングを行ってきました。
しかし、これらの活動のみではアプローチできない教会も多く、より効率的にお客様とつながれる仕組みを求めていました。その中で、効率的にお客様とつながり、個別にアプローチできるデジタルマーケティングが良いのではと思い、日置のチームに相談したのです。
MZ:現地販売子会社の営業効率を向上させるために、本社が自らBtoBマーケティングの仕組みを作るというわけですね。
日置:はい。メーカーである私たちは、主に販売ディーラーへの卸販売がメインで、店頭POPやカタログなどは作成していましたが直接顧客とコンタクトを取ることはあまりありませんでした。
しかし、デジタルシフトにともない、お客様が販売ディーラーを経由せずオンラインで直接検討・購入するケースが増えてきました。そのため、オンライン上での接点作りを本社で行う必要が出てきたんです。この仕組みを本社で作り各国の販売子会社に横展開したいと考え、デジタルマーケティングに着手しました。
リードを獲得するも、ナーチャリングに悩む
MZ:では、そこからなぜPardotの導入に至ったのでしょうか。
日置:はじめは、Web上からリードを獲得すべくSNS広告で集客しセールスフォース・ドットコムのSales CloudのWeb to Leadでリード顧客を取得することから始めました。取得したリード1件1件に対して対応することで知見を増やしていこうと考えていたのですが、いざ始めてみると1ヵ月で350リードがすぐに獲得できてしまいました。今期目標の70%のリード数です。
その後も想定以上のペースでリードが集まってしまったため、とても各リードに対して個別対応するということができず、「獲得したリードにどう対応するか」という課題に対応することが急務となりました。
吉田:従来の営業スタイルであれば、すぐにアポイントを取ります。しかし、獲得したリードすべてが購入意思の高いお客様とは限りません。リードごとに検討段階を見極め、それに合わせたコンテンツ発信やコミュニケーションを効率良く行わねば、と悩んでいる中でSales Cloudを導入していたこともあり、MAのPardotなら連携もしやすいのではと導入を決めました。
MZ:Pardotを導入したことで、リードナーチャリングは上手くいきましたか。
日置:早速メルマガを作成して、獲得したリードに配信したところ、全体の1.7%に反応がありました。しかし、この反応をどのように定義するのか、どのような指標を追うべきか、実際の案件化するまでにシナリオはどうするのか、などMA活用に関わる具体的なノウハウがまったくない状況だったのです。
その中で、コニカミノルタジャパンのBtoBマーケティングに関する講演を聴いていたところ、MA導入活用などの支援も行っていると知り、Pardotの活用方法やBtoBマーケティングについてサポートいただくことにしました。
定例会ベースでノウハウを享受
MZ:具体的には、どのような支援を受けたのでしょうか。
日置:基本的には我々とコニカミノルタジャパン、そしてネットイヤーグループの3社で、2019年の1月から定例会を行いました。最初の定例会ではターゲットの定義やリードナーチャリングに使うコンテンツ内容などについて詰めました。
吉田:続いて、最初の定例会で出たアイデアをもとに作成したコンテンツを使い、メール配信のテストを2度行い効果検証しました。その結果を踏まえ2回目以降の定例会では、コンテンツの改善やコミュニケーションプランの作成に移っていきました。
MZ:定例会があることで、MA活用のPDCAが回せるようになっていますね。どういったコミュニケーションプランが完成したのでしょうか。
吉田:流入した広告別にリードを音響機材の購入検討層、購入後の活用に困っている層の2つに分け、それぞれに合ったメールを配信するようにしました。具体的には前者には導入事例を紹介し、後者にはお役立ちTips情報やチュートリアル動画を紹介する内容のメールを送っています。
コニカミノルタジャパンとネットイヤーグループには、この他にもスコアリングのルールや追うべきKPIの設計なども一緒に考えていただきました。
またMA運用に関わるノウハウも多数教えていただきました。たとえば「Tips系のコンテンツは、シナリオの冒頭に用意し、確度が高くなってきたら導入事例を配信する」など、すぐ試せる内容が多いのは非常に助かりました。
親身に寄りそった実用的なサポートを評価
MZ:コニカミノルタジャパンのサポートを受けて、どのような気づきが得られましたか。
吉田:顧客視点に立つと当たり前だけど見落としがちなことに改めて気づかされました。営業の視点だと、資料請求されたお客様が目の前にいると、すぐ電話をかけて営業しなくてはと思いがちです。しかし、お客様には様々な検討段階があり、それに応じたコミュニケーションが必要になります。その事前のコミュニケーションの重要性に気づけましたね。
また、お客様へ直接お届けするコンテンツの制作が、想像以上に重要であり、大変であることもわかりました。今後は現地販売子会社からお客様の声を拾って、コンテンツを改善していきたいです。
日置:私は、物事の視点が変化しました。Webサイト一つとっても、集客に使うのか、情報発信に使うのかと、その目的を考えるようになったのです。今は目的に合わせたコンテンツやチャンネルの選択に気をつけています。
MZ:コニカミノルタジャパンの支援はどのように評価していますか。
日置:コニカミノルタジャパンのサポートがPardotにとどまらないBtoBマーケティング全般の支援だったことを高く評価しています。MAベンダーのコンサルティングだと、ツールに偏ったサポートになりがちですが、コニカミノルタジャパンは、Pardotに関わらない部分のアドバイスもしてくれました。
我々のようにノウハウをこれから貯めていこうという企業にとっては、非常にありがたいと思います。
吉田:親身に寄りそって、私たちの課題を整理していただけて非常に良かったと思います。日置同様、MA活用にとどまらない支援をいただけたので、最新のBtoBマーケティングの基礎を理解できたと思います。
さらに営業プロセスを効率化し、継続的な顧客との関係を
MZ:現在、MA活用で新たに取り組んでいることはありますか。
日置:シナリオの検証や改善を中心に、社内業務のプロセスの中へMAの運用を定着させていこうと取り組んでいます。当面は、本社がコンテンツ制作や検証を行って運用モデルを確立し、各国でローカライズしていくことを目指します。
そして、海外の各販売会社がPardotを運用できるようにしたいです。ヤマハの商材は、国が違ってもお客様のセグメントは近しいという傾向があります。広告素材やコンテンツの翻訳は必要ですが、共有して活用できるため、効率化も図れると考えています。
吉田:同時に現地販売子会社スタッフへのデジタルマーケティング研修も他プロジェクトメンバーとともに進めています。6月前半には一部の販売会社を対象にした、3日間の合宿を実施しました。
初日はFacebook広告用のターゲティングの設計や広告メッセージを、現地販売子会社の営業担当者と考え、実際にFacebook広告を制作し配信。2日目の朝には既にリードが数十件獲得できていたので「このリード顧客にどのように対応するのか?」と、リードナーチャリングの必要性を理解するプログラムを行いました。
直接手を動かすことで、デジタルマーケティングを実感として感じられることを目指したのです。販売会社もこのような取り組みを通じて、きっとMAやデジタルマーケティングの必要性を理解してくれると期待しています。
MZ:最後に、今後の展望をお聞かせください。
日置:MAを用いたマーケティングの枠組みはできました。しかし、実際の営業活動との連携、販売会社との関係構築はこれからです。ヤマハからお客様まで、一貫したコミュニケーションが取れるよう、仕組み化を続けていきたいと思います。
吉田:今回、マーケティングから営業までの一連の流れを可視化し、仕組み化へのスタートを切ることができました。そして理想は、お客様と商品ご購入後もずっとコミュニケーションしていくことです。使い方のご提案やメンテナンスのご案内、そしてリピートの促進と、MAを用いて継続的な関係が作れるよう、販売会社と一緒にチャレンジしていきたいと思います。
コニカミノルタジャパンは事業貢献につながるデジタルマーケティング支援を行います!
今回のヤマハ様の事例以外にも、コニカミノルタジャパンではデジタルマーケティングに関する様々な支援を行っています。詳しい情報はこちらをご確認ください。