茨城ロボッツは情報提供型のボットでエンゲージメント向上
たとえば、男子プロバスケットボールチームの茨城ロボッツは、Webサイト上にチームキャラクターを利用したボットを作成。このボットからユーザーが情報を聞き出す形にし、情報量の多いサイトを最大限活用してもらえるように試みた。
すると、サイトの直帰率は14%以上改善。1セッションあたりのPVも1P以上増加し、ポップアップのCTRは平均10%以上の大幅改善に成功した。ファンの心理を捉え、キャラクターを前面に押し出し、よりコンテンツを見たくなる仕組みを作ったことで、サイト内におけるユーザーの体験的価値が向上したいい例だ。
また、クラウド会計ソフトを展開するfreeeも「SYNALIO」を導入している。freeeでは、自分に最適なプランはどれかという問い合わせが多かったこと、営業でも同じ質問を度々受けていたことを踏まえ、質問に答えるだけで自分に最適なサービスプランがわかる「会計freeeプラン診断」のボットをWebサイトに設置。
その結果、課金するユーザーの割合が増え、上位プランを選択するユーザーの割合も大きく増加したという。ボットの内容次第では、意思決定を促すこともできるということだ。
ソサエティ5.0時代にマーケターが意識すべきこと
先に出てきた5つの体験的価値のうち、Conversation Techで引き上げられるのは「情緒的体験価値」と「ライフスタイル的体験価値」だ。
繰り返しになるが、情緒的体験価値はていねいな接客や気配りなどで消費者の感情に働きかけて生まれる体験的価値、ライフスタイル的体験価値は日々のライフスタイルに変化を起こすことで生まれる体験的価値のことをいう。
このような体験価値に働きかける考え方は、AI駆動型の社会とされる“ソサエティ5.0”に出てくる。
仮想空間と現実空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する新たな未来社会“ソサエティ5.0”は、そう遠い将来のものではない。大熊氏によると、普及しつつあるスマートスピーカーはソサエティ5.0時代の製品だという。
渋谷でおいしい居酒屋を探すとき、これまでは「渋谷」「おいしい」「居酒屋」などのワードを検索し、表示された情報から、ユーザーが行きたいお店を選ぶという流れだった。
しかしスマートスピーカーを使用すると、ユーザーの問いに対しAIが一つの提案を行い、ユーザーはYes/Noを決めるだけ、といった手順に変化するのだ。「生活者の情報の受け取り方が大きく変わろうとしている」と大熊氏はいい、次のようにアドバイスをした。
「ソサエティ5.0に向かうにあたり、顧客に提案をできる情報伝達の仕組みを構築できるか。これは、マーケティング担当者がこれから考えるべきポイントになっていきます」(大熊氏)
体験価値時代のマーケティングで求められているのは、ユーザーの背景の理解だ。「そのためにチャットボットは有用である」と大熊氏は強調し、スピーチを終えた。