TikTokユーザーに見られる特性は?
若年層を中心に絶大な支持を集める、UGC型のショートムービープラットフォーム「TikTok」。ユーザー数・ユーザー層ともに順調に拡大を続けており、今では子育て世代などにも親しまれている。また、東京や大阪などの主要都市だけでなく、全国各地でユーザーが増えているという。
ユーザー拡大にともない、TikTokの広告メニューを利用する企業も増えている。TikTokマーケティングへの注目が高まるなか、「TikTok Ads」は、TikTokユーザーの特性について調査を実施。「TikTokユーザー白書(2019.8)」を公開した。
「調査の結果、TikTokユーザーの40%以上が『TikTokを使い初めてから文字や画像より動画を見ることが増えた』と回答しました。このデータは、時代の変化を端的に表していると言えます。4Gから5Gの時代になろうとしている今、ユーザーの消費コンテンツは、テキストや画像から動画へ移行しているのです」(鈴木氏)
白書によると、TikTokの1日の平均視聴時間は42分。在宅時に見ていると回答したユーザーは約55%で、昼休みやちょっとしたスキマ時間に視聴していると回答したユーザーは約28%だった。また、約28%のユーザーが、「TikTokのコンテンツが友人間で話題になる」と回答しており、この結果からもTikTokが消費者の生活に浸透し始めている様子が窺える。
TikTokには情報感度が高く、消費に抵抗のない層が集まる
ユーザー層の拡大とともに、投稿コンテンツにも変化が起きてきている。初期はダンス動画がほとんどだったが、現在は日常の風景や料理のハウツーなど、多様なコンテンツがアップされている。
幅広い層に受け入れられつつTikTokだが、ユーザーにはある共通点が見られるという。それが、「情報感度が高く、チャレンジ精神をもっている」ことだ。TikTokユーザー白書によると、「変化に富んだ人生を送りたい」と回答したユーザーは、非TikTokユーザーに比べて8.3pt多いことがわかった。また「広告でよく見る商品を買うことが多い」と回答したユーザーは6.5pt多く、「生活を楽しむためにお金を使う」と回答したユーザーは5.7pt多かった。
情報感度が高く、新しいことに投資を厭わないユーザーが集まっているという事実は、マーケターとしては非常に興味深いだろう。実際、TikTokのユーザーエンゲージメントは高く、配信される広告の多くが高い成果を得ているという。
なぜTikTok広告は高エンゲージメントを叩き出すのか?
では、なぜTikTok広告は高いエンゲージメントを維持できているのだろうか。理由は大きく2つある。1つ目は「機械学習を活用した広告の配信アルゴリズム」だ。TikTokでは、ユーザーの趣味嗜好を機械学習で分析し、“見れば見るほど自分の好みの動画が流れてくる”という仕組みを構築している。こうしたレコメンドは他のSNSでも見られるが、「TikTokのアルゴリズムは精度が高いので、ユーザーの趣味嗜好に沿ったインタレストターティングが可能になる」と鈴木氏は話す。
「TikTokユーザーは、平均して一日160~180本の動画を見ています。多くのユーザーがこれだけの本数を視聴しているということは、それだけ好みの動画が流れてきているという証拠に他ならないでしょう。またTikTokでは、“投稿者のモチベーションを向上させるための仕組み”も作っています。コンテンツがおもしろければ、オーガニックに広がっていくアルゴリズムが構築されているのです」(鈴木氏)
TikTokでは、動画が投稿された際には限られたオーディエンスグループで配信される。そして、そのグループ内で一定以上のエンゲージメントが出れば、より広いオーディエンスグループにも配信され、そこでもエンゲージメントが出ればより拡散していく。つまり、フォロワー数に依存せず、ユーザーに受け入れられる動画さえ出せれば多くの人にリーチできるのだ。
2つ目は、「音声付きの縦型動画」という配信形式だ。TikTokは音楽に合わせてダンスやアクションを行うコンテンツを軸に広まったため、「音声をONにして視聴する」ユーザーが多く(他SNS比較139.5%)、視聴時には「スマホ全面(縦)」で見るユーザーがほとんどだという(他SNS比126.4%)。さらに、コンテンツは「最後まで見る」というユーザーが多い(他SNS比125.8%)ことも特徴だ。一度に伝えられる情報量が多いため、ユーザーのアクションを引き出せる確率も高くなる。
動画キャンペーンを成功させる3つのポイント
ユーザーの消費コンテンツが動画へと移行していることから、今後、企業による動画活用はますます活発化していくだろう。では、動画によるプロモーションで成果を出すためには、どのような点を意識すればよいのだろうか。鈴木氏はTikTokのユーザー動向を踏まえ、これからの動画キャンペーンにおいて重視するべき3つのポイントを紹介した。
「前提として、情報もモノも飽和している今の時代、多くの消費者は基本的に満たされています。そんななか、ユーザーとのコミュニケーションのフックになるポイントは、どのようなものでしょうか。私は、3つのポイントの頭文字を取り、『WTF』という考え方を提唱しています。『What the fXXk(なんてこった)!』と覚えてください」(鈴木氏)
W=Wish
ユーザーとのコミュニケーションフックとなるポイントの1つ目として鈴木氏が挙げたのは「Wish」。つまり、「より良い社会にしていきたい」というような、高次元な願いを掲げることだ。実際、TikTok上でも「社会貢献」「社会課題の解決」をキーワードにしたキャンペーンが好評だという。
T=TRY
2つ目のポイントは「TRY」、つまり挑戦を消費者に提供することだ。たとえば、TikTokの人気ハッシュタグのひとつに、「ペットボトルキャップチャレンジ」というものがある。これはボトルのキャップをまわし蹴りでゆるめて落とすというもので、国内のみならず海外でも多くのユーザーが挑戦している。では、なぜこのようなコンテンツが人気を集めるのか。鈴木氏は、「あらゆるものに充たされ安定した現代において、気軽な達成感は嗜好品のような存在なっている」と考えを述べる。
「達成感を得られることは、ある種、嗜好性の高い経験です。日常ではなかなか味わえない、達成感を得る体験を求めている方が増えているようです。とはいえ、何時間もかかるような難しい挑戦を求めているわけではありません。30分~1時間くらいで達成感を味わえるような、カジュアルな体験設計が重要です」(鈴木氏)
程よい難易度のダンスやアクションに挑戦する「ハッシュタグチャレンジ」は、TikTokのメインストリームとなりつつある。
F=FUN
3つ目のポイントは「FUN」だ。これは、いわゆる一般的な「楽しさ」とは異なると鈴木氏。大人の価値観で見ると一見意味のなさそうな、“気まぐれ、思いつき、ナンセンスだけどおもしろい”コンテンツが反応を得られやすいのだという。また、「“見たくなる”だけでなく、“真似したくなる”コンテンツであることがポイント」と鈴木氏は話す。
「モノが溢れ、情報も多方面から流れてくる今、多くの消費者の基本的な欲求は満たされています。能動的に商品を求める機会がほとんどないため、WANTSやNEEDSなど、従来の購買行動のフレームワークが通用しなくなりつつあるのです」(鈴木氏)
従来の常識に囚われず消費者と向き合い、彼らの感情の機微をどれだけ読み取れるかが、新時代の成功を分ける1番ポイントかもしれない。