“紙作業”をなくして作業の効率化を実現
人材採用や人材育成、勤怠管理、人事評価、タレントマネジメントなどの人事関連業務を、最先端技術を活用して最適化するHRテクノロジー。日本では2017年頃から注目されている。
2013年創業のSmartHRは、2019年9月時点で2万7,000社以上が利用し、毎月1,000社の新規導入顧客を獲得する、急成長のHRテクノロジー企業だ。同社が提供するクラウド人事労務ソフト「SmartHR」は、雇用契約や入退社手続き、年末調整などの人事労務業務のペーパーレス化・電子化を支援する。高橋氏は「『SmartHR』は、人事・労務分野であらゆる“紙作業”をなくし、手続きを簡単にすることを目指したもの」と説明する。そして、そんな「SmartHR」はサービス利用継続率99.5%という驚異の数字を誇る。
「SaaSの場合、一般的に“チャーンレート(解約率)2%以下を目指すといい”と言われています。このことからも、この数字は驚かれることが多いです。チャーンレートを抑えられない場合、新規獲得に頼らざるを得なくなりますが、我々は月次のチャーンレートを抑えるとともに、アップセルによる既存収益の増加も続けています」(高橋氏)
では、SmartHRはどのようにして、継続率99.5%という驚異の数字を挙げているのか。この数字を支えているのが、高橋氏がマネージャーを務めるカスタマーサクセスチームだ。高橋氏は、チームの立ち上げから現在に至るまでに取り組んできたことを、「サポート中心時代」「設定代行時代」「理想を追い求める時代」「オンボーディング黎明期」「アップセルチャレンジ時代」「セルフオンボーディング時代」という6つのタイムラインにわけて紹介した。それぞれを詳しく見ていこう。
初期は顧客獲得に奔走
「サポート中心時代」は、同社が創業間もないころに行った施策である。日本では「カスタマーサクセス」という言葉がまだ浸透していない時期であったため、カスタマーサクセスに関する情報を収集しながら、「目の前にある課題」を解決することに注力したという。高橋氏は「当時はまだ顧客数も少なかったため、問い合わせへの回答スピードを重要指標にし、顧客体験向上を意識していました」と説明する。
当時はサービスが日々アップデートされる状況だった。同社ではその環境を活かし、“調べるよりもSmartHRに問い合わせたほうが疑問を即座に解決できる”という状況を作り出した。手厚いサポート対応により顧客と密接な関係を構築。さらに、解約が発生してしまった場合には毎回丁寧にヒアリングを実施し、素早くフィードバックするように心がけていたという。
続く「設定代行時代」は導入サポートが増えた時期だ。新規顧客が増加するにともない、「サービスを使い始める初期のハードルが高い」と顧客が感じていることが判明した。そのため設定代行サービスを提供し、導入時の不安を解消する施策を打ったという。