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BtoBマーケは何を伝えたいかよりも「誰に」伝えたいか/KDDIが全力を注いだABM、その実現への道

IPアドレスの特定はどのように行うか

 BtoB企業がABMを行う際に障壁となるのが、アプローチしたいターゲット企業に属するユーザーをどのように特定するか、すなわち個々人のIPアドレスや所属企業をどう特定するのかという問題だ。複雑なデータベースの構築や属性などの判定が難しいことから、断念してしまう企業も少なくない。そこで森本氏は、BtoBビジネスにおけるIPアドレスの特定方法について、自社の取り組みを紹介した。

 KDDIでは、ユーザーが個々人のパソコンからWebサイトにアクセスした時に、所属企業を特定するために2種類のASPサービスを使用している。1つ目のサービスは「企業名とIPアドレス、双方のリスト」を有しており、その両者を紐付けてIPアドレスを特定するもの(リスト型)。

 2つ目のサービスはデータベースの中にサードパーティのDMPを保持しており、それを基に過去に企業名が特定できたIPアドレスから企業を推測するもの(推測型)。

 2つのASPサービスを併用することによって、企業名とIPアドレスを紐付ける精度は格段に高まったそうだが、実はここまで精密にシステムを構築したとしても、特定できた企業名が正しいとは言い切れないのだという。仮に特定できた企業が情報システム管理会社だった場合、グループ企業の通信ネットワークを一手に管理している可能性があるからだ。

 「IPアドレスから企業名が判定できたからといって、ぬか喜びしないほうが賢明です。もし企業が判明したIPアドレスのデータを利用する際は、『その企業のグループに属する会社なのだな』くらいの認識で捉えたほうが良いと思います」(森本氏)

プライベートDMPの構築で、的を絞った施策が可能に

 こうして特定できたIPアドレスは、KDDIが自社で保有するプライベートDMPに蓄積している。このプライベートDMPでは、企業名・グループ情報、いつどんなタイミングで情報収集しているのか、日常的に見ているコンテンツなどのデータを一元管理しているそれらを、自社のMAデータやCookieデータ、SFA・CRMデータ、デジタル広告などのデータと統合して分析し、ECPAの数値を導き出す

 その後、このECPAの数値を基にリスティング広告やディスプレイ広告を展開し、ターゲット企業だけに絞ってABテストを行うなど、逆算して様々な広告やマーケティング施策に落とし込んでいるそうだ。

 「これだけ様々なデータを組み合わせてプライベートDMPを構築し、運用するのはかなり大変です。しかし、その大変さを乗り越えてABMを行ったからこそ、ターゲット企業だけに特化したコミュニケーションができるようになりました」(森本氏)

すべて対策できているか!?アドベリの4分類

 アプローチすべきターゲットを特定し、セグメンテーションできたら、ようやくどんな広告施策を行うのが有効か考える段階に入る。この時、どのような広告を出稿するのかはもちろん重要だが、自社の広告価値を毀損しないようにすること、つまりアドベリフィケーション対策も、避けて通れない

 最近では「アドベリ」とひとからげにまとめられてしまいがちだが、森本氏は、対象となる事象は大きく4つに分けられると考えている。

1. アドフラウド:人ではなく機械によって、不正なインプレッションやクリックが発生していないか。
2. ブランドリスク(ブランドセーフティー):不適切なページやコンテンツに広告が表示されていないか。
3. ビューアビリティ:広告が可視領域にしっかり表示・露出されているか。
4. アドエクスペリエンス:ユーザービリティを妨げるような形で広告が表示・露出されていないか。

 「中でも“アドエクスペリエンス”については、まだまだ対策できていないところが多いのが実情です。メディア側も、広告主側も、売り上げを達成したいがために、ユーザーの目線や動線に入りやすいところにたくさんの広告を置いてしまいがち。しかし、アドベリフィケーションの代償は、想像以上に大きいということを広告主は自覚すべきです」(森本氏)

 Integral Ad Science(以下、IAS)の調査によると、多くの消費者が、低品質なサイトに表示されている商品やブランドは好感度が下がると感じており、その責任は広告主にあると答えている。そして特筆すべきは7割近くの消費者が、低品質なサイトに表示されている商品やブランドの使用をやめると回答していることだ。

IAS『The Ripple Effect : 波紋効果~コンテンツの品質が消費者の広告認知に与える影響に関する調査レポート』より
IAS『The Ripple Effect : 波紋効果~コンテンツの品質が消費者の広告認知に与える影響に関する調査レポート』より

 「『デジタル広告の出稿は広告会社にお願いしているから大丈夫』と考えるのは思慮が浅いと言わざるを得ません。自社の広告がどのようなサイトに掲出されているのかについてデータを把握しておかなければ、広告主自身が痛い目を見ることになってしまいます」(森本氏)

 一方、IASによる脳神経学を活用した調査では、モバイルサイトを閲覧している時の脳の活動を計測したところ、高品質なサイトに表示されている広告は、消費者と高いエンゲージメントを形成できるという結果が明らかになった。広告主は広告レポートとアドベリフィケーションツールを利用し、どのようなサイトに自社の広告が掲出されているかを丁寧に検証することが必須だろう。

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ラストタッチ評価からの脱却が、大幅なコスト削減に

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この記事の著者

石川 香苗子(イシカワ カナコ)

ライター。リクルートHRマーケティングで営業を経験したのちライターへ。IT、マーケティング、テレビなどが得意領域。詳細はこちらから(これまでの仕事をまとめてあります)。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2020/01/10 08:00 https://markezine.jp/article/detail/32522

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