サービスのアプリ化にいち早く着手
西井:上場おめでとうございます。本日は上場に至るまでの道のりや、急成長の裏側についてもお話いただければと思います。早速ですが、freeeさんのサービスについて教えていただけますか。
川西:ありがとうございます。私たちは、個人事業主と中小企業のお客様をメインターゲットに、会計と人事労務にまつわるクラウドソフトウェアを提供しています。主軸のプロダクトは個人事業主の確定申告に対応したクラウド会計ソフトfreee(以下、会計フリー)で、2013年にリリースしました。
特徴はサービスのアプリ化にいち早く取り組んだこと。確定申告の書類をアプリで作成できるのは、現在でも会計フリーだけで、100万を超える事業所に導入いただいています。他にも6つのプロダクトを展開しています。
西井:なるほど。料金体系はどのようになっていますか。
川西:会計フリーは個人事業主と法人向けに分かれていて、機能に合わせた3つのプランを月額ないし年額のサブスクリプションで提供しています。
また、従業員21名以上の法人企業様に向けた、エンタープライズ版のクラウドERP フリーも用意しています。300名から500名規模の企業にも導入いただいており、IPO準備のサポートにも対応しています。
西井:すると今回の上場にも、クラウドERP フリーを活用されているのですか。
川西:そうなのです。企業の上場においてどのように活用いただけるのか、私たちの実例をもって公開できると楽しみにしています。
顧客に寄り添う組織体制が成長のエンジンに
西井:先ほど、freeeさんの始まりは「クラウドソフトウェアで個人事業主の確定申告に対応したこと」とうかがいました。そこから、どのように事業を拡大されてきたのでしょう。
川西:SaaSの基本に則り、小さくスタートして大きく育てる戦略をとりました。まずは、個人事業主やスモールビジネスを対象とした機能を整え、その後、内部統制や予実管理などの法人向け機能を少しずつ拡充していったのです。
西井:ターゲット顧客の変化とともに、マーケティングの体制も変わっていきますよね。現在は、どのような組織になっているのでしょうか。
川西:お客様の事業フェーズに合わせた事業部制をとっています。たとえば、個人事業主、起業から初年度を迎える企業、そして2年目以降で従業員50名以下の企業。さらに、従業員50名以上、もしくはIPOを準備している企業と、それぞれのお客様を専門に担当する事業部に分かれているんです。
これらの事業部ごとにリードを獲得するマーケティング担当者がおり、さらにブランドマーケティングなどの全社に関わる横断的なマーケティングチームがあります。
西井:マーケティングチームが、縦と横で連携しているんですね。顧客の事業フェーズごとに組織を作っているのが興味深いですが、その理由を教えてもらえますか。
川西:お客様ごとに、業務や課題が異なるためです。たとえば、個人事業主のお客様が「経理をどうしよう」と考えるのは、多くの場合、年1回の確定申告の時。そのタイミングが会計フリーを導入いただくチャンスですので、マーケティングにも力を入れなければなりません。
また開業前のお客様が悩むのは、開業届の作成。最適なタイミングで、電子申告も可能な「開業フリー」を提案し、あわせて会計フリーもご利用いただくという流れを作っています。