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「現場マーケターを応援するブランドでありたい」だからSATORIは、考え尽くされたシンプルを追求

 現在650社以上に導入されている、国産MAツールの「SATORI」。同社は、現場のマーケティング担当者に寄り添った開発・サポートを加速するべく、マーケティングやエンジニアリングの組織拡大を進めている。2019年10月には、渋谷区の公共施設「渋谷区総合文化センター 大和田」へオフィスを移し、ロゴ、CIおよびスローガンの刷新も行った。本記事では代表取締役の植山浩介氏に、プロダクトに込めた想いと日本におけるMAツール活用の現在地、そして同社の成長戦略をうかがった。

「多様」を受け入れ、それでいて「シンプル」に

――SATORIさんは2019年10月に、オフィス移転とCI・ロゴの刷新を発表されました。

植山:創業から4周年を迎え、おかげさまで導入者数も社員数も急速に伸びています。ユーザーの皆さまや社員と共に無我夢中で走ってきて、事業のフェーズは今ようやく拡大期へと移り変わろうとしています。このタイミングで、今までの思いや、目指すべき方向を改めて整理しました。

SATORI株式会社 代表取締役 植山浩介氏
SATORI株式会社 代表取締役 植山浩介氏

――オフィスの移転先「渋谷区文化総合センター 大和田」は、渋谷区の公共施設なのですね。

植山:はい。渋谷区は「ちがいを ちからに 変える街。」というビジョンを掲げています。「違いを力に変える」とは、個々人の違いを認めるだけでなく、付加価値にしていくということ。「マーケターは一人ひとり力強い思いを持っている。それぞれの個性を受け取り、価値に変えていきたい」という、当社のマーケティングの考え方に通ずるものがあります。

 私たちが入居した「渋谷区文化総合センター 大和田」は、保育園や図書館もあれば歯医者もあり、プラネタリウムや多目的ホールもあります。朝は子どもたちの声が聞こえ、イベントがあれば老若男女が集まってきます。街の理念に共感する渋谷区の、しかもこれほど多様な人々が集まる場所にオフィスを構えることができたのは、意義のあることだと考えています。

――なるほど。新しいロゴには、どのような想いが込められているのでしょうか。

植山:多様性、つまり異文化を受け入れていくという姿勢を、デザインに落とし込みました

新しいロゴとスローガン
新しいロゴとスローガン

 “SATORI”という社名は仏教の「悟り」から来ています。そこに西洋のアルファベットで社名を入れ、中国の漢文化から生まれた書道の掛け軸をイメージさせる縦書きを採用し、最後に日本文化を象徴する「和」で囲いました。大切にしたのは、次の2つです。

1. 「多様」を受け入れ、成長できること
2. それでいて「シンプル」であること

 シンプルであるということは、「低価格である」とか「機能性が低い」ということではありません。考え尽くされているからこそ機能性が高く、シンプルでいられる。プロダクトに関しては、ユーザーの声を反映して機能追加やリニューアルを行い、洗練された使いやすさを追求しています。

 シンプルであればあるほど、多様な考え方や多様なあり方を受け入れることができますし、ユーザーや社員たちの多様性を受け入れ、それを付加価値として成長していくこともできる。このような姿勢を表現したいと考えました。

「SATORIらしさは無限に存在する」という考えに基づき、ビジュアルを作成した。上図は代表的な18種類。
「SATORIらしさは無限に存在する」という考えに基づき、ビジュアルを作成した。
上図は代表的な18種類。

“たったひとり”のMAツール担当者に向き合い、支えていく

――新しいスローガンについても教えてください。

植山:私たちはマーケターを応援するブランドでありたいと考えています。これまで「あなたのマーケティング活動を一歩先へ」を掲げ、ひとりで業務やミッションを抱えがちな、マーケティング担当者に成果を出してもらおうと考えてきました。新スローガン「マーケターひとりひとりに、革新と確信を。」には、革新的技術と実践ノウハウをもって、そうした方々を一層強力に支援していきたいという想いを込めています。

植山:本来、サービスとしては「企業のマーケティング活動を成功させます」とか「売上アップや事業成長に貢献します」と宣言するほうが、決裁者の皆さんに響くのかも知れません。

 しかしマーケティング活動は、ひとりのマーケターの頑張りが、成果に直結することも多いもの。「なぜうちの商品はこんなにすごいのに売れないんだろう」と、ひとりで悩んでいる方に、「こうすると良いんだ」という確信をもたらし、その結果会社や顧客、ひいては社会を革新していくお手伝いができればと考えています。

お客様が見えないことこそ、マーケティングの真髄

――創業から4年が経ち、マーケター・経営層のMAツールに対する理解も進んでいるのではないかと思います。これまでの変遷を、どのように捉えていらっしゃいますか。

植山:そもそも日本には、マーケティングよりも営業のカルチャーが強く根付いています。「マーケティングオートメーション」という概念が理解され始めたのも、ちょうど当社が創業した4年ほど前のこと。MAツールについても、現在もセールスの文脈の中で語られることが多いと感じています

 MAツールにはこれからもっと大きな可能性があると捉えています。セールスドリブンな日本のカルチャーは尊重しながらも、市場全体をマーケティングドリブンな環境に変えていきたいと考えています。

――SATORIさんは匿名顧客とのコミュニケーションの重要性を様々な場面で発信されていますが、BtoBマーケティングに限らず、幅広い業種・業態で「見込み顧客とどのようにコミュニケーションを取るべきか」という話題への関心が高まっていると感じます。

植山:このような話題が出てくるのは、マーケティング活動においてお客様一人ひとりのことも、お客様が集まった「マーケット」という集合体についても、なかなか理解しづらいからだと思います。

 しかしこの「お客様が見えない」ということこそ、マーケティングの真髄です。私たちが匿名のお客様とのコミュニケーションに力を入れているのも、ここに理由があります。その方々が何を考えているのかを理解する。そのために試行錯誤し、考え抜いて施策を実行することで、企業側のメッセージを届けることができるのです。

目指すのは「本音のリクエスト」をもらえる関係性

――お客様が見えないところにマーケティングの本質がある、という考え方は、とても興味深いです。既存ユーザーへのサポートについては、どのように考えていらっしゃいますか。

植山:ファンになってもらい、正直な声を聞かせていただくことが大切だと考えています。私たちも「ユーザーあってのSATORI」であるということを常に意識し、ユーザーサポートやカスタマーサクセスに力を入れてきました。

 2017年に初めてのユーザー会を行って以来、少しずつSATORIのファンが増えてきて、11月28日に開催した8回目のユーザー会には、150名の方々にご来場いただきました。「改善してほしい点を直接伝えに来た」「うるさいと思うかも知れないけれど、私たちは言うよ」と本音でリクエストしてくれる方が増えてきました。

――ユーザーコミュニティが成熟しつつあるのですね。

植山:はい。ユーザー会では、エバンジェリストであるユーザーに自社の事例を語っていただいたり、識者をお呼びして、文化心理学の観点からユーザーエクスペリエンスと使用感の相関関係についてお話しいただいたりと、私たちが意見を聞かせていただくだけでなく、ユーザーにとっても学びのある会にすることを心掛けています

 その他にも、カスタマーサクセスチームでは、3ヵ月間ユーザーを手取り足取りサポートする「伴走プラン」の提供や「MAツールでできる20のコト」という情報の配布、オンラインサポートや利活用セミナーなど、「使い続けてもらうためのサポートコンテンツ」を多く用意しています。

 重視しているのは、「担当するマーケターの想いを成果につなげる」こと。そうした方々を、全力でバックアップしていきたいと考えています。

ユーザーに一層寄り添う組織体制に

――オフィス移転やロゴ・スローガンの刷新を経て、これから優先して取り組まれていく課題についてお聞かせください。

植山:ひとつは組織を拡大・整備すること。お客様の声をスピーディーに反映していく組織であり続けられるよう、2年以内に200名規模にしたいと考えています

 今、当社は拡大期の入り口に立っています。スタートアップならではの空気感や、ビジネスのコアな部分に携われるのは今がチャンス。マーケティング、エンジニアリング、カスタマーサクセスも、今だからこそできる業務で満ちています

 社内は女性が4割を占め、マーケティングチームは5名のうち4名が女性です。マーケティング営業部 グループ長の豊川は、「考える力や企画力を鍛え、戦略を基に成果を残す経験を積みたい」と30歳を目前に転職し、私と二人三脚でマーケティングチームを立ち上げました。転職者のロールモデルとして、「こんな風になりたい」と現場の社員からも信頼が厚いです。

新オフィスには、立ち上げ期からのマーケティングの実践を紹介している「革新の道」がある
新オフィスには、立ち上げ期からのマーケティングの実践を紹介している「革新の道」がある

植山:プロダクト改善にも、一層力を入れていきます。これまでに社内外から1,000件以上のご要望が集まっており、成果に直結するリクエストから優先的に解決してきました。

 私たちは自社でも「SATORI」を利用していますが、プロダクトの改善点を自社ですべて気づくには、限界があります。ユーザーの皆様からは、これまで以上に厳しい意見を率直にぶつけていただきたいですし、それによってプロダクトに磨きをかけていきたいと考えています。

 日本のユーザーの声をスピーディーにくみ取り、プロダクトに反映できるのは国産ツールならではの強みです。日本の企業だからこそ生まれる開発リクエストを受け入れ、対応していく臨機応変さをもち続け、ひとりでも多くのマーケティング担当者に「革新と確信を」を届けていきたいです。

――本日はありがとうございました。

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この記事の著者

石川 香苗子(イシカワ カナコ)

ライター。リクルートHRマーケティングで営業を経験したのちライターへ。IT、マーケティング、テレビなどが得意領域。詳細はこちらから(これまでの仕事をまとめてあります)。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2020/02/12 12:49 https://markezine.jp/article/detail/32575