リアル店舗の収益改善とコスト削減を同時に解決
モバイルオーダーのサービスを導入することにより、具体的にリアル店舗はどう変化するのだろうか? 既にモバイルオーダーサービスが普及している米国では、「収益性向上」と「コスト改善」の2軸で、実際に大きな効果が出ているという。
たとえば米国のある飲食店では、実店舗との注文単価と比べて、モバイルオーダーの客単価が約1.2倍になった例もある。またRakuten Readyの調査によると、待ち時間が2分以内の場合、約7割の顧客がリピーターになるという。待ち時間の短さと再購入率には、明らかな相関関係があるのだ。
日本では、軽減税率の導入にともないテイクアウト市場が拡大し、またキャッシュレスへの対応、深刻化する人手不足など、実店舗を運営する企業は様々な課題に直面している。それらの課題を解決する手段として、モバイルオーダーの導入を検討している小売店や飲食店も多いことだろう。
「モバイルオーダーの導入により、店舗のオペレーションの効率化だけでなく、売上の純増を期待できます。テイクアウト需要を取り込むことで、今まではイートインだけだった売上を拡大できます。そして新規顧客の獲得だけでなく、スムーズな受け取りが可能になり、顧客満足度をあげることでロイヤルユーザーに対する効果が期待できるのです」(梅本氏)
実際に店舗にシステムを導入するとなると、変化への対応を迫られるのは、現場の店舗スタッフだ。顧客に向き合う小売店や飲食店の現場では、どんな反応が起きているのだろうか。
「まさにその課題は想定していました。店舗の現場スタッフの方たちは、単に新しいシステムを利用するだけでなく、新たなオペレーションの構築を求められます。モバイルオーダーの導入により、たとえば顧客の導線やキッチンスタッフのオペレーションも変わります。システムを提供して終わりではなく、一緒に検証しながら新しい店舗のオペレーションを構築していくことが、我々の重要な役割だと考えています」(梅本氏)
「モバイルオーダー文化」を日本に根付かせたい
米国で市場が拡大しているとはいっても、日本の消費者はモバイルオーダーの文化を受け入れられるのだろうか?
「私たちはただソリューションを提供するだけでなく、モバイルオーダーの文化を日本の店舗や消費者に根付かせていきたいと考えています。そのために、約1億の楽天会員基盤をベースに、楽天スーパーポイントを活用したキャンペーンを実施するなど、新たなモバイルオーダーの利用者を増やすためのデジタルマーケティングを仕掛けていきます。2020年は、楽天の持つ様々なアセットを最大限に活用して、モバイルオーダーという文化を、日本の消費者に浸透させていく契機を作っていきます」(梅本氏)
実際、「Rakuten Ready」はどのように小売店や飲食店で導入されているのだろうか? 梅本氏によると、楽天グループのJクラブ「ヴィッセル神戸」のホームスタジアムである兵庫県のノエビアスタジアム神戸において、12月21日に開催した天皇杯JFA第99回全日本サッカー選手権大会の準決勝で、検証プロジェクトを実施したという。
「1日限定で、スタジアム内のフードショップで検証プロジェクトを実施しました。スタジアム内のフードショップでの行列は、誰もが経験したことがあるかと思います。これを、観戦中にご自身のスマホで事前にオーダーして、できあがりの連絡を受けて商品をピックアップしてもらうことで、無駄な待ち時間を解消することができます」(梅本氏)
また、「天丼てんや」を展開するテン コーポレーションが運営する浅草の「とんかつおりべ浅草店」でも、12月20日より導入。そして同日より、都内にも多数店舗を有する、ユーシーシーフードサービスシステムズが運営する「上島珈琲店」でも、既に4店舗で先行導入が始まっている。
ここで、モバイルオーダーの取り組みで、実際にどんな目的や課題があったのかを、ユーシーシーフードサービスシステムズ 営業本部 上島珈琲店営業部 部長 橋本吉紀氏に聞いた。