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MarkeZine Day 2025 Retail

ファンを軸としたマーケティングの設計図~熱量を生み、育て、広げるには

“その場限り”のイベント・コミュニティではもったいない!ファンの熱量を活かし顧客基盤を成長させるには

“ファンから顧客へ”の影響力に着目する

 ファンと触れ合う「場」の設計次第で、企業がファンをどれだけ有益な資産にできるかが変わってくる。筆者がお勧めするのは、次の2つのステップで自社の活動を形作っていくことだ。

 最初のステップでは、ファン(Fan)の熱量をどのように一般の顧客(Consumer)に伝えていくか、つまり<F to C>の影響力を考える。企業(Business)がファンに対してどのようなコミュニケーションをするかという、<B to F>の観点のみに着目してしまうと、前述のように、過度なおもてなしによるコミュニティの疲弊に陥る場合が多い。

  もちろんファンからのエンゲージメントをしっかり獲得していくことも重要だが、マーケティング活動全体の中でコミュニティを活かしていくためには、「ファンから一般顧客や新規顧客にどのような影響を与えることができるのか」という視点から逆算して、コミュニケーションを設計していく必要がある。

 <F to C>を生む方法は2つある。1つ目は、ファンによる直接的な口コミだ。ファンは一般顧客が一瞬で意識変容を起こすような質の高い口コミを投稿してくれる存在であり、その口コミは大きな影響力をもつ。これはインフルエンサー市場の拡大を見ても明らかだろう。

 しかし、<F to C>のコミュニケーションを直接的な口コミだけに頼ってしまうと、口コミを発信してしまう人を増やすか、一人あたりの口コミ数を増やすという「規模拡大」の発想になり、やはり無理が生じてしまう。

 そこで2つ目の方法が、ファンの口コミを間接的に活用する、つまり「ファンの熱量をコンテンツ化して、一般顧客にその熱量を届ける」という発想だ。たとえば、ファンの熱量が表現されたインタビュー記事をオウンドメディアなどに掲載すれば、その商品購入を検討している人が検索した時に伝えることができる。また、ファンが集うミートアップをムービーとして展開することで、ファンが楽しんでいる様子を、リアリティをもって届けることができる。

 ファンがブランドに対して向けている熱量をコンテンツに変換し、間接的に伝えていくことで、一般顧客の「なんだか楽しそう」「私もやってみたい」という気持ちを引き出す。こうしたコンテンツを通じて新規顧客を呼び込むことができれば、マーケティング活動に大きな広がりが生まれるだろう。

 SNSマーケティングにおいても、UGCを生み出すことが重要視され、各社が口コミを増やすための活動に取り組んでいる。そのこと自体は間違っていない。しかし本来大切にすべきなのは、「口コミを見た人たちをどれだけ意識変容させることができるのか」ということだ。ファンによる直接的な口コミやファンの熱量を可視化したコンテンツは、意識変容を期待できる「資産」となり、マーケティング活動全体にポジティブな影響を与えていくだろう。

ファンの影響力を最大限活かすには

 次のステップでは、<B to F>の接点をどのように生み出すか、つまり、どのようなファンと接点をもち、場を作っていくかを検討する。

 そこで重要なのは、どんな人をコミュニティに巻き込むと、<F to C>の影響力を最大限活かすことができるかという視点だ。それは<F to C>で熱量をしっかりと伝えられるファン、ないしは熱量が伝わるようなコンテンツを生み出せるファンである。単純にフォロワー数の多いインフルエンサーをアサインすれば良いということではなく、ブランドに対し熱量の高いファンであり、かつ一般顧客の意識や行動変容に影響を与えることのできるファンに参加してもらうのが理想的だ。

 ただしそうしたファンを商品の購入額だけで識別することはできない。ファンの熱量と購入量の関係を考えたとき、「買ってくれているから好き」とは必ずしも言えないからだ。

 このように、マーケティング活動における「ファン」の解像度を高めた上で、そうした人々が参加したくなる「場」を用意することで、持続的なコミュニティ運営が可能になる。

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ファンを軸としたマーケ施策は、ファネル全体に貢献する

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この記事の著者

高橋 遼(タカハシ リョウ)

1983年生まれ。2010年株式会社トライバルメディアハウス入社。クリエイティブディレクター。ファンを軸としたマーケティング戦略・実行に従事し、これまでに航空会社、ファッションブランド、スポーツブランド、化粧品ブランド、飲料メーカーなどを担当。著書に『熱狂顧客戦略』(翔泳社)。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2020/01/24 07:00 https://markezine.jp/article/detail/32689

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