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第106号(2024年10月号)
特集「令和時代のシニアマーケティング」

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ファンを軸としたマーケティングの設計図~熱量を生み、育て、広げるには

“その場限り”のイベント・コミュニティではもったいない!ファンの熱量を活かし顧客基盤を成長させるには

 顧客基盤を成長させる手段として、自社のファンとのコミュニケーションに活路を見出そうとしている企業は多いはずだ。本連載ではトライバルメディアハウスの高橋遼氏が、ファンと触れ合う「場」を設計し、マーケティング成果につなげていく方法を解説する。第1回は、規模拡大や売上への貢献を追い求めたコミュニティが“その場限り”の取り組みになってしまう背景を説明した上で、熱量の高いファンの力を借りながら、顧客を呼び込んでいく2つのステップを紹介していく。

コミュニティは、囲い込みから「共創」の場へ

 筆者は顧客の「熱量」や「熱狂」をキーワードに、企業のマーケティング・コミュニケーション戦略に携わっており、2018年2月に『熱狂顧客戦略(MarkeZine BOOKS)』を上梓した。当時はコミュニティやイベントを通じて「ファンを囲い込みたい」という相談を受けることが多かったが、最近はブランドの価値を共創していくパートナーとしてファンを捉え、一人ひとりの存在を大切にしていこうという考え方が浸透し始めている。

 その一方、ファンを軸とした施策に取り組むマーケターから「成果を定量的に計測できない」「良さそうに見えるが、はっきりした結果に結びつかない」といった、実践における悩みを聞くことも増えてきた。そこで「ファンを軸としたマーケティングの設計図」と題した本連載では、企業が熱量の高いファンと会い、マーケティング活動を加速させる方法を、ファンと触れ合う「場」という観点から考察していきたい。

“過度なおもてなし”で、コミュニティが疲弊する

 ファンと接する機会を作る取り組みは多くの企業で始まっているが、目的や得られる成果が整理されないままに、ファンを対象としたコミュニティやミートアップを始めてしまったり、ファンと触れ合うことそのものを、マーケティング施策のアウトプットの1つと捉えてしまったりするケースも存在する。

 ファンとつながり、会話をすることが貴重な機会であるのは間違いないが、「ファンとの接点作り」だけを目的としてしまっては、マーケティング活動上の効果は限定的なものとなり、その場限りの活動に終わってしまうことも多い。

 ファンとの接点作りを目的に据えたとき、コミュニティやミートアップに呼び込むべき人としてすぐに思い浮かぶのは、一般の顧客よりも商品を多く買ってくれる「上位顧客」だろう。しかし上位顧客という視点だけで接点を作ろうとすると、上位顧客に満足してもらうことを目的とした、“過度なおもてなし”を行うことになり、継続的な運営が難しくなる

 また売上への貢献を考えた場合、上位顧客にさらに多くの商品を購入してもらう、ないしは上位顧客となる顧客をより多くコミュニティへ囲い込むことが必要になる。顧客全体の数が少ない段階では、コミュニティそのものが販売のチャネルとして機能することもあるが、コミュニティに関与する顧客が増えるにつれて、「買ってもらうためのコミュニティ」の側面が強くなり、ファンにとって参加する価値が失われてしまう

 そもそもファンにとってコミュニティの価値とは、企業から特別な情報を得られることや、普段接する機会が少ないファン同士、ファンと社員が交流できることにあるはずだ。しかし企業がコミュニティの規模や参加する顧客の売上拡大だけに目を向けていると、企業にとってのコミュニティの価値とファンにとってのコミュニティの価値に差が生まれてしまう。すると歯車が噛み合わず、マーケティング成果も見えにくくなり、コミュニティそのものが閉鎖に追い込まれる要因にもつながる。

 では、コミュニティやミートアップを「上位顧客の囲い込みの場」「過度なおもてなしの場」にすることなく、マーケテイング上の成果を得るためには、どうすれば良いのだろうか。ここからは、目的や得られる成果を整理するための2つのステップを解説していく。

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この記事の著者

高橋 遼(タカハシ リョウ)

1983年生まれ。2010年株式会社トライバルメディアハウス入社。クリエイティブディレクター。ファンを軸としたマーケティング戦略・実行に従事し、これまでに航空会社、ファッションブランド、スポーツブランド、化粧品ブランド、飲料メーカーなどを担当。著書に『熱狂顧客戦略』(翔泳社)。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2020/01/24 07:00 https://markezine.jp/article/detail/32689

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