マス、デジタル、ダイレクトそれぞれに必要なポイント
日本の広告クリエイティブを科学するをコンセプトに開催された「Ad Creative Night」では、最初に3名の登壇者によるライトニングトークが行われた。
最初に登壇したのは、キリンビールの高柳裕行氏。現在は「グランドキリン」をはじめとしたクラフトビールのダイレクト事業およびプロモーションを担当する同氏は、マス、デジタル、ダイレクトに広告を分類してそれぞれのポイントや共通点を解説した。
1つ目のマスの場合は、「伝わることが重要」だという。そのために、色々な要素のメッセージを込めるのではなく、1つのメッセージをどこまでも突き詰めて伝えていくことが大切になる。これはテレビCMなどのマスメディア上の広告だけではなく、YouTubeなどリーチ目的に使うデジタルメディアも同様だ。
高柳氏はキリンビールのマスの事例として、「本麒麟」の広告を紹介。同商品では「ここまでうまいと時代が変わる。」をコンセプトに、様々なメディアでコミュニケーションを実施。その結果クリエイティブは高く評価され、生活者へのリサーチ調査でもポジティブな反応が得られたという。
2つ目のデジタル広告は、デジタル上のユーザーにアプローチすることを前提とした上で「お客様が誰かに伝えたくなることが重要」とした。企業目線のメッセージではなく、共感した生活者の言葉でブランドや商品を語ってもらう場や仕組みを考えることが大事だという。
3つ目の現在高柳氏が担当しているダイレクト広告に関しては、以下のようにポイントを解説した。
「ダイレクト広告は、圧倒的に商品が欲しくなる、この値段なら買ってしまう状態を作ることが一番の目的です。そのために、買いたい人に買いたいタイミングで、買う言い訳を作ってあげることが重要になります」(高柳氏)
たとえば、「9日間限定で10%オフ」「今ならクラフトビールがお得に楽しめちゃう」など、思わず買いたくなるようなクリエイティブはパフォーマンスも高くなるという。
次に、共通して重要視すべき点として高柳氏は「鳥の目、虫の目、魚の目」を挙げた。
鳥の目で俯瞰しつつ、虫の目で詳細をチェックし、魚の目で全体の流れを読む。それらの目を使い分けながら、全体像を理解することが良いクリエイティブ作りには重要であることを伝えた。
そして最後に、高柳氏はブランドの仕事をする上で一番大事だと思うことを明らかにした。
「大事なのは原点回帰することです。一番搾りがリニューアルしてすごくうまくいったんですが、一番搾りはその時代に一番V字回復しました。そのブランドが提供しようとしている価値に立ち戻って考えることが非常に重要だと思います」(高柳氏)