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起き始めた「シリコンバレー離れ」/日本企業が協業すべき次のイノベーションが生まれる街【お薦めの書籍】

 グーグル、フェイスブック、アップルなどが本社を構え、技術革新とスタートアップの聖地ともいわれてきた「シリコンバレー」。実は今、新たなイノベーションを生む場所としては陰りが見え始めたといわれています。今回は、斬新な発想から先進的なテクノロジーが生まれる「次の街」に光を当てた書籍を紹介します。

シリコンバレーに陰りが見えている

 今回紹介する書籍は、『ネクストシリコンバレー 「次の技術革新」が生まれる街』。タイトル通り、次のシリコンバレーになりうる技術革新が生まれる街が紹介されています。

『ネクストシリコンバレー 「次の技術革新」が生まれる街』1,980円(税別)平戸慎太郎、繁田奈歩、矢野圭一郎 (著)日経BP

『ネクストシリコンバレー 「次の技術革新」が生まれる街』1,980円(税別)
平戸慎太郎、繁田奈歩、矢野圭一郎 (著)日経BP

 そもそもシリコンバレーは、グーグル、フェイスブック、アップルなど技術系のグローバル企業、斬新なアイデアから生まれたスタートアップ企業が多く存在する街です。しかし本書によれば、トランプ政権の政策によって優秀な外国人エンジニアのビザが通りにくくなるなどの影響から、今「シリコンバレー離れ」が始まっているといいます。

 本書は、このような状況で起きた先進的なテクノロジーや勢いのある起業家が集まる「ネクストシリコンバレー」ともいうべき地域の出現と、日本がそれらの地域といかに組むべきかを記しています。

 全3部構成になっており、国際的に活動する3名の著者がそれぞれ「イスラエル」「インド」「ドイツ」を紹介。各々が異なる経歴を活かしながらその魅力を解説しています。

ネクストシリコンバレーに目を向けるべき理由

 解説者の一人である元楽天の平戸慎太郎氏は、「日本のビジネスパーソンは『シリコンバレー流』ばかりを注視しがち」だとしたうえで、日本企業の協業先として見たときのシリコンバレーの問題点を次のように指摘しています。

シリコンバレーの企業が見据えているのは、巨大なアメリカ市場であり、そこで事業を推進することが第一優先事項となっている。(中略)アメリカナイズされたプロダクトは、その完成度が高ければ高いほど、アジア市場での展開は難しくなることが多い。(p.3)

 同氏は一方で、前述の3つの国がシリコンバレーとは異なる特長を持つことも述べています。「インド」では主にアジア市場をターゲットにしており、「イスラエル」でも同じくアジア向けに展開する企業が徐々に増加、また「ドイツ」の首都ベルリンではアメリカとは異なる独自のスタートアップ文化が生まれているというのです。これらを踏まえ、「イスラエル」「インド」「ドイツ」が日本の協業先としてシリコンバレーよりも相性の良い国だと主張しています。

 この状況下において相変わらずシリコンバレーに新たな技術/起業家との出会いを求める日本企業に対し、平戸氏は「このままでは日本は世界のビジネスから“周回遅れ”になりかねない」と警鐘を鳴らしています。

協業相手としてアピールすべき日本企業の特長

 日本企業から見て「ネクストシリコンバレー」は魅力的な協業先のようですが、彼らは日本企業をどのようにみているのでしょうか。1章では、日本企業との協業がイスラエル企業にとってメリットになるいくつかのポイントが紹介されています。

 まず挙げられているのが、人口の違い。イスラエルの人口は約850万人で、自国だけで展開しようとするスタートアップはほとんどないそうです。そのため、1億2,600万人という人口を抱える日本が魅力的な市場になりうるといいます。

 次に日本が「アジアの窓口」になりうること。中国とアメリカの政府間で貿易戦争が行われている中、アメリカと関係の深いイスラエルは中国に最新技術を渡しにくい状況だといいます。そのためイスラエル企業は、「アジアの窓口」として中国ではなく日本を選ぶことも少なくないというのです。

 また両者の大きな違いでありながら、それぞれにとって魅力になりうる部分として挙げられているのが、「スピード感」です。平井氏は、イスラエル企業が事業を進める際の圧倒的なスピードを評価しつつ、商品やサービスのリリース当初に「質」が低くなりがちだと弱点を指摘しています。一方、イスラエル企業が日本企業のじっくりと製品の質を高めていく特長や、製品のアフターフォローに着目しているとも述べ、日本企業が協業において貢献できる側面を示しています。

 本書では、日本企業の新たな協業先として現れた「イスラエル」「インド」「ドイツ」の魅力を、多くの事例を通じてより深く解説し、同時に日本企業として世界と渡り合う方法を提案しています。

 イノベーションにより時代を変化させるのは、アメリカだけではありません。遠国の変化を間近に感じられる本書から、次世代のパートナーを探してみるのはいかがでしょうか。

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この記事の著者

安原 直登(編集部)(ヤスハラ ナオト)

大学卒業後、編集プロダクションに入社。サブカルチャー、趣味系を中心に、デザイン、トレーニング、ビジネスなどの広いジャンルで、実用書の企画と編集を経験。2019年、翔泳社に入社し、MarkeZine編集部に所属。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2020/01/21 07:00 https://markezine.jp/article/detail/32742

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