高い反応を引き出す、顧客行動に寄り添ったシナリオメールとは
――ここのところのメールマーケティングのトレンドについて教えてください。
五十嵐 One to Oneマーケティングが説かれるようになって久しいですが、メールマーケティングにおいても、1人ひとりの顧客にあわせた情報発信を行うことが重要になってきています。
メディアとしてはとくにSNSが盛り上がりを見せていますが、それぞれのメディアに役割があると考えます。SNSはリーチ力に優れ、面を取りに行くのに適したメディアです。リツイート等のユーザーの行為によって、自然発生的に拡散されていきますよね。人から人へクチコミで、画一的な情報を拡散させていくのに適したメディアであると言えます。現状、自社がアプローチできていない層に、ファーストタッチを行うために活用する企業も多いようです。
一方のメールマーケティングは、サイトへの会員登録など、すでに接触してくださっているお客様に対し、ファーストパーティーデータを活用することで、情報を出し分けることができるのが特徴です。HTMLメールのようなリッチなクリエイティブを用いることも可能であるため、商品やブランドへのマインドを高めていくためのコミュニケーション手段だと言えるでしょう。LINE等に代表される即時性の高いメッセージチャネルとの組み合わせで、さまざまなCRM施策を行う企業もあります。
SNSとメールには双方に強みがあり、顧客層拡大にあたってはいわゆる車の両輪だと考えております。その都度、適したメディアを選び、適した役割を担わせることが重要だと捉えています。
――メールは「情報の出し分けが可能なメディア」というお話がありましたが、具体的な施策にはどのようなものがありますか。
嶋根 読者の属性に応じたグルーピング、セグメントといった手法が一般的ですが、こうしたデモグラフィックな情報に加えて最近では、メールへの反応や購買といった「読者行動」をもとにした送り分けの手法がトレンドとなっています。とくに、「メール開封の有無」や「コンバージョンに至ったか否か」といった条件ごとに配信メールの内容を分岐させる「シナリオメール」の手法が最近注目を集めています。
――シナリオメール施策の効果と、具体例について教えてください。
嶋根 開封やクリック、コンバージョンといった読者の行動に合わせた配信を行えるため、同じ内容をすべての会員に送る通常の一斉配信に比べ、高い反応(開封・クリック)が期待できます。
たとえばECサイトを運営されている企業様であれば、セールの告知メールがわかりやすい例でしょう。 1通目は全体に、セール開催を告知するメールを配信します。そのメールを開封・もしくはメール内リンクをクリックしていただいたお客様は、セールに少なからず関心をお持ちだと考え、セール対象アイテムの中からさらにオススメのものをピックアップし、レコメンドメールのようなクリエイティブで2通目のメールをお送りします。
一方、1通目のセール告知に反応がなかった方たちは、何も対策せずにいると休眠顧客になってしまう可能性が高い。ならば強めの離反施策として、クーポンを添えたメールを2通目にお送りするといった具合です。
課題は「運用負荷」 複雑多岐にわたるシナリオ運用は担当者の負担が大きい
――反応によって送るメールの内容を変えることは有効そうですが、その分配信するメールの種類は増えるのではないのでしょうか。
五十嵐 まさにそのとおりで、シナリオの本数や分岐点が増えるほど、メールの配信設定を行う工数は増えます。たとえば、1本のメール配信への反応の有無をもとに分岐するシナリオを構築する場合、元となる配信に加えて分岐先の設定を行うため、都合3本分の配信設定が必要となります。そこからさらに分岐点を増やしたり、複数のシナリオを並行して運用したりすると、工数は膨れ上がってしまいます。
それでも、シナリオメールの配信は先述のとおり高い効果が見込めることから、近年盛んに採り入れられています。一因として、シナリオに基づく配信を自動的に行えるMAツールの普及が進んだことも挙げられるでしょう。
――2010年代中頃から、日本でもMAの導入が盛んになりました。
五十嵐 MAは見込み顧客の成約確度に応じ、ナーチャリング施策およびそのパーソナライズを自動化できる仕組みで、もともとはBtoBのセールステックとしてアメリカで普及が進んだツールでした。近年は日本においても、営業活動の効率化という観点からMA導入が進み、高度な運用によって実績を伸ばした企業も多数あります。
――では、MA導入によってシナリオメール実施のハードルは下がったのでしょうか。
五十嵐 効率化に成功した企業が多い反面、十分な成果を上げられないパターンもあるようです。
MAは高機能で詳細なスコアリング、セグメントが可能な一方、習熟には相応の手間と時間がかかると言われています。顧客情報や行動履歴等のデータをもとに分析しようにも、社内でそれらのデータが一元的に管理・運用されていない場合、MAツールに取り込むにあたってデータの取りまとめや整形が必要で、そのために既存の運用を見直すなどの手間が発生する場合もあります。
メール配信も同様ですが、マーケティングツールの運用担当者は多くの場合、他のマーケティングや販促業務と兼任していることが多く、ひとつの工程に多くの時間を割けないという制約も存在します。データの整理や、ツールの習熟に十分な手間をかけることができなかった結果、高機能なMAツールを利用していても、シンプルなメール配信しか行えてないというケースも少なくありません。
――つまり、担当者の運用負荷がシナリオメール施策のボトルネックとなっているのでしょうか。
五十嵐 そのような側面はあると感じています。せっかく高い効果を見込める施策にもかかわらず、手間がかかることを理由に手を出せない企業は多いのではないのでしょうか。MAツールの場合、導入や運用のコストも含めて考える必要もあります。
シンプルなシナリオから始め、最適な運用を見つけるのが王道
――これからシナリオメールを始めようと考える事業者にとって、心掛けるべきポイントはありますか。
嶋根 最初から詳細すぎるスコアリングやセグメンテーションで行うのでなく、シンプルな設計から始め、効果を探るのが良いでしょう。先ほど挙げた例のように、「メールを開封したか」「リンクをクリックしたか」等、まずはメールに対する直接的なアクションを起点に2パターンの送り分けを考えるだけでも、「興味・ニーズの有無」を大まかにとらえることが可能です。最初から完璧を目指すのではなく、シンプルな試行を繰り返す、その先の分岐を少しずつ増やしていく等、運用を重ねることで結果を蓄積し「自社にとって効果の高いパターン」を見つけていくことが重要です。
もうひとつ大事なのは「クリエイティブのクオリティを落とさない」ことです。たとえ良いシナリオを思いついたとしても、メールのクリエイティブの質が低ければ効果は期待できません。シナリオありきではなく、読者に何を伝えたいか、もっと言えば「どんな行動をしてほしいか」のゴールを考えて、クリエイティブをしっかり作ることの大切さは、通常のメルマガと変わりません。
――御社が開発・提供しているメール配信システム「Cuenote FC(キューノート エフシー)」でも、最近シナリオメール機能が追加されたそうですね。
五十嵐 もともと、当社システムでは個人単位で開封・クリックの有無が確認でき、過去のメール配信への反応を分析してリストを分ける機能があったため、シナリオメールの配信自体は可能だったのですが、「効果測定」「リスト分け」「リストごとの配信設定」の一連の作業を手動で行っていただかなければならず、施策実施にお手間をおかけしていました。この一連の作業を自動化したのが、今般リリースさせていただいたシナリオメール機能です。
Cuenote FCの「シナリオ機能」は、メールの開封、クリック、コンバージョンといったメール受信者の行動に応じて、メールコンテンツを自動で送り分けることができるため、「メールコンテンツの作成」と「分岐させる条件」をあらかじめ指定しておけば、その後の配信、効果測定、測定結果に基づくリスト分け、各リストの配信設定からシナリオごとの配信までが自動で実施されます。効果の高いシナリオメール施策を、最小限の手間で行うことが可能です。
反応アップに欠かせない「HTMLメール作成支援機能」も充実
――コンテンツの重要性については先ほども触れられていましたが、具体的にどのようなコンテンツが反応を引き出せるのでしょうか。
五十嵐 スマートフォンの普及により、HTMLメールの存在感・効果がより高まってきています。今や業種を問わずHTMLメールが主流となってきており、メルマガ全体に占める割合も広がりつつあります。当社の独自調査によれば、売上上位のEC事業者では全体の8割以上がHTMLメール、という結果も出ているほどです。画像や写真などを活用することで視覚訴求力に優れたメールを作成でき、反応アップが期待できます。
当社システムでは「HTMLメールエディター」(追加料金なし)を標準で搭載しており、提供開始以来、ご利用のお客様に広くご支持をいただいております。ドラッグ&ドロップの直感操作で、HTMLやタグの知識がない方でも、簡単にビジュアル性の高いHTMLメールを作成できることから、効果改善と運用負荷の軽減を同時に実現している機能のひとつと言えます。
この他にも、受信デバイスに応じてHTMLメール表示不可の端末宛には自動でテキストメールを表示させる機能や、エラーとなったアドレスのクリーニング機能など、ECやウェブマーケティングに携わる方にとって使いやすく、設定や運用の手間を最小限に抑えるための仕組みを標準機能として備えています。月間40億通、毎時1000万通の配信実績を有するCuenote FCは、元来の特長である「高速・確実にメールが送れる」ことに加えて「メールマーケティングの効果をより高める」ことを追求したシステムとなっています。
嶋根 実際にユーザー企業であるお客様を訪問すると、まだまだステップメールやシナリオメールに着手できず、一斉配信によるメール施策に留まっている企業様も多いようです。まずはCuenote FCのシナリオ機能で、メール受信者の行動に応じて、メールコンテンツを自動で送り分けるというシナリオメールから始めていただくのは、現実的なOne to Oneマーケティングの最初のステップではないかと考えています。
――メールマーケティングに携わる読者の皆様へ、メッセージをお願いします。
五十嵐 私も以前、ある企業でメルマガの作成・編集を担当していましたが、ネタ探しからHTMLソース編集、配信設定ととにかくやることが多く、販促業務と並行して行うことはたいへんでした。「働き方改革」が叫ばれる今、メール配信システムの活用によって、限られたリソースで最大の成果を挙げられるような環境がより多くの企業に広がっていくことが大切ですし、その一助として当社システムがお役に立てるのであれば、これ以上の喜びはありません。
嶋根 Cuenote FCは、実際にその業務を担当される方が、作業に時間をかけることなく、本来の業務である「施策を考える」ところに時間を割いていただけるよう、サポートする補助ツールのひとつであると考えています。主流なマーケティング施策のひとつであるメールマーケティングにおいて、作業が効率化され、本来の業務に専念していただける環境をもたらすのは、大きな目で見れば企業にとって、利益のひとつになるのではないでしょうか。メールマーケティング部分でのご支援により、企業活動全体を良い方向に推進するお手伝いができるよう、これからも機能追加などを行っていきたいと考えています。