年2回のエアコン商戦、PDCAに課題
ダイキン工業では年に2回、夏・冬にエアコン商戦のピークを迎える。夏は「除湿に強いダイキン」、冬は「世界で唯一加湿できるエアコン」という点を訴求し、広告施策を展開してきた。この2回の商戦は同社にとって社運をかけた一大キャンペーンであり、デジタル広告や自社サイト、テレビCM、交通広告、SNSなどあらゆる広告施策が一気に展開される。
エアコンは、買い替え期間が平均して13年に一度と、購入サイクルが長い商材である。そのため、この貴重な買い替えタイミングに、ダイキンブランドを想起してもらう必要があるのだ。ところが同社ではこれまで、「どの広告がどのように効いているかわからず、広告施策全体を振り返り、次年度のプランニングに活かす仕組みがなかった」と、国内のデジタル広告のプランニング、バイイングなどを担当する土井智保子氏は振り返る。
「広告宣伝グループの中でも、それぞれ違うメンバーが各メディアを担当していたため、それぞれの担当者がどのようなコンセプトで広告を展開し、どのような効果があって次年度はどうしたいと考えているのかまったくわかりませんでした。デジタル広告を担当する私自身も、商戦期が終わってかなりの時間が経ってからレポートをいただいていたので、データを整理してじっくり振り返りをする余裕がなく次の商戦期に突入していました」(土井氏)
“データの海”に溺れ、正しく成果を把握できていなかった
当時は、PDCAでいうPlanとDoを繰り返すばかりで、次年度の同じ商戦期になっても前年度の内容を思い出すところから始めねばならず、反省点や改善ポイントを活かすことができなかったのだという。
「夏と冬のキャンペーンでは指標や訴求ポイントが異なるのですが、施策の振り返りをする時期と、次のキャンペーンのプランニング時期とが重なっているため、レポートを活かしきれなかったのです。もちろん、レポートを見れば新たな気付きもありましたが、そこで得た反省点を次のキャンペーンに最大限活かしたり、他のメディアの担当者たちと連携してキャンペーン全体をより良くするためにそれぞれが持っているデータを活用することはできず、毎年同じ議論を繰り返して堂々巡りをしていました」(土井氏)
中でも苦労していたのが、デジタル広告のデータ量の多さと指標の複雑さ、レポートを理解し解釈することの難しさだった。展開するのは自社サイトやキャンペーンサイトのみならず、Facebook広告、Instagram広告、YouTube広告と出稿先も多岐にわたる。見るべき指標も入り乱れ、多数の広告代理店から送られてくる大量のデータをどう読みこなし、活用していいのか途方に暮れていたという。
「各広告代理店さんはいつもデータをきれいに整理して、きちんとレポーティングしてくださるのですが、年間売上を左右する一大キャンペーンなのでたくさんのメディアを運営し、あらゆるメディアに出稿していると、データの海に溺れているような感覚になっていました。それだけでなく各広告の施策がどのように影響し合ってキャンペーンの成果が出ているのかを把握しきれていませんでした」(土井氏)
土井氏は「むしろ広告代理店さんからいただいたレポーティングデータを、自分が社内に報告するために都合よく使って“うまく見せている”ことすらあったように思います」と反省点を口にした。
たくさんのデータを取得できるがゆえに、KPIやデータを整理する余裕がないというのは日々デジタルマーケティングに取り組む多くの企業が抱える課題の一つだろう。