面倒臭いという気持ちが、案外、人の気持ちを1番折るものだ
MarkeZine編集部(以下MZ):今回は、デジタルマーケティングのコンサルティングとアウトソーシングに関するサービス展開をしているディーテラーの代表取締役社長である広瀬さんにお話をうかがいます。
「DeeBoard(ディーボード)」は現状のアクセス解析における課題感からリリースに至ったと聞いているのですが、どのような課題感か教えてください。
広瀬:はじめて課題を感じたのは、社内ミーティングで社員にGAレポートの表示を指示したときです。まずブックマークからGAの管理画面にアクセスし、クライアントのアカウントを選択。プロパティ→ビューを選択してレポート画面が表示されます。その後、ユーザーレポートやデバイスレポートなどのレポートの種類を選択し、PVやセッション数などの確認したい指標を設定、集計期間や分析の切り口(ディメンション)を選択し、ようやく見たいレポートにたどり着けます。これだけで数分の時間がかかってしまいます。
実際に社員に聞いたところ、「ログインすることすらめんどくさい」という方もいました(私もそうですが)。これはTVアニメ『恋物語』の貝木泥舟の受け売りですが、面倒臭いという気持ちが、案外、人の心を一番折るものです。「マーケターの心を折る業務を減らしたい」、そんな気持ちから自社利用のためにDeeBoardを作り始めたのが最初でした。
MZ:他のアクセス解析ツールを使うマーケターも多いと思うのですが、なぜGAなのでしょうか?
広瀬:確かにGA以外にも魅力的なアクセス解析ツールはあります。仕事柄、色んなアクセス解析ツールを使ってきました。CNAMEトラッキングを使用しデータ取得精度が高いツール、連携先が豊富で様々なデータソースにアクセスできるツール、AIが改善アドバイスをしてくれるツール……、個人的にマーケターに使っていただきたいツールは多くあります。
ただし、ほぼすべての企業に導入されているツールと呼べるのはGAのみです。仮に、現在GA以外のアクセス解析ツールを使いこなせているとして、そのマーケターが他の企業に転職した際、転職先が同じツールを導入していなければ、身に付けたスキルが十分に活かせない可能性もあります。
魅力的なアクセス解析ツールが多数存在していることは理解しつつも、「どこにいっても通用するアクセス解析のスキル」を身に付けるには、GAを攻略することは避けられないと感じています。なので、GAに対する苦手感を取り除くために、GAの不得意な部分を補うようなツールを作りたいと考えました。
私は、面倒くさいという気持ちが一番人の心を折ってしまうと考えています。その面倒くさいという気持ちを解消するとともに、GAの利便性を伝えたいと思ったのが「DeeBoard」を作った理由の1つでもあります。
MZ:GAに関する知識、スキルがあると様々な企業でも順応できるという訳ですね。では、「GAの不得意な部分」について教えていただけますか?
広瀬:高機能・多機能の代償として、GAはレポート画面内の選択肢が多すぎるのです。まず、どのボタンをクリックすれば良いのか迷う。そして、操作方法がわかったとしても目的のアウトプットにたどり着くまでのステップ数が多い、そんなところでしょうか。ビジュアル面でも、初心者には分かりづらいかもしれません。
念のため補足しておくと、これは高機能・多機能とはトレードオフであり、GAが優れたアクセス解析ツールであることには変わりありません。
指標・ディメンションの理解と因数分解が課題に
MZ:上手くアクセス解析ができていない担当者に共通している課題はどこにあるのでしょうか。
広瀬:「指標とディメンションの理解」と「改善策を出すための因数分解」ではないでしょうか。
アクセス解析では、指標とディメンションの2つが重要です。指標は「PV」「セッション」「ユニークユーザー数」など数値が入るもので、ディメンションは「流入元」「性別」「地域」「曜日」「時間帯」といった指標の切り口になるものです。まずは指標の定義とディメンションの種類の把握が大事であると考えています。
また、指標は因数分解することができます。よくPVをサイトの健康状態を示すKPIとして盲目的に追っている方もいますが、これだと改善策が出しづらくなります。たとえば、PVは以下のように分解できます。
・PV=セッション(量)×1セッションあたりのPV(質)
・PV=UU(量)×1ユーザーあたりのPV(質)
つまり、「サイトへの集客数(量のKPI)」「サイト内でのユーザーの行動(質のKPI)」に分解できるのです。これによって、サイト外(集客面)なのかサイト内なのか、問題のあたりをつけやすくなります。
このように因数分解しながら問題の原因をアクセス解析レポートで探っていただきたいです。
GAで見るべき7つのレポートとは?
MZ:では、「DeeBoard」がどのようなサービスかを教えてください。
広瀬:「DeeBoard」はGoogleデータポータルを使用し、弊社でデザインをしたアクセス解析レポートです。重要な指標やディメンションを厳選することで、短時間でサイトの健康状態を確認できるというのが一番の特徴です。
レポートは「サマリ」「PVとセッション」「ユーザーと新規ユーザー」「リピーターと質の指標」「オーガニック検索」「PV・LPランキング」「コンバージョン(以下、CV)」の7つを用意しています。基本的には、この7つのレポートで、よく見る指標とディメンションはクリアしているはずです。
数ヵ月に1度しか見ないようなレポートはあえて外し、「見たいレポートにすぐアクセスできる」ことを重視しています。「ちょっと、この数字教えてくれる?」のような上司のオーダーにはほぼ応えられるかと。
たとえばサマリでは、PVやセッションといった指標を「前月と比べて今月はどうか」「前々月と比べて前月はどうか」など、期間比較することができます。また、「性別」「年齢別」「デバイス別」「時間別」「曜日別」「地域別」のアクセス数もグラフィカルに表現しています。サマリは、この1枚で社内外の方にWebサイトの現状を瞬時に理解してもらえることを目的としているため、見ていただきたい指標とディメンションを詰め込みました。その分、情報量の多さをカバーするためのデザインにこだわったレポートです。
注釈で「PVとは何か、セッションとは何か」といったキーワードの解説も入れているので、知識がない人でも指標の理解ができるようにしています。
また、詳細を知りたいときは、サマリ以外のレポートを使用することで細かい部分を確認することができます。たとえば、PVとセッションでは、時系列でデータの確認が可能です。今月+過去13ヵ月のデータが閲覧できるため、前年同月比の比較なども簡単に行えます。「今月 vs 前月」「前月 vs 前々月」の月初~月末までの積み上げレポートも用意しているため、どこでペースが上がったか下がったかもわかりやすいところが、個人的に気に入っているところです。
コンサルの現場で見つけた課題をレポートに反映
MZ:サマリが1番最初に来ているのも、まずはこれから見て欲しいという思いがあるからなんですね。
広瀬:レポートの構成はとても意識しました。はじめから順番に見ていけばアクセス解析が理解しやすいようにレポートを構成しており、この構成に沿って見ていけば、流れで数字を追うことができます。
GAでは詳しい数字まで見ることができる代わりに、使用するときは自分で期間・指標・ディメンションを設定しなくてはいけません。
それに対して、「DeeBoard」は見たいもの・見るべきものがあらかじめ設定されているため、すぐにサイトの健康状態を把握することができます。このように、スピード感(操作のシンプルさ+わかりやすいビジュアル)を重視しているのが「DeeBoard」です。
MZ:ありがとうございます。では、他の「DeeBoard」の強みを教えてください。
GAの初期設定を無償でサポートしている点です。コンサルティングをする際に企業のGAを触らせていただくと、初期設定が正しくされていないケースが多々あります。目標設定がされていなかったり、イベント設定が機能していなかったり……。そんなGAを見ると、むずがゆい気持ちになるので、初期設定が不安な方に初期設定を無償でサポートしております。
また、ご要望に応じてレポートをカスタムすることも可能です。その際は、お客様と相談しながら、指標やディメンション、レイアウトなどをフルオーダーで作成しています。
「DeeBoard」を卒業するマーケターがいてもいい
MZ:「DeeBoard」で使用している指標は、ご自身がマーケターとして分析する際に重要視していた指標なのでしょうか。
広瀬:はい。これよりも複雑なオーダーでアクセス解析することもありますが、そのようなケースは稀です。基本的な指標が理解できずに迷っているクライアントの方が多いので、複雑で高度な分析よりも、わかりやすく、シンプルに扱えることが求められているのではないかと思い「DeeBoard」を作りました。
MZ:これだけのサービスを月額2,000円で提供するのはなぜでしょうか? GAやGoogleデータポータルが無料とはいえ、この値段設定には驚きました。
広瀬:DeeBoardはGoogleデータポータルというGoogleが提供するBIツールで作成したレポートです。デザインや構成を考えることと、設定には苦労しましたが、開発コストはかかっていません。正直、努力すれば誰でも作れるようになると思っています。
DeeBoardの「短時間でサイトの健康状態を確認できる」というメリットを感じてもらいつつ、「時間を節約できることの素晴らしさ」「レポートの見せ方の重要性」「アクセス解析の面白さ」などを体感いただけたら嬉しいです。
そして最終的に、DeeBoardをきっかけに「自分でカスタムレポートを作成してみよう」「Googleデータポータルにチャレンジしてみよう」とか、マーケターの方々が考えるようになったら、DeeBoardを卒業するのも良いかもしれません。その頃には「DeeBoardってアクセス解析レポート使ってたけど、今の俺なら余裕でもっとすごいの作れるわ」という方も出てくるかもしれません。それはむしろ、私にとっての成功です(笑)。
MZ:それでは最後に、今後の展望を教えてください。
広瀬:個人的には、アウトプットのデザインにこだわるマーケターが増えて欲しいと思っています。私は、現在運営しているWebメディア「Digital Marketing Lab」を作るためにデザイン学校に通っていたのですが、デザインへのこだわりや理解はマーケターの資産になると思っています。今回はGAに対する興味・関心を高めてもらうためにGAレポートをデザインしたわけですが、そういったデザインに対する興味を、もっとマーケターに持ってもらえる取り組みができたらと思っています。
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