顧客の悩みの顕在化が成果につながる
――オルビスさんは、実際に「ジールス」をどのように活用されていますか。
照井:LINE公式アカウントとは別立てで、チャットコマース「ジールス」を取り入れたスキンケアチェックのアカウントを設けています。これは、簡単な質問に答えるだけで肌タイプを診断、それぞれのお客様に合った商品をお勧めするというもので、公式アカウントのリッチメニューからスキンケアチェックのアカウントに遷移することができます。
照井:スキンケアチェックでは、既存顧客様のクロスセルを狙った商品紹介はもちろん、新規顧客の獲得を目的に、トライアルセットの訴求を行っています。公式アカウントとスキンケアチェックのアカウントを連動させた体験により、既存のお客様にはよりオルビスを好きになっていただけて、新規のお客様には潜在的な悩みを自分事化してもらうことで、オルビスに興味をもっていただけたのではないかと思います。この取り組みから1ヵ月でCV数が約160%増、3ヵ月後には約400%にまで伸びました。
――右肩上がりで伸びていますね。CVが大きく増加したポイントはどこにあるのでしょうか。
照井:LINE公式アカウントからの導線の他に、LP離脱のポップアップ誘導をいれたり、他スキンケアアカウントからのプッシュ配信も行いました。また、テレビCM内でスキンケアチェックについて言及したところ、多くの方にご利用いただけました。
CVに至った理由としてはやはり、「ジールス」のUXライターさんと綿密に相談して決めたコミュニケーション設計です。具体的には、普段お客様が気にしないようなこともあえて質問して、肌の悩みを顕在化させました。ただ一方的に「この商品良いですよ」と押し売りするのとは違ったコミュニケーションが取れたのではないでしょうか。
遠藤:お客様の悩みを顕在化させるためのポイントは、選択式会話を採用したことです。自由に会話できる形式だと、そもそも自分がどういった課題を抱えているのかがわからないので、何を答えたら良いかもわかりませんよね。どういった問い、選択肢を用意すれば、より良い体験を提供できるか、UXライターが緻密に設計しています。
――よりリアルな接客体験を構築しているんですね。ところで、スキンケアチェックをLINE公式アカウントとは別立てにされたのにはどういった理由があったのでしょうか。
遠藤:LINE公式アカウントは、洗練されたクリエイティブによる発信で、既にオルビスの世界観が醸成されていました。その世界観を壊さないようにするとともに、ユーザーにとっても、情報を受け取るチャネルとコミュニケーションを行うチャネルを切り分けたほうが良いのではと、ご提案する運びになりました。
チャットコマースは運用型広告以上に繊細?
――チャットコマースの導入で苦労した点はありましたか。
照井:コミュニケーションロジックを組む部分は苦労すると想定していました。というのも、弊社は既にECサイトのサービスQ&Aを、LINE公式アカウント内でチャット機能を利用し展開しており、ロジックの膨大なデータ量を存じ上げておりました。そのため、自社で運用していけるかが懸念点でした。
しかし、既にお話しているとおり、Zealsさんはこのような枠組みからサポートしてくださいました。プロダクトの提供のみを行う企業様だったら、今のリソースでは難しいと判断していたと思います。
遠藤:チャットコマースは運用がとても大切です。一度コミュニケーション設計を行えば、いきなり良いパフォーマンスが出るわけではなく、運用型広告と同様にABテストを繰り返していくことが必要なんです。質問の順番や語尾を入れ替えるだけで、エンドユーザーが受ける印象が変わるので、条件にあった良いシナリオを構築していく。もしかしたら、運用型広告以上に繊細で、正解がわかりにくい側面があるかもしれません。
それをサポートする「ジールス」のUXライターは、通販、コスメ、人材、金融チームなど、業界ごとに分かれていて、各チームがそれぞれにあったコミュニケーションに精通しています。最初のロジック設計は、細かいディスカッションを行いながら構築し、その後も企業と並走して運用をサポートする形です。
余談ではありますが、絵文字の使い方も非常に奥深くて、ある業界では最適なコミュニケーション設計でも、違う業界を担当しているUXライターからは「この絵文字は使わないほうがいい」といった声が挙がります。ターゲットごとに刺さる絵文字は異なるんです。「!」の付け方一つとってもそうです。一見些細なことではありますが、この判断一つでパフォーマンスは大きく変わってきます。