コロナ禍でスポーツ観戦のお金の使い方が変わった
平地:まさに聞きたいと思っていた内容が聞けました。現状は会場で買うことに最適化されていて、ECもそれをWeb化しただけになりがちです。
西井:試合に最適化してしまうと、終了後に帰宅したら購入意欲も静まってしまうので、もったいない。試合前に注文可能にし、会場入り口にEC専門の受け取りカウンターを用意しても良いでしょう。

平地:直近は新型コロナウイルスの影響で試合会場という接点が制限されているため、スポーツチームのEC活用の機運が高まっています。しかし、商品ページでは商品写真しかない、場合によってはイラストのみのケースもあります。
個人的にはそれだとワクワクしないので、選手が着用している写真や自宅での使用シーンを入れてみるなど、もっとEC上のコンテンツを拡充することが必要だと思うんですよね。
西井:今の状況はチャンスでもあります。どうしてもシーズン中は試合があり他のことに手が回らなかった人たちが、今は「何か変えないといけない」と躍起になっている。
シーズンが開幕したプロ野球では、デジタルを活用した投げ銭に取り組むチームが出てきています。さらに、巨人ではバックスクリーンに放映する応援メッセージを募ったり、観客が指定した外野席にホームランボールが当たると景品が当たるプレゼント企画を行ったりしていました。
投げ銭制度を設けるだけで、継続的にお金を集めるのは難しいので、このような取り組みが出てくるのは良いことだと思います。ECでも、部屋着でも着やすいユニフォームを販売するなど、今の観戦スタイルに合わせた商品を用意すれば、売上を伸ばせる可能性があります。
平地:新型コロナウイルスが流行する前からではありますが、一部のチームでライフスタイル向けのアパレルを強化したいニーズが高まっています。
たとえば、J1鹿島アントラーズの「F.D.」やJ1大分トリニータの「ONSEN CITY FOOTBALL CLUB」、J2ツエーゲン金沢の「WAYZ」など、普段からおしゃれに着こなせるアパレル商品が続々と登場しています。J3カターレ富山も近く発表するとのことでした。
西井さんがおっしゃるように、これからの観戦スタイルに合わせた商品開発・販売を進める動きは今後も広がりそうです。
ロシアW杯が教えてくれた、チケッティングの未来
平地:チケッティングに関してはいかがでしょうか。
西井:チケッティングもファンに目を向けたサービスにもっとしていくべきだと思っています。僕は2014年のブラジル、2018年のロシアと、2大会連続でFIFAワールドカップ期間中フル滞在していたんですが(笑)、ロシア大会のチケット関連サービスに非常に感動しました。
ロシアはファンIDなる観客用カードを用意しており、それを所有しているとワールドカップ期間中ビザの手続きがいらず、公共交通機関も無料で乗ることができました。さらに、チケットの払い戻しや再販などもファンIDを通じて行えました。
この大会で日本はベスト16に進出したのですが、僕は予選のチケットしか取っていませんでした。「現地にいるのに会場で見れないのか」と嘆いていたところ、現地の人が再販の仕組みを教えてくれて、見れないはずだった試合を見ることができたんです。
これまでは、会場そばにいるダフ屋と呼ばれる人たちが非公式に買い取り、高額に転売する状態が続いていましたが、その撲滅にもつながりました。これまでの当たり前を覆す力がデジタルにはあると思ったし、チケッティングもユーザー目線でまだまだ改善できると感じた体験でしたね。