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第2回 必要なのは、Webを「体感」すること


Web2.0的なサービスの登場により、PCモニタという窓の向こうは、日々驚きや喜びをもたらしてくれる世界が広がりつつある。しかし、そうした実感も全ての人たちが平等にが感じているわけではない。進化するWeb環境の中、自分に必要な「知識」や「情報」をより獲得するためには、まず自分で触って、使ってみることが重要である。

毎朝、違う世界を体験する

 朝起きると昨日とはまったく違う世界が窓の外に広がっている。ノートPCのモニタという窓の外に。昨夜書いたブログのエントリーには、見知らぬ人や、あるいは普段ブログを読んで知ってはいたものの、まったく交流のなかった著名ブロガーからコメントやトラックバック注1)がついている。そのトラックバック先をたどると、昨日までは決して見つけることのできなかった情報が容易に見つかるようになっている。また、別の朝にはAmazonアフィリエイトに大量の注文があるのに驚いたり、さらに別の朝にはトラックバックで他のブロガーと続けていたやりとりをまた違うブロガーが「おもしろい」といってうまく要約してくれたり。PCのモニタという窓の向こうでのつながりが、そんな風に日々の生活に喜びや驚きをもたらしてくれるのが現在のWeb環境だったりします。

情報が自然に寄ってくる?

 自分でブログを通じて情報発信を続けていると、欲しい情報が自然に寄ってくると感じることがよくあります。もちろん、ブログを書いているだけではダメなんですけど、ブログを書くためのネタ探しを他のブログ記事やニュース記事などのRSSリーダ(注2)やソーシャルブックマーク(注3)などを使ってうまく効率的に収集したり、自分のエントリーにコメントやトラックバックをしてくれた人のブログを読んだりしていると、検索エンジンでキーワード検索なんかするよりも、はるかに興味のある情報を見つけることができるような気がしています。

 これは考えてみれば当然と言える部分もあって、要するに自分のブログにコメントやトラックバック、ブックマークをしてくれるような人はそもそも自分と興味、関心の領域が重なる部分が多いのでしょうし、RSSリーダで読んでいるブログに関しても、そもそもあるエントリーが気に入って登録することが多いので、そのブログを書いているブロガーが私にとってしっくり来る内容のエントリーを書いてくる確率も自然と高くなるのだろうと推測できます。

 その上、ブログを書くということは、自分がどんなことに興味があり、どんなことを考えているかを日々、表明しているようなものですからそこに自然と似たような情報を持つ人たちが集まってきて、情報提供してくれるようになるのは、当たり前のことなのかもしれません。

Web上での情報の自己組織化

 このように現在のWeb上では、欲しい情報がそれを欲しがる人のところに自然と集まってきて、トラックバックやソーシャルブックマークなどを通じて情報間にリンクが貼られ、気がつくといつの間にか、関連する情報の集団が形成されるといった現象が日々あちらこちらで展開されているのではないかと思います。

 ほっておけば溶けてなくなってしまう雪だるまやテーブルから落ちて粉々に割れたガラスのコップ、子供がバラバラにしてしまったおもちゃなど、自然界にあるものの多くは「外部からの干渉がなければエントロピーは一定かあるいは増加する」というエントロピー増大の法則注4)に従い、時間の経過とともに秩序を失っていく傾向にあります。しかし、その一方で、雪の結晶化や都市での階層別ゾーニングの形成、あるいは受精卵が複雑な胎児に姿を変える生命現象など、あたかもエントロピー増大の法則に反するかのごとく、自発的に秩序が生成される現象も少なくはありません。こうした現象を複雑系の科学の分野では「自己組織化」注5)と呼ばれていたりしますが、まさに現在のWeb上で日々繰り返されている情報のクラスター化はWeb上での情報の自己組織化と呼んでもいいのかもしれません。

 実際、学術論文出版の引用と注釈の審査システムのコンセプトを手がかりとして、こうしたWeb上での情報間のリンクの生成に自発的な秩序生成が行われていることに気づいたのがGoogleでした、その後、有名なPageRank(注6)というアルゴリズム(注7)を組み立てて成功したのは周知の事実です。当時はGoogle創業者のラリー・ペイジのような才能をもった人しか気づくことのなかった「Webのネットワーク上での情報の自己組織化」という現象も、もはや、トラックバックやソーシャルブックマークなどの新しいツールの登場により、ごくごく普通の人にも体感できるくらいに、ありふれた現象となってきているのかもしれないなと思ったりします。

(注1) トラックバック
ブログの機能の1つで、別のブログにリンクを張った際、相手にそのことを通知(ping)する仕組みのこと。通知の際には、リンク元記事のURLやタイトル、内容の要約などが送信される。書籍などの場合、「~より引用」「参考文献」と参照先に断りを入れることがあるが、トラックバックはそのWeb版であるともいえる。ブログの読み手にとっては、今読んでいる記事の参考記事の在り処を知ることができるというメリットがある。
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(注2) RSSリーダ
ユーザがRSS/Atom Feedによる更新告知を受け取るためのRSSリーダには、大きく分けて3つの種類がある。①Gooリーダに代表されるツール・インストール型、②Firefox、OperaなどのブラウザやThunderbirdなどのメーラ一体型、そして、③Bloglinesやfeedpathなどのオンライン共有型のRSSリーダの3種類。中でもオンライン共有型のRSSリーダは、Web2.0的な情報の共有、集合知の利用という特徴を備えていて、オンライン共有型のRSSリーダである「はてなRSS」などはソーシャルブックマークである、これは、「はてなブックマーク」と連動しており、自分が登録しているFeedのどんな記事が他の人に人気であるかわかるといった利点もある。
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(注3) ソーシャルブックマーク
ソーシャルブックマークとは、オンライン型のブックマーク・サービスで、自分のブックマークを公開、不特定多数の人間と共有することで、互いに有益な情報の共有が行うことができるサービス。有名なものとしては、del.icio.us、はてなブックマークなどが挙げられる。
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(注4 エントロピー増大の法則
エントロピー増大の法則は、熱力学の第2法則とも呼ばれるもので、ドイツ人物学者のルドルフ・クラウジウスが「外部からの干渉がなければエントロピーは一定かあるいは増加する」という形で19世紀半ばに考案したもの。その後、オーストリア人の物理学者である哲学者でもあったルートヴィッヒ・ボルツマンがエントロピーを「S = k log W(ボルツマン定数×状態数の対数)」という数式で定式化した。エントトピーは現在では熱力学だけでなく、統計力学や情報理論の分野などで、自然に存在する様々な事物から失われていく秩序の量を示す尺度として用いられている。
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(注5 自己組織化
自己組織化とは、全体をコントロールするメカニズムがなくても、それぞれ独自の行動を行う個体が自発的に全体としての秩序を形成することを指す。自発的秩序形成と呼ばれることもある。
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(注6) PageRank
PageRankは、Google独自の検索アルゴリズムの名称で、その検索結果の的確さを支えるものとして知られている。Google自身の説明によれば、PageRankは「ページAからページBへのリンクをページAによるページBへの支持投票とみなし、Googleはこの投票数によりそのページの重要性を判断」するものである(参照:http://www.google.co.jp/why_use.html)。ちなみに、PageRankという名前は、創業者の1人、ラリー・ペイジの名にちなんで命名されたものである。
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(注7)アルゴリズム
ある目的を実現するために必要な作業の手順を明確に述べたもののことで、その指示に正確に従えば誰でも全く同じ結果が得られるように述べられているものを指す。反対語としてはヒューリスティックが相当する。
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この記事の著者

棚橋 弘季(タナハシ ヒロキ)

芝浦工業大学工学部(建築学専攻)卒。マーケティング・リサーチ、Web開発等の仕事を経て2003年より株式会社ミツエーリンクスに。現在はWebを使ったマーケティングに関する企画や自社サービスの開発に従事。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2006/07/12 21:16 https://markezine.jp/article/detail/34

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