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第2回 必要なのは、Webを「体感」すること


Web2.0デバイド

 しかし、そうした体感を伴う実感も、すべての人が平等に感じられているわけではないでしょう。おそらく自分でブログを書いたり、RSSリーダで情報の取得を行ったり、ソーシャルブックマークを使って注目度の高い情報を見つけたり、コメントやトラックバックを通じて他のインターネットユーザと情報交換を行ったりといった行為を、普段の生活の中で行っていない人には、情報の自己組織化する様を体感として感じることは、まずないのではないかと思います。

 同じように自分のブログを通じてAmazonアフィリエイトなどのアフィリエイト販売を行った経験のない人にはネット上で物を売るということが実際にどういうものかを体感することもないでしょう(もちろん、オンラインショップを実際に運営している人は別ですが)。SEOなどでアクセス数が多ければ売れるわけでもなく、商品を紹介しているブログエントリーのページアクセス数が多ければクリック数が多くなるわけでもなく、かと思うと、なんでこんなもの売れるんだろうという商品が案外売れたり、小難しい本でも意外と売れるんだなんて、ちょっとした驚きも実際にアフィリエイトをやってみたことのない人には、その体験を伝えるのも難しかったりします。

 オンラインマーケティングの難しさも実際、こうしたWeb体験を本当の自分自身の体感として理解していない人が、サイト上でのマーケティングの実施担当をしていたりすると勝手がわからず、無闇にSEOやリスティングにばかり頼ってしまって、なかなか効果が得られないという事態に陥ってしまったりするのでしょう。

 先に、Web上での情報の自己組織化は、少し前はGoogleのような高度な情報処理能力を有した人たちにしか見つけることのできない現象だったと書きました。それが今ではごくごく一般の人でも、自分でブログを書き、トラックバックやコメントを通じて交流を行い、RSSリーダやソーシャルブックマークをうまく使って情報収集を行っていたりすれば、Web上の情報の組織化を体験できるようになってきているという点についても述べています。

 つまり、この違いがWeb2.0とそれ以前のWebの世界の違いだといっても過言ではないと思います。そして、このWeb2.0的な体感可能な世界を実際に体感している人とそうではない人の間には、はっきりとした格差が存在しているようにも思います。このWeb2.0デバイドとでもいうべき格差は、単にITリテラシーの格差というよりも、テクノロジーを抜きにした場合も含めた情報利用に関するリテラシーの格差であるのではないかと考えられます。

IT社会 < 情報社会

 しかし昨今のWeb2.0ブームの加熱ぶりをみると、正直、「?」と感じるときがあります。Ajax(注8)やソーシャルネットワークサービス、マッシュアップ(注9)やSOAP(注10)などをはじめとする疎結合(注11)など。技術やツール、手法などの話に話題が集中するのはいいのですが、イコール、それがWeb2.0なのか? というと、ちょっと疑問に感じてしまうのです。

 そもそも極端な話、それがWebという領域だけに関する話なのだとしたら、その影響力がこれまでと比べてどんなに大きくなろうとも、ビジネスの観点からも、個人の生活の観点からも、そんなにすごいものなのかというとやっぱりそうじゃないでしょ、という気がします。もちろん、最初に書いたように、日々、喜びや驚きを得られるのもWeb上での環境がWeb2.0と呼ばれる形に進化したことが要因であるのは間違いないのですが、でも、私の喜びや驚きはやっぱりWebに向けられているわけではなくて、情報あるいは知識というものに向けられていることははっきり自覚します。

 そういう意味でWeb2.0的な進化は、手段の進化としてはその重要性もよくわかるのですが、先にも書いたように、それを体感として理解していない人にとっては、そもそも、その手段の有効性が理解できなかったりもします。そんな人たちに対して、いくらAjaxだ、マッシュアップだといってもはじまりません。しかし、昨今のWeb2.0ブームを見ていると、そういったテクノロジー的な話が多くて、ちょっと本質的な話題からはズレてしまってるのかなという印象を受けるのです。

 現在はIT社会である以前に情報社会です。ITという狭い括りで見てしまうと、現在のマーケティングにおいて、なぜこれだけブランディングが重視されるのか理解することはできませんが、情報社会という切り口で見れば、膨大な情報の中のほんの一部の情報が圧倒的な注目を集める傾向をみせるパレートの法則から、このアテンション・エコノミー下でのブランディングの重要性を語ることはできるはずです。おなじように、企業がオンラインマーケティングのために欲しがっているのはWeb2.0のような情報技術かもしれませんが、一般のユーザが欲しがっているのは必ずしも情報技術ではなく、むしろ、自分の役に立つ情報そのものであり、IT社会という切り口で見てしまうと、その部分をどうしても見逃しがちです。

 そして、当然ながら、ユーザは欲しい情報を必ずしもWebで手に入る必要はなく、必要な情報にたどり着けるなら、手段は問わないのがほとんどだったりするわけで、その視点に立てばWeb2.0のブームも近視眼的にそれそのものだけを視野にいれて見てしまうと、むしろ、逆になぜWeb2.0が重要なのかを見失ってしまうのではないかと思います。

 例えば、私自身、よく本を読むのですが、本の情報を入手する手段は様々で、ネット上のAmazonのサイトで探すこともあれば、他のブロガーの方の紹介記事で見て読んでみようと思うこともありますし、当然、本屋で物色することもあります。さらに付け加えるなら読んだ本そのものが他の本を紹介してくれている場合も多く、それこそWeb上のリンクをたどるように、次にはそこで紹介された本を読み始めることは少なくありません。

 重要なことは、そうした情報のリンク、ユーザ行動のリンクが「404 File Not Foundエラー」(注12)を起こさないことです。せっかくブログを読んでくれた人が、私の紹介した本に興味をもってくれ、私のブログにはってあるAmazonアフィリエイトのリンクをクリックしてくれたとしても、その本が「発送まで3週間」などと書かれていたとしたら、どんなにクリック数が多くても注文までたどり着く数は0だったりするのです。これこそ「 404 Book Not Found 」エラーです。

(注8)Ajax
Ajaxとは、Asynchronous JavaScript + XMLの略で、Webブラウザに組み込まれているJavaScriptのHTTP通信機能を使い、サーバとのあいだでXML形式のデータのやり取りを、Webページのリロードを伴わない非同期通信を行うことで対話型のWebアプリケーションを可能にする技術です。サーバとの間で非同期通信を行うことによって、ユーザーがサーバの存在を感じないシームレスなWebアプリケーションを実現する。
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(注9)マッシュアップ
Webアプリケーションの複合化、あるいは、複数のソースやコンテンツを組み合わせて、新しいWebサイトやWebサービスをつくる手法を指す。元々は複数の曲をリミックスして新しい曲を作る、HipHop系のDJ用語。
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(注10)SOAP
SOAPは、Simple Object Access Protocolの略で、非集中、分散環境におけるネットワーク上のオブジェクト間の情報を交換し合うために用いられる、単純で軽量なプロトコルの仕様。
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(注11)疎結合
疎結合とは、システムのある部分が別の部分と緩やかに接続されていることで、いつでも取り替え可能である状態となっていることを指す。一般的に疎結合で組み合わせれたシステム同士は、高いメンテナンス性や拡張性をもつ一方、パフォーマンスの面では密結合状態にくらべると劣ると言われている。
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(注12)「404 File Not Found」エラー
インターネット上で見つけることができないアドレスに対してアクセスしようとした際に表示されるエラーメッセージ。
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404 Shop Not Found

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この記事の著者

棚橋 弘季(タナハシ ヒロキ)

芝浦工業大学工学部(建築学専攻)卒。マーケティング・リサーチ、Web開発等の仕事を経て2003年より株式会社ミツエーリンクスに。現在はWebを使ったマーケティングに関する企画や自社サービスの開発に従事。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2006/07/12 21:16 https://markezine.jp/article/detail/34

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