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第106号(2024年10月号)
特集「令和時代のシニアマーケティング」

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MarkeZine Day 2020 Autumn(AD)

ARで実現する「集まれない時代」のリッチな顧客体験/1万以上の事例を熟知するスターティアラボが解説

 ゲームやエンタメの世界で活用されているイメージが強かったAR技術だが、対面でのコミュニケーションが難しいニューノーマル時代のマーケティングにおいて、真価を発揮している。9月2日に行われた「MarkeZine Day 2020 Autumn」では、クラウド型ARサービス「COCOAR(ココアル)」を提供し、1万以上のARコンテンツの活用動向を見てきたスターティアラボの小友康広氏が、ARマーケティングのトレンドと効果を解説した。

用途が広がるAR/若年層の7割が「利用経験あり」

 「『知りたい』前に『見つかる』体験を創る」をミッションに掲げ、主にWebアプリの企画開発、サービス展開を行っているスターティアラボ。取締役を務める小友康広氏は「膨大な情報が氾濫し、誰もがそれにアクセスできる時代だからこそ、テクノロジーの力で必要な情報を手に取ることができる社会を目指している」と語る。

スターティアラボ株式会社 取締役 小友康広氏
スターティアラボ株式会社 取締役 小友康広氏

 同社が特に力を入れているのが、AR(拡張現実)事業だ。100%仮想空間に没入させるVRとは違い、現実世界と仮想物体を組み合わせて表現するARの技術はスマートフォンの普及によって身近になりつつあり、5G回線の発達によってさらなる市場規模の拡大も予想されている。

 2018年に同社が行った調査によると、ARを利用者として使ったことがある人の割合は、10代・20代で7割に達していた。一方、企画者としてARに携わった経験を持つ企画職の人は3~4割に留まるそうだ。そこで小友氏は基礎知識として、ARは大きく3種類に分けられると説明した。

講演資料より。以下同
講演資料より。以下同

 まずは、カメラ越しの風景にGPSで取得した位置情報を紐付けて情報を表示するGPS型。ナビアプリや「ポケモンGO」などのゲームもこのタイプに分類される。

 次に、カメラをかざした場所に応じて、画面上に3Dの対象物を表示させる空間認識型。家具設置のシミュレーションやバーチャルライブ配信などの表現がこれに当たる。

 最後に、カメラでスキャンした画像から特定の対象物を認識し、エフェクティブな表現を行う画像認識型。カメラアプリの「SNOW」や、描いた絵が動く3D塗り絵などが代表例として挙げられる。最近は、高級時計の試着アプリでこの技術が使われ、話題になった。専用メジャーを巻いた腕をカメラにかざせば、自宅にいながら高級時計を試着することができるというものだ。スターティアラボが最も得意とするのも、この画像認識型ARだ

「ダウンロードが手間」と離脱されないための方法は?

 AR市場は拡大を続けているが、課題もまだ残っている。ユーザーにとっては、ARを体験するためにアプリをダウンロードすることが手間になり、利用前に離脱してしまうケースが多い。

 「我々はこのことを『ダウンロードネック』と呼んでいるのですが、逆に面倒な思いを乗り越えてアプリをダウンロードしてくれる熱量の高いユーザーをあぶり出すことができるともいえます。ARの企画を行う際は、リッチなコンテンツを用意してダウンロード後の期待感を醸成するとともに、ブラウザベースでARを体験できるウェブARを活用することをおすすめします」(小友氏)

 ARは企画者にとっても手間やコストがかかると敬遠されがちだが、スターティアラボはコンテンツの企画から配信管理までサポートする仕組みを整えている上、クラウド型のARサービスを提供しているため、それらを利用すれば安価かつ一気通貫でARを使った企画を実現することができる。

 スターティアラボが提供するクラウド型ARサービスの1つが「COCOAR(ココアル)」だ。動画や画像などの素材をアップロードするだけでARコンテンツの配信が可能となる。COCOARアプリのダウンロード数は270万とAR単体のアプリとしては国内最多であり、地方自治体や学校、商業施設、リテール業界など幅広い分野で利用されている。さらに、同社はアプリインストール不要のウェブAR・ブラウザAR「LESSAR(レッサー)」も展開しているため、ビジネスニーズに応じてAR体験を企画することもできる。

イトーヨーカドー、ポポラマーマの活用事例を紹介

 続いて、デモと事例を通じてCOCOARの活用方法が解説された。COCOARでは、カメラで何を写す(以下、「かざす」と表現する)とどのような効果が出るかを設定し、効果の素材となる動画や画像、3Dオブジェクトをアップロードすることで、ARの企画が手軽に完成する。

 また、管理画面でログの分析ができるのもCOCOARの特徴だ。ユーザーの男女比や年代、利用された地域などが可視化される。更に、時間や場所に応じて出現する効果の出し分けを設定することもできる。

時間に応じた出し分け:同一のユーザーが朝にアプリをかざした時はコンテンツAを出し、夕方にかざした時はコンテンツBを出す。

場所に応じた出し分け:GPSの情報を感知し、東京タワーでアプリがかざされた場合はコンテンツAを出し、富士山でかざされた場合はコンテンツBを出す。

 さらに、ある特定の画像をかざしたユーザーに対して、その画像と関連性の高い情報をプッシュ通知で届ける機能もある。これはまさに、スターティアラボの目指す「知りたい前に見つかる体験」を実現させる機能であり、開封率も高いという。

 では各企業はARをマーケティングにどのように活かしているのか。小友氏は2つの事例を紹介した。

イトーヨーカドー:ARスタンプラリーで販売促進&全国展開の手間を軽減

 同施策はコロナ禍を迎える以前に実施されたもので、ARは主に「施設への集客や回遊性の向上」「販売促進」「付加情報の提供」という3つの目的で活用された。具体的には、ハロウィンシーズンに館内を巡ってもらうためにARスタンプラリーを企画した。

 全国各地に膨大な数の店舗を持つイトーヨーカドーの場合、各店にスタンプ台を設置して店内にデコレーションを施すには相当な人手やスペースが必要となるが、ARを活用した場合、本部でARコンテンツを作成し、各店にはパネルを3つ設置するだけで完了する。

 10月1日から14日にかけて実施された第一弾では、ポスターにアプリをかざすとハロウィン仕様のオリジナルフォトフレームが出現し、キャラクターと写真撮影ができる企画を展開。その後、15日から31日までは第二弾として、ポスターにアプリをかざすと間違い探し動画やスロットが表示される、ゲーム性を持たせた企画を実施した。

 その結果、コンテンツへのアクセス数は1万を超えた。利用者のうち最も大きな割合を占めたのは30代の女性で、ファミリー層とともに若い世代の来店を促したいという狙いも達成された。

ポポラマーマ:回を重ねるごとに参加者数が増加

 レストランのポポラマーマは、オペレーションを簡素化しつつデジタルネイティブ層を取り込みたいという狙いから、創業25周年を迎えた昨年12月にキャンペーンを実施。ARを用いた3つの企画を同時に展開した。

(1)目印にアプリをかざすとオリジナルフォトフレームが表示され、そのフレームで撮影した写真をSNSに投稿するとプレゼントの抽選に参加できる
(2)毎週水曜日には、アプリで指定画像をかざすとくじ引きに挑戦できる。当たれば0円、はずれでも翌週以降に再挑戦でき、週を重ねるほど当選確率が高くなる。
(3)注文から料理が運ばれるまでの待ち時間に、テーブルに設置された25周年のロゴをアプリでかざすと、オリジナル動画が再生できる

 (2)のくじ引き企画を12月に計4回実施したところ、最終回のユニークユーザー数は初回に対して130%という結果が出た。週を重ねるごとに当選確率が上がる仕掛けやSNSでの拡散も好影響を与え、顧客に徐々に浸透していったことが見てとれる。

 「スターティアラボでは、リーチ数、ユニークユーザー数、費用対効果やPV単価などを細かく割り出して改善につなげています」と、小友氏。AR施策のPV単価は平均すると50円前後と、他のマーケティング施策と比較しても取り組みやすいと説明した。

リアルイベントの企画変更でもARが活躍!

 新型コロナウイルスの感染拡大を機に、世の中は大きく変わってしまった。これまではリアルな場で賑わいを作ることに価値があるとされていたが、今は密集を避け、十分な間隔を空けて集わなければならないが、ARはそのような要望にも応えることができる。

 たとえば屋内スポーツ施設で開催された博物展「宮城肉食恐竜展」は、コロナ禍によって大きく対応の変更を迫られた。メインの展示物に来場者が密集する事態を避けるために活用されたのが、ARだ。展示物の周囲にARパネルを設置し、アプリをかざすと恐竜の豆知識や解説動画が視聴できる仕掛けを作り、来場者がそれぞれの端末でAR体験を得てもらうことで、ソーシャルディスタンスを保ちつつリッチなコンテンツを提供することに成功した。

 リアルでのイベントをオンラインに切り替えるにあたって、ARを活用した例もある。ナカジマコーポレーションが展開する「かえるのピクルス」というキャラクターがその一つだ。「キャラクターがファンに会いにいく」コンセプトのもと、アプリを使って自宅にいながらキャラクターと写真撮影できる企画を展開したところ、ファンの満足度は高く、ARコンテンツからオンラインショップやYouTubeチャンネルへ誘導を図ったところ、チャンネル登録者数が伸長するなどの成果が得られた。

 小友氏はこれらの事例を踏まえ「オフラインでしか実現できないと思われているものをオンラインで実現させる時に、ARは有効」と強調。あわせてこれまでの導入企業の一例も紹介した。

 スターティアラボは、AR技術の提供だけでなく、世の中のARトレンドを集約したオウンドメディア「ARGO」を運営している。ARを活用したマーケティング事例も豊富に掲載されているため、企画を考えている担当者は必見だ。

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この記事の著者

渡辺 佳奈(編集部)(ワタナベ カナ)

1991年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部を2013年に卒業後、翔泳社に新卒として入社。約5年間、Webメディアの広告営業に従事したのち退職。故郷である神戸に戻り、コーヒーショップで働く傍らライターとして活動。2021年に翔泳社へ再入社し、MarkeZine編集部に所属。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2020/10/01 10:00 https://markezine.jp/article/detail/34346