本音を聞き出せる向き合い方と3つのアプローチ
次にインタビュー調査との向き合い方として、ポイントが3つあると浦野氏は話す。
1.消費者の体験を明らかにする
2.相手の興味や関心に寄り添う
3.インタビューは複数回行う
相手に直接的な回答を求めるのではなく、商品の周辺情報を聞き出して消費者の体験を明らかにすることを意識すると良いと言う。簡単に答えられる質問を投げかけ、返答を深掘りしていくイメージだ。
「インサイトを見つける上では、無理に『考えさせる』ような質問をせず、簡単に答えられる質問をするのが有効です。相手の回答に応じて次の質問を考え、事前のメモをつくりこみすぎないこともポイントの一つです。
1テーマにつき5~10人程度に一人ずつインタビューし、考察した結果と社内のアイデアを反復しながらインサイトを明らかにしていくのが理想的です」(浦野氏)
インタビューのアプローチタイプも、「ポジティブ型」「ネガティブ型」「未充足型」の3つに分類されると言う。
ポジティブ型は先行品や競合に対し、「商品を買った・選んだ理由」など肯定的な感情から情報を探り、ネガティブ型では反対に、「購買をやめた・乗り換えた理由」など否定的な感情を聞く。未充足型は、先行品や競合をある程度評価するものの、まだ不十分という感情から探っていく方法だ。「満足度を高める要素」や「新たなアクションを行う可能性」を聞いていく。
どのタイプを用いるかは絞らなくてもいいが、優先順位は決めておく方が良いと浦野氏は語る。特に慣れていない場合は、消費者の本音が表れやすい“文句”が聞き出せるネガティブ型がお薦めだと言う。
リアルなインサイトを構成する4要素
次に浦野氏が語ったのは、答えをインサイトとして組み立てやすい質問の立て方だ。インタビューで聞くべきインサイトは「感情」「要因」「場面」「背景」で構成されると言う。
「一言で表すと、それはどのような気持ちでしょうか?」という質問から「感情」を聞き出し、他の3要素はそれに基づいて聞き出していく。「その『感情』が生まれるきっかけは何か?(要因)」、「その『感情』が生まれた情景、シーンは?(場面)」、「その『感情』がポジティブ、ネガティブ、未充足のいずれである理由は何か?(背景)」といった具合だ。
要素を整理したあとは、いよいよキーとなるインサイトの整理に入っていく。整理する際には次のように一文でまとめるのが有効だと言う。
【ターゲット】は【場面】なとき、【要因】によって【感情】な気分にさせられる。なぜなら【背景】だから。
まとめてみて違和感があれば、それはそれぞれの要素につながりが持たせられていないということだ。違和感ない形にすることで、生活に即したリアルなインサイトとして整理できると浦野氏は述べる。
「なぜ?」を知りたければ「なぜ?」と聞かない
インタビュー調査を行う上で重要だが、なかなか引き出すのが難しい「なぜ?」を上手に聞き出すためのインタビューテクニックについても紹介された。
ひとつは、「なぜ?」を知りたければ「なぜ?」と聞かないこと。
「なぜ?」「なんで?」には攻撃的なニュアンスが含まれるためなるべく避け、「なぜその商品を購入したのか?」ではなく、その商品を購入した『理由』や、もう一歩踏み込んで話を聞き出したいなら、その商品を購入した『決め手』に言い換えることがコツになる。
他にも「5W1Hを活用」、「明確」にする、「詳細説明」を求める、「比較」するといったテクニックを使って掘り下げていくことで、潜在的価値を明らかにしていけると言う。