広告プロダクトの多様化が課題を生んでいた
MarkeZine編集部(以下、MZ):今回プレミアム広告とYDNをディスプレイ広告へと刷新されていますが、その背景を教えてください。
矢吹:一番大きな背景は、デジタルマーケティングに対する広告主のニーズが変わり、それに伴いヤフーの広告プロダクトの整理が求められてきたことです。
これまで我々は認知から興味・関心、比較・検討、獲得までをすべて網羅すべく、YDNやプレミアム広告、Yahoo!プレミアムDSP、Yahoo!コンテンツディスカバリーなどの広告プロダクトを提供してきました。
しかしながら各プロダクトで広告管理ツールの操作方法も違い、レポートも個別で出す必要があることから、広告運用担当の皆さまに負担をおかけしていました。また、データもサイロ化して個別最適が進むという課題も浮き彫りになってきました。
矢吹:そこで我々は広告プロダクトを整理し、予約型と運用型の2つに集約しました。加えて、広告運用管理ツールやレポートも統合することによって、認知から獲得までをワンストップでシンプルに提供することを目指しました。
配信から効果計測までをワンストップに
MZ:これまでばらばらになっていたデータが1つになるのは、広告運用者にとって大きなメリットだと思います。広告管理ツールやレポートが集約されたことで、どのような変化が起きるのでしょうか。
矢吹:3つ変化したポイントがあります。1つ目は先ほどの話と重複しますが、広告プロダクトのワンストップ化です。現在広告管理ツールの統廃合を進めており、2021年5月頃には、プレミアム広告も統合されます。これによりブランディングからダイレクトレスポンスまでを一気通貫で支援できます。
また、ワンストップになるのは配信システムだけではありません。レポートも横断的に行えるようになります。たとえば、横断リーチレポートと呼ばれるものを提供し、様々なキャンペーンがどういった方にリーチしているのかを分析し、リーチの重なりやアドオンを明らかにします。
その他にも、ラストクリック以外の広告効果をアトリビューション分析によって測定できる、コンバージョン経路レポートの提供も開始しました。
直感的な広告運用が可能に
MZ:2つ目の変化について教えてください。
矢吹:2つ目は、広告管理ツールのリニューアルです。視認性と操作性を改善し、直感的な運用と配信結果の見える化を実現しました。
MZ:具体的にはどのような改善を?
矢吹:まず、運用に関しては入稿までのステップをこれまでより簡素にしました。直感的でスムーズなUIに変更できたと考えております。
矢吹:配信結果の見える化に関しては、グラフですぐに配信結果のコンディションがわかるようにしました。開発基盤やスタイルも大きく変更したことで、広告運用者のフィードバックを受けてすぐ改善できるような開発体制も組んでいます。今後より使いやすいものになっていくはずです。
配信アルゴリズムの刷新で、目的別の配信最適化を実現
MZ:3つ目の変化のポイントはなんでしょうか。
矢吹:ここが一番大きな変化だと思いますが、配信アルゴリズムの刷新です。これにより、広告運用担当者は、キャンペーンの目的を選ぶだけで広告効果を最大化できる配信が可能になりました。
これまでは、目的をもとに最適な広告プロダクトを選択いただいていましたが、新広告管理ツールの提供とともに、運用型には「キャンペーン目的」という項目を新設しました。コンバージョンやサイト誘導、動画再生や認知など、6つの目的から最適なものを選択いただくだけで、その目的を最大化できるよう配信が行われます。
MZ:これまでは、目的に合わせてどの面や誰に出すのかを考えていたのが、目的さえ定めればそれに合わせて配信が最適化されるということですか。
矢吹:そうですね。たとえば、コンバージョンを目的とした場合は、決められた予算の中でコンバージョン数を最大化するアルゴリズムが、配信のプランニングを行います。また、これまではキャンペーンの予算設定は任意でしたが、いただいた予算に合わせて成果の最大化をコミットできるアルゴリズムになったため、運用型では予算設定が必須となっています。
MZ:目的だけ選べば、そこに向けて最適な配信が行われるのは運用の手間が少なくなっていいですね。
CTVR+16%、CPA-19%を実現
MZ:YDNから運用型への変換が進むことによって、広告主のパフォーマンスにどのような変化がありましたか。
矢吹:我々が行った調査では、運用型に変換した広告主のCTVR(コンバージョン数を最大化しているかの指標、CTR×CVRで算出)は平均16%増加し、CPAは19%削減しました。コンバージョン数を最大化しながら、1件当たりの獲得コストを下げることに成功しています。
矢吹:また、広告管理ツールの刷新はもちろんですが、自動入札の利用も増加しており、2020年3月と8月を比較して約1.6倍まで増えています。
MZ:それだけ自動入札のパフォーマンスが向上しているということですね。
矢吹:これまでも自動入札機能は提供していましたが、広告主や代理店の方には、まだ手動運用のほうが効率的だという印象が広告主や広告代理店の方にあったのだと思います。しかし、目的別にコミットした自動最適化を実現したことで、利用率も増加しパフォーマンスも大きく改善しました。
YDNから運用型に変換する際のポイントは?
MZ:まだ運用型への変換が済んでいないという読者の方もいると思いますので、変換時に見直したいポイントがあれば教えてください。
矢吹:運用型に切り替える際におすすめしているのが、アカウントの見直しとアップグレードによる移行です。
元々のアカウントの入稿物やキャンペーンを一度コピーして、新たなアカウントに移行することもできるのですが、そうするとこれまでの学習(YDNの配信実績)が引き継げなくなってしまいます。そのため、元々あるアカウントを見直してアップグレードした形で移行を進めるのが、アルゴリズムの最適化を早めるためには重要です。
MZ:アカウントを見直す際は、どのようなことを意識すべきなのでしょうか。
矢吹:キャンペーン構造をKPI別でシンプルにすることですね。KPIが同じなのにキャンペーンが別で立てられていると、学習効率が落ちてしまうので。
2021年5月頃にはYDNが終了
MZ:現在もプラットフォームの統廃合を進めている最中かと思いますが、今後はどのようなスケジュールを予定しているのでしょうか。
矢吹:2020年11月25日にYDNの旧広告管理ツールでの新規キャンペーンの作成を停止し、2021年4月には新規広告グループ・広告の作成を停止する予定です。また、YDNも2021年5月頃を目安に提供終了を予定しています。2021年4月には予約型の正式配信が始まる予定です。
MZ:ありがとうございます。では最後に、今後の展望をお聞かせください。
矢吹:現在、今後の展望を3つ考えています。1つ目は、データの利活用の強化です。ヤフーは様々なサービスを提供しておりますが、まだまだデータを使いきれていません。プライバシーに配慮しながら、我々の保有するデータを広告最適化のシグナルとして活用し、配信の性能改善を進めたいです。
2つ目は、自動配信の強化です。現状は入札部分が自動化されているのみなので、今後はクリエイティブやターゲティングの自動化もサポートしていきたいです。また、自動入札に関しては、現在は目標CPAを設定いただいてそこに向けて最適化するようになっていますが、いずれは目標CPAを設定せずともコンバージョン数が最大化する自動入札を実現したいと考えています。
3つ目は、新たなソリューションの横展開です。新広告管理ツールは今後ディスプレイ広告を配信するための基盤です。この基盤を軸にして新たなソリューションも用意したいと考えています。
たとえば新サービスとして、一部の広告主様に対し、Yahoo!ショッピング内に広告枠を設けて、ストア様やメーカー様の商品が訴求できる機能を提供しています。
これからも新しくなったプラットフォームを通して、新たな価値やソリューションをお届けして参ります。
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※1 YDNと運用型の配信比較方法について
グラフの出典:ヤフー調べ
計測期間:静止画の2020/7/1~2020/07/31の実績と、前年同期(2019/7/1-2019/7/31)の実績を比較
計測対象:2020/7/1~2020/7/31において、75%以上の予算が移行完了し、
かつ2019/7/1~2019/7/31にも実績が発生しているアカウント
(極端にコンバージョン数の多い1アカウントを除く)
・すべての出稿に対して、効果を保証するものではありません。より良い掲載結果を得るためには、
コンバージョンタグの設置、コンバージョンデータの蓄積、アカウント構造をシンプルにして
データ分散を防ぐなどの工夫も必要です。
・CTVR:広告の表示回数(インプレッション)に対して、成果(コンバージョン)が発生した割合です。
クリック率(CTR)×コンバージョン率(CVR)で算出します。
・CPA:1コンバージョンあたりの獲得単価です。コストをコンバージョン数で割って算出します。