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【後編】今後のマーケティングに役立つユーザー・イノベーションとは?【花王廣澤氏×博報堂岡田氏対談】

2020/11/10 09:00

 花王のマーケター・廣澤祐氏が、業界で活躍しているキーパーソンと対談する本連載。今回は博報堂に所属しながら博士課程でユーザー・イノベーションについて研究する岡田庄生氏をゲストに迎え、これからのマーケティングに役立つユーザー・イノベーションとは何か解説してもらった。

目次

顧客起点でアイデアを膨らます、ユーザー・イノベーションとは

廣澤:前編では岡田さんとこれからのインプット・アウトプットについて考えましたが、今回は岡田さんの専門分野であるユーザー・イノベーションについてお聞きします。まず、ユーザー・イノベーションとは何か教えてください。

花王株式会社 コンシューマープロダクツ事業部門 キュレル事業部 廣澤 祐氏

岡田:ユーザー・イノベーションとは、その名の通りユーザーから生まれるイノベーションのことです。お客様と共創しながら商品開発、マーケティングを行う企業が増えており、研究でも実務でも注目されている分野です。専門的な知識・スキルを持つお客様にアイデアを聞いて商品開発を行ったり、企業が複数の商品パターンを用意して「どれがいいですか」と聞いたり、アイデアコンテストを実施したりと、パターンは様々です。

株式会社博報堂 ブランド・イノベーションデザイン局
イノベーションプラニングディレクター 岡田 庄生氏

岡田:他にも、ユーザーが商品開発に関わっている事実をプロモーションに活用するのもユーザー・イノベーション研究の対象に含まれます。たとえば、「東大生が考えたノート」と聞くとなぜか欲しくなりますよね。メーカーのほうがノートの商品開発に関してはプロのはずですが、勉強に多くのノートを使ってきた東大生の意見が入ったノートのほうが欲しくなってしまうのです。

廣澤:つまり、ユーザー・イノベーションは、企業が主語となり生活者に商品開発やマーケティングに参加してもらうもの、という理解であっているのでしょうか。

岡田:学術的な定義で見ると少し違います。1970年代後半から「ユーザーがイノベーションを起こすこともあるのでは?」ということに着目した研究が行われるようになり、これがユーザー・イノベーションの始まりです。

 そのため、ユーザー・イノベーションは本来ユーザー発で起こります。たとえば、マウンテンバイクも最初に作ったのは自転車メーカーではなく、カリフォルニアの若者たちが山を下るために自転車のタイヤやサスペンションを改造していたことに目を付けたメーカーが量産し、マウンテンバイクという市場ができたと言われています。

 そのような事象の研究から始まり、徐々に企業から出てこないアイデア・スキルを持ったユーザーがいるなら、その人たちをマーケティングに巻き込むためにユーザー・イノベーションの手法が活用されるようになりました。

ユーザー・イノベーションが持つ2つの特徴

廣澤:あくまで、ユーザーのリアクション、インタラクションを前提にマーケティング、商品開発を行うということですね。

岡田:ユーザー・イノベーションには大きな特徴が2つあって、1つはイノベーションを起こすユーザーは自分が使えれば満足で、あまり儲ける気がないということです。

 もう1つは、作ったアイデアを周りに広く公開するということです。普通、企業が新しいアイデア・商品を見つけたら知的財産権で囲って他の企業が利用できないようにしますが、ユーザーは喜んで周りの人に広げます。そのため、ユーザー・イノベーションを企業が上手に活用できれば、低コストでイノベーションを生み出すことができます。

廣澤:ちなみに、ユーザーがそうした企業との活動に参加するモチベーションってなんでしょうか。

岡田:今ある研究でわかっているのは、ユーザーの大きなモチベーションとなっているのは楽しさだということです。企業の担当者は、賞金やポイントなどのインセンティブでアイデアが増えると考えてしまいがちですが、どちらかと言えば発想する楽しさやスキルアップといったモチベーションが強めです。ユーザー・イノベーションの特徴にもあるように、自分が欲しくてやっているので、そこから得られる利益はそこまで気にしていません。

 ただし、楽しいだけではダメなこともわかっています。実は不満もユーザー・イノベーションを引き起こすための重要な要素です。ユーザー・イノベーションを起こす人は、単純に何かを作る・生み出すのが楽しいだけではなく、自分の中にある不満をもとにアイデアを考える傾向があります。

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