SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

おすすめのイベント

おすすめの講座

おすすめのウェビナー

マーケティングは“経営ごと” に。業界キーパーソンへの独自取材、注目テーマやトレンドを解説する特集など、オリジナルの最新マーケティング情報を毎月お届け。

『MarkeZine』(雑誌)

第100号(2024年4月号)
特集「24社に聞く、経営構想におけるマーケティング」

MarkeZineプレミアム for チーム/チーム プラス 加入の方は、誌面がウェブでも読めます

マーケティング全体最適を実現する「マーケティング・ミックス・プラットフォーム」(AD)

「クリエイティブはデータサイエンスで進化する」サイカ平尾氏×元シンガタ松田氏が語る、テレビCMの未来

 オンライン広告・オフライン広告の統合分析ツール「マゼラン」で知られるサイカは、2020年9月に「XICA ADVA」を発表し、そのサービスラインアップの一部として成果報酬型テレビCM出稿サービスの提供を開始した。そして12月16日には、脳波解析データなどを用いて定量的にクリエイティブの効果測定から制作までを行う「ADVA CREATOR」を提供開始。そのアドバイザーに、クリエイティブ・ブティック「シンガタ」創設者の一人、松田康利氏が就任した。一連のリリースの狙い、「ADVA CREATOR」で進化するテレビCMの可能性について、サイカ代表・平尾喜昭氏と松田氏に聞いた。

テレビCMは、過小評価されている

――これまでサイカはオンオフ統合分析ツール「マゼラン」を提供する企業として知られてきましたが、9月の「XICA ADVA(サイカ アドバ)」の発表と同時に「ADVA PLANNER」「ADVA BUYER」を提供開始して成果報酬型のテレビCM出稿サービスに進出。12月には「ADVA CREATOR(アドバ クリエイター)」をリリースしました。この一連のリリースには、どのような狙いがあるのでしょうか。

平尾:一連の新サービスリリースの背景には、テレビ広告市場の活性化という目的があります。サイカはこれまで「ADVA MAGELLAN(アドバ マゼラン)」(9月にXICA magellanから名称変更)の統計を用いた分析で、広告主の皆様に最適なメディアプランニングとアロケーションの支援をしてきました。しかし、マゼランで120社を超える企業のオンライン広告・オフライン広告の統合的なマーケティング最適化に携わらせていただいた中で、数ある広告媒体の中でも、テレビCMへの投資に対する企業の課題が深いことを痛感しました。

 マーケターの方々からは「テレビの効果を感じているが、オンライン広告のようにPDCAが回せない」という悩みを聞くことも多いです。またテレビCMはグロス金額が大きい分、広告費が高い印象が根強いのです。動画の配信単価と比べても適切な視聴単価であるのに、テレビが過小評価されてしまっていると感じています。

株式会社サイカ 代表取締役 平尾 喜昭氏/2012年慶應義塾大学総合政策学部卒業。父親が勤める会社が倒産したことを原体験として、大学在学中に出会った統計分析から経営支援の可能性を見出し、2012年2月に株式会社サイカを創業。統計学と経済学をベースに、これまで数多くの大手クライアントでマーケティング精度向上のコンサルティングを行ってきた。その知見を基に、サイカの各種ツール開発におけるプロダクトオーナーを歴任。
株式会社サイカ 代表取締役 平尾 喜昭氏
2012年慶應義塾大学総合政策学部卒業。父親が勤める会社が倒産したことを原体験として、大学在学中に出会った統計分析から経営支援の可能性を見出し、2012年2月に株式会社サイカを創業。統計学と経済学をベースに、これまで数多くの大手クライアントでマーケティング精度向上のコンサルティングを行ってきた。その知見を基に、サイカの各種ツール開発におけるプロダクトオーナーを歴任。

――テレビの効果が肌感覚止まりで、事業成果に対するインパクトが可視化されず、PDCAが回せていないんですね。

平尾:そうなんです。XICA ADVAのサービスラインアップで、データサイエンスに基づいてPDCAを回せるようにしたいと考えています。具体的には、「P(Plan)」がテレビCMに特化したプランニングを行う「ADVA PLANNER(アドバ プランナー)」と、今回リリースしたクリエイティブ分析のADVA CREATOR。そして「C(Check)」がADVA MAGELLAN、「A(Action)」を「ADVA BUYER(アドバ バイヤー)」が担います。

ADVAサービスラインアップ
ADVAサービスラインアップ

クリエイティブにおける“データ活用”の重要性

――松田さんはどういった経緯でADVA CREATORのアドバイザーに就任されたのでしょうか?

松田:平尾さんから直接お声がけいただいたのですが、はじめにお声がけいただいたときは、正直言って「クリエイティブの分析って、ほんまかいな」と思いましたね(笑)。でも、クリエイティブは感性だけでなく、データも重視するべきという考えには同感でした。

 ターゲットや訴求メッセージが絞られていないテレビCMは、視聴者が何に心を動かされるのか? が曖昧で「おもしろいけれど、なんの商品だっけ?」となりやすい。そういったテレビCMは、事業にとってプラスになりません。そのため、調査などを行い、定量的なデータも用いてクリエイティブの方向性を決める必要があると考えています。

 しかしこれらを継続的に、汎用性を持たせながらデータで説明することは難しく、クリエイターや制作サイドにとっては長年の課題でした。そこを、ADVA CREATORがテクノロジーで解決してくれるとあって、「ならば私が一肌脱ごう」とアドバイザーを引き受けたんです。

株式会社松田康利事務所 代表取締役 松田康利氏/電通で営業・経営企画などを経験し、その後にクリエイティブ・ブティックのシンガタで営業兼アカウントプランナー。2012年に独立してコミュニケーション・プランナーやコンサルタントに従事。広告主側コンサルティングの経験多数。
株式会社松田康利事務所 代表取締役 松田康利氏
電通で営業・経営企画などを経験した後、クリエイティブ・ブティックのシンガタで営業兼アカウントプランナーを務める。2012年に独立してコミュニケーション・プランナーやコンサルタントに従事。広告主側コンサルティングの経験多数。

――クリエイティブ領域の専門家として、XICA ADVAが目指す世界観をどのように捉えていますか。

松田:広告会社やクリエイターにとって、大きなチャンスだと感じています。今、テレビだけでなく、新聞・雑誌、ラジオも交通もデジタルも、単純な物量作戦だけじゃなくて、データで正しい価値が計れる世界になろうとしています。

 媒体特性や事業への貢献が可視化されることで、それぞれの個性を活かしたキャンペーンやクリエイティブが作りやすくなると思います。「コストを押さえよう」ではなく、「こういうプランニングで、こんなクリエイティブの効果が高いですよ」といった提案ができると、日本の経済にも明るい日差しがさしてくるんじゃないかな。そのくらい、ADVA CREATORやサイカのビジョンに期待しています。

脳波測定データを用いてクリエイティブを分析するADVA CREATOR

――ADVA CREATORではどのようにクリエイティブを分析するのでしょうか?

平尾:ADVA CREATORは、脳波解析データなどを用いて定量的にクリエイティブの効果測定から制作までを行います。具体的には、クリエイティブへの注目度や感情の起伏を脳波解析によりデータ化し、脳波データとアンケートによる定性調査データを変数として分析を行うことで、クリエイティブの効果を定量的に可視化します。その上で、分析結果から特定したクリエイティブの改善点を反映してクリエイティブの制作を行います。

ADVAサービスラインアップADVA CREATORの概要図(分析イメージ)
ADVA CREATORの概要図(分析イメージ)

平尾:たとえば、あるブランドのテレビCMに対する脳波測定データとアンケートデータに対する分析から「CM終盤で感情の起伏が大きくなる脳波の波形が描けると、製品の購買意欲が高まる」という結果が見えたとします。その上で、そうした脳波の波形が描かれるクリエイティブの要素を分析し、「知っているタレントが出ていると、終盤に向けて感情の起伏が大きくなる脳波を描く」という傾向が見えたとします。すると、「このブランドのテレビCMでは、新人よりも認知度の高いタレントのキャスティングを優先しよう」といった判断ができるのです。

 クリエイティブは広告の価値を最大化する重要なファクターですが、従来その評価がデータ化できず、再現性の高いクリエイティブ制作ができない状態がありました。ADVA CREATORを使えばテレビCMクリエイティブの効果が可視化されるため、このように再現性の高いクリエイティブ制作が可能になるのです。

 アメリカが先行していますが、グローバルで考えても、クリエイティブの定量評価は止められない流れです。クリエイティブのこれまで可視化されていなかった面が、データサイエンスによって可視化できるようになります。サイカは、この領域の先駆けになりたいと考えています。

クリエイティブ成果のデータ化が、クリエイターの活躍を支援する

――クリエイティブの効果がデータ化されることで、広告主も判断がしやすくなりますね。

松田:その通りです。もちろんアカウントプランナーやクリエイター達は、これまでも右脳的な感覚の話を左脳的な説得材料に変え、広告主へ説明するよう心がけていたでしょう。しかし広告主には、「本当に大丈夫だろうか」といった不安が、どうしてもつきまとうものです。

 そこにADVA CREATORがあれば、「このクリエイティブが適していますよ」とデータを持って説明できますし、それによって宣伝部も判断がしやすくなります。個人的には「良いクリエイティブが通る確率がすごく高まるだろう」と、ワクワクしています。

平尾:松田さんがおっしゃるように、ADVA CREATORはクリエイターの可能性を狭めるのではなく、広げるためのものです。「最低限この要素を満たせば事業成果が出る」とわかっていれば、クリエイターはむしろ自由に、クリエイティビティを発揮できるのではないでしょうか。

 そこで、広告業界を知り尽くしている松田さんのお力添えをいただいて、ADVA CREATORによる分析から、クリエイティブ制作のオペレーションまでを整えたいと考えています。広告主もクリエイターも、みんながハッピーになる座組を作りたいのです。

「ブランディング広告は事業貢献になる」が明らかに

――ADVA CREATORの分析データは、どのような活用ができますか。

平尾:ADVA CREATORを参考に、クリエイティブの構成を考えることができます。たとえば、ビールのテレビCMを制作するとき、飲食のシーンやビールを注ぐシーンなど、どのようなシーンの割合を増やすべきなのかを判断できるんです。

松田:また、キャスティングの参考にもなります。タレントの認知度と注目度はおおよそ比例しますし、企業や商品のブランドイメージの向上にも効果はあります。しかし、「誰が良いか」の明確なデータがあるわけではないんです。特に、初めてテレビCMを出稿される広告主はキャスティングに迷われることが多いので、ADVA CREATORが役に立つのではないでしょうか。

平尾:将来的には、事業成果につながるテレビCM女王が見つかるかもしれませんね(笑)。

 一方で、事業貢献を意識した結果、販促目的のクリエイティブが増えるのではないか? という懸念も出てくるかと思います。実は、これまでのADVA MAGELLANの分析から、ブランディングや企業広報のテレビCMは、中長期的に事業へ貢献することがわかっています。このような広告は、今まで事業貢献との紐付けができず、カットされやすい立場でもありました。しかし、継続実施することが重要だとわかれば、むしろブランディングを目的としたクリエイティブを戦略的に作っていく流れになると考えています。

松田:企業広報的なテレビCMやブランディングのためのテレビCMは、ある程度余裕のある企業しかなかなかできませんでした。でもADVA CREATORを使えば、ブランディングの重要性を広告主に提案できますし、検証も含め、本当に腰を据えたブランディングができます。広告主にとっても、こんなにいい話はないと思います。

広告業界の新しい一歩を後押しし、ポジティブな世界を作りたい

――最後に、今後の展望をお話しください。

松田:広告とは、人の心を揺さぶる経済活動です。「広告は右脳だけ、左脳だけではできない。理論と芸術の融合」と電通の吉田秀雄さんも仰っていましたが、その本質にデータで迫る時代が訪れています。

 自分たちが制作したクリエイティブの成果がデータ化されるとなると、「“売れるCMを!”と追い詰められるんじゃないか」と思うクリエイターは、いるでしょう。でも、その分析結果が次のクリエイティブに活かせるのならば、チャレンジはメリットになる。そして先ほどお話があったように、ブランド広告が大事であることが、きちんとデータで示せるわけです。その普及活動には、是非私もお手伝いできればと思っています。

 そして広告業界そのものが、また熱さを取り戻し、元気になってくれたらいいなと考えています。サイカやADVA CREATORのおもしろさや可能性に賛同して、一緒に事業を作ってくれるクリエイターをどんどん増やしていきたいですね。

平尾:コロナ禍で、マーケターはさらなる難題に立ち向かっています。目の前の売り上げだけではなく、自分たちの価値観やビジョンも発信しなければなりません。だからこそ、よりシビアに広告を科学することが求められています

 でも、その危機感が新しい一歩を踏み出せる理由にもなると思うんですね。サイカは、その一歩の後押しをしたい。ADVA CREATORをきっかけに、数字で広告を評価し、PDCAを回す世界を、松田さんやマーケター、クリエイターと一緒に作っていきたいと思います。

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • Twitter
  • Pocket
  • note
関連リンク
この記事の著者

マチコマキ(マチコマキ)

広告営業&WEBディレクター出身のビジネスライター。専門は、BtoBプロダクトの導入事例や、広告、デジタルマーケティング。オウンドメディア編集長業務、コンテンツマーケティング支援やUXライティングなど、文章にまつわる仕事に幅広く関わる。ポートフォリオはこちらをご参考ください。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2021/01/08 10:00 https://markezine.jp/article/detail/34997