「これ美味しいよ」と人に教えたくなる雰囲気を作る
山下:コロナ禍での変化として、これまであまり力を入れていなかったSNSに注力しはじめたことも挙げられます。店舗で購入してくださるお客様の傾向として、口コミで新たなお客様を連れてきてくださることはあるものの、SNSにアップする行動は限定的でした。
というのも、「カカオ豆の産地のことをしっかり書かないといけない」「チョコレートの作り方を伝えなければ」といったように、構えてしまうお客様が多かったようなのです。お客様にブランドとしてのこだわりを愛していただけるのはとても嬉しいことでしたが、私たちのほうから「難しく考えず、『美味しい』って言っていただけたらOKです」と伝えるようにしたことで、UGCの数が非常に増えました。
西井:確かに、難しいことを依頼してもなかなか拡散してもらえないですよね。いかに簡単で、人に言いたくなるコンテンツを作っていくかが大切だと思います。SNS施策のKPIにはどのような指標を置いているのでしょうか。
山下:フォロワー数を追っています。現状、Instagramでは2万人ほどのフォロワーがいますが、フォロワーの属性を分析したところ、他のチョコレートブランドとはタイプが異なることがわかっています。
西井:ブランドの差別化が図れている証拠ですね。
山下:昨年はSNS限定の「スイーツチャレンジ」という企画も実施しました。これは、3,500円のスイーツを月替りで限定300セット販売するというものです。始めた当初は、売り切れるまでに3日かかっていましたが、最終回に近づく頃には、販売開始からリピーターさんが待ち構えていて、30分ほどで売り切れる状態でしたね。

D2Cのマーケティングには“余白と曖昧さ”が必要
山下:最近気がついたことですが、D2Cのマーケティングにおいては、ファジーな余白を空けておいて、お客様をブランド側に引き寄せることが大事なのではないかと思います。
「スイーツチャレンジ」が30分で売り切れるようになったのは、お客様がSNS上で「これ良かったよ」と、ご自身のストーリーとともに広げてくれているからだと思います。お客様を巻き込んで、一緒にブランドを作っていくことが大切です。
西井:ブランドの初期段階に購入してくれるイノベーターの周りにいる人たちが、アーリーアダプターになるんですよね。ですから、お客様の周りにいる同じ価値観の友達2~3人の中に「このブランドいいね!」という人が出てくると、一気に浸透が進んでいく。そういうことが大事なのだと思います。最後に今後の展望について教えてください。
山下:デジタルとリアルでシームレスに顧客体験を設計していきたいです。店舗は体験の場、ブランドの世界観を伝える場として大切にしながら、ECで商品を売るための量産体制や物流、在庫管理の仕組みをしっかりと構築したいと考えています。
西井:ありがとうございました。
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第1回:「きゃーっ♡しているか」が判断基準、LPは通過点でなく体験の入り口/MEDULLAに学ぶD2Cらしさ
第2回:ファストファッションの成功体験を捨てD2Cにシフト「セールをしない、トレンドも追わない」覚悟の理由