対面とEメールの間を埋める手段として
――本日は日本ダイレクトメール協会の椎名さん、日本郵便の松本さんにお話をうかがいます。最近、企業のDM活用の現状・生活者のDM閲読状況に関して調査を実施したそうですね。まず、企業がどのような目的でDMを活用しているかお教えいただけますか?
松本:当社では2020年11月に、DMを実施している企業を対象に「DM実態調査」を行いました。企業がDMを実施する目的として最も多かったのが「継続的に商品・サービスを利用してもらうため」で約50.8%、続いて「優良顧客にアプローチするため」が39.8%です。CRMの要素が強く、特定のセグメントされたユーザーとの関係構築を目的としている企業が多いのが特徴的です。
【日本郵便「DM実態調査」 調査概要】
調査方法:インターネットリサーチ
調査時期:2020年11月
調査地域:全国
対象者条件:男女15~69歳 かつ 郵便ダイレクトメール関与者
松本:なぜDMを活用したのかについては、「セグメントしたユーザーに送付できる」「多くの情報を提供できる」「行動を喚起できる」といった内容が多いですね。情報を届けたいユーザーに、しっかりと届けられる点にメリットを感じていただいているようです。
また、EメールやSNSでは伝えきれない温かみ、丁寧さなどを伝える手段と考えている企業も増えています。対面とEメールの間を埋める手段とも言えるかもしれません。
――DMのもつ強みが見えてきて興味深いですね。DMの受け取り手である生活者側の動向も気になります。
椎名:生活者への調査は当協会が手掛けています。2020年12月、「DMメディア実態調査2020」を行い、手元に届いたDMの開封率や読了状況、読後の行動変容などを2週間に渡って調査しました。この調査は8年間毎年続けてきたもので、DMの効果をファクトとして記録し、データを蓄積することを目的としています。
【日本ダイレクトメール協会「DMメディア実態調査2020」 調査概要】
調査方法:インターネットリサーチ
調査対象:男女20~59歳
調査地域:関東エリア 1都6県(東京、神奈川、千葉、埼玉、茨城、栃木、群馬)
2020年版ではまず、新型コロナウイルスによる生活者の意識変容を調べました。その結果、7割の人が「ショッピングやイベントなどには行きたいが、多くの人が集まりそうなところは避けたい」と回答。次いで45%の人が「物を買う時には店舗や百貨店よりも通販やネットショッピングを利用することが多くなった」と答えました。
また、コロナ禍の1年を過ごしてみて「仕事や付き合いで、ネット経由のコミュニケーションでは不十分だと感じる」と思った方も多いようです。
松本:企業側も店舗型ビジネスを展開している企業では、コロナ禍で通販型のビジネスにシフトしはじめるなど、動きをみせていましたね。
DMはどの程度開封される?Eメールとの比較
――では、生活者側のDM受け取り状況について教えてください。
椎名:1週間のDM受け取り平均件数は7.0通で、ほぼ例年通りでした。各メディアの閲読状況も聞いているのですが、全体回答としてDMでもっとも多かったのは、「ほとんど開封して目を通す」で52%でした。一方、Eメール・メルマガについては「タイトルを見て読むかどうか決める」が、最多の42%でした。特に、既婚子供ありの層は、DMについて「ほとんど開封して目を通す」割合が高く、逆にEメール・メルマガでは「ほとんど開封せずに削除する」がやや多いという結果でした。
椎名:また、知らない企業・団体からのDMはなかなか開封されません。利用・購入経験のある企業・団体からのDM受け取り意向は76.5%ですが、取引のない会社からのDMについては20.5%。閲読意向に3倍以上の開きが出ていたのです。個人情報の取り扱いに対する警戒感がうかがえます。