2024年で第38回を迎える全日本DM大賞(以下、DM大賞)。MarkeZineではこれまで様々なDM活用の事例が紹介されてきた。今回は、企業が効果の高いDM施策を設計するための方法や、近年のDMのトレンドなどについて、日本のマーケティング研究の第一人者で、DM大賞において審査委員長を務める早稲田大学 商学学術院教授の恩藏氏に話をうかがった。
DMの強みはセグメントのしやすさ
MarkeZine編集部(以下、MZ):マーケティング戦略におけるDM施策の役割や価値についてどのようにお考えでしょうか。
恩藏:DMの一番の強みはセグメントがしやすいことだと私は考えています。販促を行う際、ポテンシャルが高い人などにターゲットを絞って施策を行う上で最も効果的なツールの一つです。
デジタルでもセグメントはもちろん可能ですが、我々が2017年に実施した研究では、同じ内容を紙とデジタルで送った場合、圧倒的に紙への反応が高く、最終的なCVRも高いという結果がわかっています。
全日本DM大賞の審査委員長や、早稲田大学マーケティング・コミュニケーション研究所の所長、公益社団法人日本マーケティング協会の理事長、早稲田実業学校の学校長なども兼任
恩藏:さらに、この調査を世代別で見ると、50、60代よりも20代の方が紙に対する反応が良いんです。理由としては、デジタルが当たり前な世代であるが故に、物体として手に触れられる紙のDMが届くと興味につながることや、一種の特別さを感じてもらえるのだと考えられます。今後、デジタル化がより進んでいく中で、あえてデジタルではない紙のDMを使うことで、人々の印象に残りやすくなっていくと考えられるんです。
コスト的にはデジタル施策のほうが安いが、反応も含めたROIまで考えると紙のほうが効率性は高かったりする。今後、デジタルとDMを組み合わせて届けることがポイントになると思います。
馬場:おっしゃる通り、日本ダイレクトメール協会(以下、DM協会)の「DMメディア実態調査2023」によると、自分宛てのDMの閲読率は、男女で差があるものの、男性の平均が83.1%のところ20代男性は89.2%、女性の平均が61.8%のところ20代女性は67.5%と、いずれも平均より高い数値になっています。
1994年に当時の郵政省に入省後、郵便・物流関連の仕事を中心に従事。2023年度から郵便・物流営業部の中に郵便・物流マーケティング室が設立され、マーケティング室長として荷物分野のマーケティングを行う。またDMの振興も担当
馬場:加えて閲読後に何らかの行動を起こした割合を見ても、全世代平均が19.7%のところ、20代男性は20.8%、20代女性は28.8%となっています。このことから、デジタルになじみのある若い世代もDMに関心を持って読んでいることがわかります。
近年BtoB企業によるDM活用が急増しているワケ
MZ:現在の日本におけるDM活用市場の規模感を教えてください。
馬場:電通の「2023年 日本の広告費」によると、2023年のDMの広告費は3,103億円で、日本の広告費全体の4.2%を占めます。インターネット広告が急拡大する中でも、この10年間3,000億円以上の規模を維持しつづけているのが特徴的です。また、これとは別にDM企画・制作関連の市場は1,115億円あり、前年比101%と微増しています。広告のあり方が大きく変わる中でも、DMは広告市場で一定の存在感があることがうかがえます。
MZ:制作費が増加しているのには何か理由があるんでしょうか?
馬場:理由の一つとして考えられるのがBtoBのDM利用です。DM大賞でも、入選作品に対するBtoBの割合は、2019年の第33回は約20%だったのが、第38回(2024年)は、約37%まで伸長しています。BtoBはスイッチングコストが大きいこともあり、しっかりと販促費にお金をかけることが制作費上昇の背景としてあると思われます。
恩藏:DM大賞の審査委員長として応募作品を見ていると、近年BtoBのDM利用は本当に急増していると感じます。背景の一つとして、コロナ禍で対人営業ができなくなり、その代替手段としてDMが活用されているからだと思われます。
営業が直接訪問しなくなれば、その分、販管費を節約できますよね。加えて、BtoBだと顧客は明確になっているので、ある程度コストをかけて届けることができるのも特徴的でしょう。特に近年の事例で言うと、第37回のDM大賞(2023年)でグランプリに選ばれたfreeeによる「チョコレートを送るDM」はおもしろかったですね。ターゲットである経理部メンバーに対して決算時期が終わったタイミングに合わせて、「皆さんで食べてください」とDMを送る。個装されたチョコレ-トが入っているので、同じ部署の人たち同士でチョコレートをシェアできます。これは、社名や自社サービスを強く印象付けるのに効果的な施策だったと言えます。
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- この記事の著者
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堤 美佳子(ツツミ ミカコ)
ライター・編集者・記者。1993年愛媛県生まれ。横浜国立大学卒業後、新聞社、出版社を経てフリーランスとして独立。現在はビジネス誌を中心にインタビュー記事などを担当。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
提供:日本郵便株式会社
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