ECサイト売上増のためにやるべき施策は2つ!
緊急事態宣言や外出自粛が続いた中、一般消費財を扱う企業・メーカーにとって、これまで以上にその存在が重要視されているのがECサイトだ。特に、コロナ禍で大打撃を受けたアパレル業界では、ECをどう活用していくかで、事業の未来が左右される。
Faber Company(ファベル カンパニー)は、Webマーケティングの戦略策定から実施、効果までを可視化するコンテンツマーケティングツール「MIERUCA(以下、ミエルカ)」を開発。ミエルカは現在、メーカーやメディア、Webサービス、旅行、教育機関にいたるまで、1,700の企業に導入されている。
最近、そんな同社の元に寄せられているのは、「巣ごもり需要で売上が落ちた」という声だ。ECサイトがあっても、購買につながらなかったり、リアル店舗の売上が落ち込み、投資に回す余裕がなかったり、正念場を迎えているWebマーケターもいるという。
そんな状況下でも、ECサイトの運用を見直して成果を挙げたのが、大きいサイズ専門のアパレル企業「ミッド・インターナショナル」だ。1年でユニークユーザー数を1.5倍、CV(コンバージョン)数を1.4倍まで伸ばし、広告費を2割抑えた。
ミエルカを通して同社を支援したFaber Company(ファベル カンパニー)前田絵理氏は、ECサイトの収益改善を実現した方策は2つだという。それが「商品ページのSEO」と「時短で進めたコンテンツ改修」だ。「ぜひ自社のECサイトにも適用ください」と、それぞれの方策を解説した。
1:商品ページのSEOは5つの施策で向上する
ミッド・インターナショナルは、元々ECサイト運用歴25年というEC分野の老舗企業だ。そんなベテラン企業でも、商品ページのタイトルタグや画像の改善、説明文への工夫で、大幅な集客増につながったという。
具体的にどのような工夫を行ったのか。前田氏は、商品ページのSEOポイントとして、次の5つを挙げた。
商品ページSEOの5つの施策
(1)タイトルタグの設定
(2)商品画像の質と量
(3)商品説明文の記載
(4)レビューの充実
(5)構造化マークアップへの対策
「多くの商材を扱うEC担当者さんは、常に多忙だと思いますが、この5つを押さえるだけで、SEO集客が伸びる可能性は高いと思います」(前田氏)
詳細な対策方法について、ミッド・インターナショナルの例を見ていこう。
(1)タイトルタグの設定
第一に、商品ページのタイトルの付け方だ。商材が多数あると、つい適当なタイトルタグをつけがちだが、「タイトルはSEOに大きく影響するので、重複しないよう商品ごとに個別設定してください」と前田氏はいう。
たとえばミッド・インターナショナルの「パンツ・ズボン」の商品ページの場合。タイトルは「パンツ・ズボン 人気ランキング毎日更新 大きいサイズのメンズ服通販 ミッド・インターナショナル」となっている。
「パンツ・ズボン」という商品ジャンルのキーワードから、ユーザーを惹きつける訴求力のある文言につなげ、「大きいサイズのメンズ服通販」と自社ECジャンルを説明し、最後にブランド名「ミッド・インターナショナル」が来る。
こうすることで、わかりやすく、検索結果でのクリックを促すことができるという。
集客を伸ばすために!商品ページのSEOポイント
(2)商品画像の質と量
またECサイトの場合、特に重要なのが商品画像だ。ユーザーは画像を参考に購入を判断する。アパレルであれば着用画像を中心に、あらゆる角度や縮尺で写真を撮り、商品ページに掲載したい。
ミッド・インターナショナルの場合、1商品につき9カットの画像を用意することで、ユーザーの買い物をサポートしている。「ユーザビリティが向上すれば、結果的にSEOにも良い影響を与え、多くのお客様と出会う機会をつかめます」と前田氏は説明する。
(3)商品説明文の記載
そして商品の説明は、長々と書くのではなく、300文字程度で「推し」の部分を中心に記載していく。前田氏の考えでは、「検索ニーズに応える情報を盛り込むことがポイントです」という。たとえば大きいサイズのパンツの場合、「股ずれしないパンツを探したい」というニーズがあるため、股ずれ防止の工夫や生地の質感をしっかり伝える。写真を見ただけではわかりにくいことを文章で伝えると、ユーザーは頭の中で着用後のイメージを組み立てることができるようになるわけだ。
では、商品紹介に盛り込むニーズをどう見つけるか。これに対し前田氏は、次のようにアドバイスする。
「まずはGoogleの検索窓に出て来るサジェストキーワード(オートコンプリート)や、検索結果の下に表示される関連ワードを参考にします。詳細なニーズ調査はミエルカが活用できます」(前田氏)
(4)レビューの充実
次に、商品説明と同じくらい重要なのが、実際に購入したユーザーからのレビューだ。参考になるレビューが集まるほど、ユーザーは自分に適した商品を探せる。レビュー投稿者の体型サイズも書かれている方が親切だろう。
もし、ユーザーレビューを収集・用意する時間がない場合は、「モデルさんや社員の着用感想でもOK。ユーザー目線で使用感をイメージできる、具体情報を掲載することをおすすめします」(前田氏)という。
(5)構造化マークアップへの対策
商品ページの集客で意識したいのは、構造化マークアップだ。構造化マークアップとは、HTMLで書いた情報を検索エンジンが理解しやすいようタグ付けするもの。Googleのクローラー(ロボット)に、ページの内容を理解してもらうために記述するコードのこと。しっかり取り組めば検索結果でリッチリザルトが表示され、通常の検索結果より多くの情報をユーザーに伝えることができる。
前田氏は、構造化マークアップの対応として、「着手している企業も多いのですが、不十分なケースが散見されます」と語り、「追記したほうが良い情報はどんどん更新し、定期的に見直しましょう」と提案した。
2:リライトでコンテンツの集客力がアップ
もう1つ、ECサイトの集客を高める手段として有効だったのが、記事コンテンツの改修だ。
そもそもミッド・インターナショナルは、以下 3つの理由に基づいて記事コンテンツを公開しているという。
「商品ページのSEOをアシストするため」
「新しい顧客と出会うため」
「デジタル接客の一種として、商品選びをサポートするため」
特に中堅事業者の場合、ECサイトや商品ページのSEOをコンテンツでアシストしないと、圧倒的な規模を持つ大手モールに負けやすくなる。ミッド・インターナショナルの場合、そう考えて2019年頃からコンテンツの充実に乗り出したという。
同社の顧客の購入ファネルを見ると、まずは体型や服装の悩みがあり、「悩みの解決法を知りたい」ところからスタートする。たとえば体型が極端に大きかったり、小さかったりすると、体型とベルトが合わず、どうしたらいいのか悩んでしまう。そんな時、「ベルト 切り方」などのキーワードで検索し、解決方法を知るという流れだ。
解決法がわかったら、具体的な解決策として商品検索が始まる。ここでは“ベルト”などの商品名で検索されることが多い。SEOを意識した商品ページづくりが大切になるが、「商品名は大手競合が多く、SEOコントロールも難しいキーワードです」という。
また、購入ファネルの最後である「サイトの指名検索やアプリを使うリピート購入」になると、基本的にユーザーは新しく検索することはしない。そのため、最初の認知の段階で、多くのユーザーと出会うためにもコンテンツを充実させるのが有効な手段となる。
ミッド・インターナショナルでは、体型や服に悩むユーザーをコンテンツでサポートしている。ただ、検索順位7位〜20位前後のコンテンツが多く、なかなかトップを取れないという課題があった。
そこで相談を受けたFaber Company(ファベル カンパニー)が提案したのが、コンテンツをリライトして改修する手段だった。
商品の購入に近いコンテンツから優先的にリライト
コンテンツが多い場合、どこからリライトするべきか悩むことが多いが、「商品の購入につながりやすいキーワード」を最優先としたい。そのキーワードの基準は様々だが、1番簡単な探し方は商品名のサジェストキーワードだ。
ミッド・インターナショナルの場合、ベルトならば「ベルト 切り方」「ベルト 種類」、Tシャツならば「Tシャツ 汗をかくと臭い」「Tシャツ 匂い」、などである。
検索順位7位〜15位のコンテンツなら少しの工夫で効果アップ
次に、それらのコンテンツを、検索順位に基づき優先度を付ける。この場合の優先基準は以下の通りだ。
優先度:高 → 7位~15位前後のコンテンツ
優先度:中 → 15位~25前後のコンテンツ
優先度:低 → 30位より下位のコンテンツ
検索結果が7〜15位まで上がっていれば、「ユーザーのニーズにある程度は応えられているコンテンツ」である可能性が高い。少しの対応だけで順位が改善する期待を持てるため、優先度を高と付ける。
「15位から25位前後のコンテンツは、検索ニーズを満たすトピックが欠けている可能性が高いのでしっかりリライト。それなりに工数がかかります」それより下の順位だと、「そもそも検索ニーズと内容が大幅にずれている可能性が高い。全面改修が必要となり、イチから作り直す方が早いかもしれません」と、前田氏は優先度の目安について説明する。
優先度:高のコンテンツの大きくは(1)タイトルの修正、(2)ページUIの修正の2つで成果が出た。「ベルト 切り方」のコンテンツは、親切な動画解説付きなのに、タイトルでそこに触れていなかった。そのためタイトルに(動画あり)という文言を加えたところ、検索結果でのクリック率が向上。検索順位は8位から4位へと大きくアップした。
また、 「Tシャツ 汗をかくと臭い」というキーワードのコンテンツでは、タイトルと一緒に、画像を改善。わかりやすい洗剤種類の表を入れるなどページのUIも改善したところ、検索順位が7位から1位へと躍進。
「タイトルに重要な文言を追加したり、画像に説明を加えるだけで変わります。ミッド・インターナショナルでは、コンテンツのリライトを20本行った結果、検索結果1ページまでに表示されるコンテンツの割合が47%から58%まで伸びました。ポイントを押さえてリライトすることで、ここまで効果をあげることができます」(前田氏)
自然検索流入が増え、広告費を2割抑えることに成功
ミッド・インターナショナルは、こうしたSEO施策の効果もあって、自然検索流入数が増加。ユニークユーザー数を1年で1.5倍に、CV(コンバージョン)数を1.4倍に伸ばした。集客チャネルで依存気味だった広告費を2割抑え、現在ではバランスの良い集客を行えるようになった。
同社では、コロナの影響で2020年春先に一時的に収益が落ち込んだものの、そのときに慌てずコンテンツを作り込んでいたため、秋口から利益も回復していったという。焦らず、できることから優先度を付けて着手したのが功を奏したのだろう。
前田氏は最後に、「せっかく良い商品、良いコンテンツをもっているのなら、ユーザーに伝わる工夫をして、たくさんの方に見ていただくことが大切です。また、デジタルコミュニケーションだからこそ温かいアプローチを展開することで支持を増やし、厳しい状況でも収益につなげていくやり方があります。私たちは、そこをお手伝いしたいと思っています」と述べ、講演を終えた。
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