戦略なきテレビCM出稿は、広告費の7割が無駄
第35代アメリカ合衆国の郵政長官で百貨店経営者、そして「マーケティングにおける先駆者」といわれるジョン・ワナメーカー氏は、次のような言葉を残している。
「広告の半分が無駄に終わっているのはわかっている。わからないのは、どっちの半分が無駄なのか。」
広告を出せば、企業や商品の認知は確かに一定以上上がるし、それが売上につながる場合もある。とはいえ、広告を2本出せば、1本の時と比べて売上が倍になるとは限らない。まして「認知度」や「ブランドイメージ」向上のような数値化しにくいものだと、定量的な広告効果は測りにくい。上述のジョン・ワナメーカー氏の言葉は、こうした状況を踏まえたものだと考えられる。
ただ、こうした状況は、テクノロジーの進化によって大きく変化した。消費者が日々生成する大量のデータを活用することで、人々のメディア接触の傾向や購買動向を把握し、これまで以上に正確な広告効果を計ることができるようになっている。
CCCマーケティングは、同社が保持する唯一無二のデータを活用し、企業のマーケティング活動やマーケターの戦略立案業務を支援する企業だ。そんなCCCマーケティング TVデータ企画・Unit長の橋本直久氏は、MarkeZine Day 2021 Springで次のように話す。
「これまでテレビCMにおいては、実際の購買にどうつながったのか、具体的にどのような層にリーチできているのか、把握しにくい、ということが言われていました。私たちは、全国年間利用者7,000万人以上のT会員データという唯一無二のユニークなデータをもっており、5年ほど前からテレビ視聴傾向と紐付けて、その後の購買行動の把握・分析を可能とする仕組みを構築していました。
こうした活動を経るなかで、マーケターの方に知っていただきたいのは、『デモグラ情報だけでテレビCM出稿を考えてはいけない』ということです。もっというと、デモグラだけでテレビCMを打つと、広告費の半分どころか、7割以上が無駄になってしまう事実が、データ上ではわかっているのです」(橋本氏)
デモグラだけでテレビCM戦略を考えてはいけない理由
「7割以上が無駄になる」というのは驚きだが、橋本氏はこれについて次のように説明する。
「衣料用洗剤を例に考えると、ターゲットとしてはシンプルにF2層(35〜49歳の女性)となるでしょう。そこで約7,000万人のT会員のデータをもとに、衣料用洗剤を購買した層を分析してみました」(橋本氏)
橋本氏によると、T会員で衣料用洗剤を1回でも購入した経験がある人は、全体の74%だった。ところがこのなかで、ターゲットとするF2層は、26%ほどしかいなかったという。
「ターゲットはF2層ということで、その層の含有率が高いテレビ番組にCMを出稿しても、実際に購買しているのは他のF1(20〜34歳女性)、F3(50歳以上の女性)、M1(20〜34歳男性)、M2(35〜49歳男性)、M3(50歳以上の男性)というわけです。つまり、デモグラをベースとしたテレビCM戦略だと、実際の購買層の7割以上を逃していることになります」(橋本氏)
同じ例で、ビールがある。ビールはT会員の83%が年間の購買経験者だ。一般にビールの場合、M2層をターゲットとしてテレビCM戦略を練るが、実際の購買者のうち、M2層が占めているのは23.3%だという。ここでも、実購買者の76.7%を逃す=無駄ということになる。
こうした無駄をなくすために、橋本氏が訴えるのが「脱デモグラ」だ。脱デモグラで、実購買に即したCCCのユニークデータを活用することで、広告効果の大きな向上が見込める。