計測手法はより民主化されていく
中村:計測手法に関してもう一つ付け加えると、より長期的には、プライバシーを考慮できる「統計的なモデリングを使った計測手法の民主化」が進んでいくと考えています。MMMほど洗練されていなくても、もっと本質的でわかりやすい方法が出てくる。エージェンシーや調査分析会社など第三者のパートナーが、次なる手法で計測を民主化していくでしょう。
羽片:おっしゃる通り、やはり第三者と組んだほうが透明性は担保されますね。その上で、“計測の民主化”に関して重要なのは、頻度とコストだと思います。MMMは結果が出るまでに3ヵ月~半年ほどかかることが多いですが、ネット広告は24時間365日運用できるので、デイリーでモデルを回してチューニングしていける仕組みができたら、とてもフレキシブルです。いわゆる正解のデータを返すところも機械で自動化できつつあるので、費用感も下がっていくと思います。そうすると、モデル化すること自体が浸透していきそうです。
中村:Cookieが使えなくなり今までのような媒体横断でのCPAの比較が容易にできなくなるため、そもそもモデル化したアプローチしかできないという大前提があるわけで。MMMの頻度とコストを解決し、汎用化した仕組みの確立を、業界を巻き込んで進めていけるといいですね。
羽片:そうですね。技術面でも日々さまざまなイノベーションが起こっているので、そうした状況を常にキャッチアップしながら、当社でも新しい計測の手法を生み出すために模索しているところです。
マーケティングの本質に立ち戻ることも重要
ーーここまで、前後編にわたってCookie/IDFA規制をめぐる問題を議論いただきました。改めて、今後の見通しをどのように考えていますか。
中村:今回の件は、マーケティングのフレームワーク「WHO・WHAT・HOW」のうち、主にHOWの話ですよね。さまざまなクライアント企業と話していると、従来の手法が難しくなるこのタイミングで、改めてWHOとWHATに立ち戻ろうという動きも見られます。
羽片:同感です。WHO・WHATの重要性に、今まで以上に向き合う必要があると思います。我々も、デジタル活用というHOWの部分で成長してきた会社ですが、たとえばサイバーエージェント・ストラテジーのように戦略部分をサポートする新会社を立ち上げるなど、WHOとWHATの支援にも本腰を入れています。
また、技術や法務との連携も必要になる中、マーケターやマーケティングのチームに求められる役割も多様化しており、体制づくりの相談も増えています。
中村:人材の交流も大事になりそうです。マーケターとデータサイエンティスト、エンジニアの融合が、今後のカギを握ると思います。海外ではエンジニア出身のマーケターは普通ですが、日本でも若手を中心にテックに対してリテラシーが高い人が増えているので、彼らの台頭が鍵だと思います。
ーー最後に、広告・マーケティングを通じて企業にどのように貢献していきたいか、展望をお聞かせください。
羽片:我々の使命は昔も今も、広告主様の売上へのコミットであり、それはつまり企業の顧客に動いていただくことです。ユーザーの変化をつぶさに捉えて、大きく動いていただけるよう対応していきます。この大きなうねりに対しても、ネット広告No.1企業として、Facebook社や各社のみなさんと協力して新しい“正解”を確立していきます。
中村:利用者、そして企業に誠実に、それぞれのニーズを理解し、プライバシーを最優先にしながら、有益な商品や情報の発見の体験を提供し、場を良くしていく。テクノロジーの会社、イノベーションの会社として、我々もグローバルの知見も統合して各社とともに模索しながらよい成果を導き出していきたいです。
ーー本日はありがとうございました。