イベントは当日だけでなく前後のコミュニケーションも設計する
イベント実施における主な役割には、全体マネジメント、講演やセッションの企画担当、配信・運営などのシステム担当、UX(Webサイト)担当、集客および外部PR担当などを置いていたという。基本的に他社と変わらないだろう。
特筆すべきはカスタマージャーニーの設計とそのフォローだ。ソフトバンクはイベント単体で顧客とのコミュニケーションを考えず、イベント前後のコミュニケーションも含めて顧客との接点をどう作り、コミュニケーションを充実させていくのかを考えているという。
「対象となるオーディエンスがどういう方かと考え、その設計を最初にしっかり行います」(住谷氏)
ソフトバンクの場合、顧客属性の種類が非常に多い。そのため、業種、顧客の担当業務、役職でセグメントし、それぞれにコミュニケーションプランを立ち上げているという。顧客に対して、「いかに自分に関係のあるコンテンツだと思ってもらうか」を大切にしているのは、イベントに限ったことではない。
ソフトバンクは顧客の購買フェーズを現状課題の認識、解決策の探索、製品の選定の3つに大きく分けている。SoftBank World 2020では「解決策の探索」をメインコンテンツとした。そこから、その前後ではどのようなコンテンツを提供すればいいのかを検討する。顧客の立場に立ったコンテンツの開発ができ、あとは各部署でやることが明確になり計画が立てやすくなる。
「イベントが、参加者の課題が解決できる場になっているか。そういう全体設計がイベント前からできているのかということですよね」(大野氏)
またソフトバンクでは、イベント前に「プレウェビナー」、イベント後に「ポストウェビナー」も実施。プレウェビナーでは、当日のコンテンツに対して一歩手前の購買フェーズにいる顧客に向け、課題が再認識できる内容を用意している。イベント当日に向け前段となる情報提供を行い、顧客の購買フェーズが少しでも前進するよう取り組んでいるのだ。
つまり、オンラインイベントの何週間も前から、イベントそのものは始まっていることになる。これには、「イベント後にウェビナーを実施している企業もあると思いますが、イベント前までウェビナーがあるのは恐らく少ないと思います」と大野氏も驚いた。
オンラインイベントならではのデータを取得する
SoftBank World 2020では、顧客のニーズを理解するために、顧客接点ごとにしっかりと情報を取得し、正しいコミュニケーションが取れる全体の設計を考えていたという。
大きなタッチポイントは、登録フォームの記入内容、どのセッションを見たのかという視聴行動、そして視聴後のアンケート。この3つで計画的に情報を取得し、それぞれに対するコミュニケーションを充実し、また必要に応じてコミュニケーションを切り替えていた。
そうした中で注意していたのは「この情報を取得することで、顧客に対するコミュニケーションが向上するのか」だと住谷氏は語る。「イベントの場合あれこれ聞きたくなりますが、項目が多くなるとお客様の負荷が高まってしまいます。そこはしっかりと吟味させていただきました」と住谷氏は話した。